公開中
第十二話 & 重要なお知らせ
【前回のあらすじ】
月の下、餓者髑髏と対峙する火影と灯和。
ついに彼らの戦いが幕を開けた。
火影は彼の武器である『幽月魄』『白焔』で無数の死者たちを圧倒した。
そして灯和は『燈羅刹』で酒呑童子の実力を発揮し、一瞬で餓者髑髏を沈めたのだ。
しかし、火影も灯和も戦いを好んでしてはいない。
餓者髑髏たちの来世の幸せを願いながら、二人は皆の待つ屋敷へと帰るのだった……
〜沙雪 side〜
__チュンチュン……__
沙雪「……ん…」
鳥達の声で目を覚ます。
気づけば襖の隙間から朝日が差し込んでいた。
横を見ると、天舞と猫葉と竜翔がスヤスヤと寝ている。
__猫葉「ん〜…もっとくえるぞぉ………」__
__竜翔「……ん……てんまぁ…いえこわさないでよぉ………」__
……どんな夢見てるんだろう…?
考えてみて、思わず笑ってしまう。
沙雪「……あ…!そう言えば灯和は…!?」
忘れかけていた目的を思い出して、私は急に焦る。
私は慌てて着物に着替えて、襖を静かに開けて外に出た。
縁側を早歩きで進み、居間へと入る。
__スッ…__
沙雪「……あ…!」
そこでは、火影さんと灯和がお茶を飲んでいた。
火影「起きたか。」
灯和「おはよう。よく眠れた?」
普段と変わらない二人の様子に安心する。
沙雪「お、おはようございます…!よく眠れました!」
火影「そうか。ならいい。」
沙雪(…………あれ……?)
私は《《あるもの》》が目に入った。
灯和「沙雪ちゃん、お腹空いてる?」
沙雪「あっはい…!」
そう言えば、先ほどからかなりお腹が空いていたのを思い出す。
火影「そうか。なら今から作る。他のやつらを起こしてきてくれないか?」
沙雪「は、はい!」
灯和「あ、僕も朝ごはんの用意手伝うよ!」
そう言って二人は台所の方へと言ってしまった。
私もそれに従って寝室に向き直す。
…しかし、私は気づいていた。
彼らの首元に、小さな切り傷が増えているのを。
---
沙雪「竜翔くん、おはよう…!」
竜翔「……ん…?……あ、沙雪ちゃんおはよう…!」
そう言って竜翔はゆっくりと起き上がる。
普段からはねている髪がもっとくるくるになっていて可愛らしい。
沙雪「猫葉ちゃん、起きて…!!」
竜翔「猫葉〜、はやく行こうよ〜…」
猫葉「ん゛〜……まだ寝てたいんじゃあ〜……」
猫葉はなかなか起きずに、寝言を言いながら布団に潜り込む。
沙雪「……朝ごはん、私が全部食べちゃうよ?」
**猫葉「!!朝ごはんっ!!?」**
**ガバッ!**
竜翔「うわぁ!?」
猫葉「ワシは起きたっ!!朝ごはん食べにいくぞっ!!」
そう言って猫葉は走り去っていった。
竜翔「……本当に寝起きなの…?」
沙雪「あはは……」
さて、あとは……
竜翔「天舞おはよ〜。起きて〜……」
天舞「………ん…」
私の予想よりも遥かに早く天舞は起きた。
沙雪(もっと寝るものだと思ってた……)
天舞「…お、沙雪おはよー…」
沙雪「あ、おはよう!もう朝ごはんできるから行こう?」
天舞「ん〜…」
__ムクリ…__
天舞「顔洗ってくるわ〜…」
竜翔「あ、ボクもいってくる〜!」
__とてとてっ…__
沙雪「…私も戻ろっかな…」
独り言をつぶやいてから、私は居間に向かった。
---
__スッ…__
沙雪「起こしてきました!」
火影「ああ、ありがとう。」
灯和「こっちももう作り終わるから、みんなが来たら食べよ!」
沙雪「はい…!」
……どうしても。
やっぱりどうしても気になってしまう。
沙雪「………あの…」
灯和「ん?」
火影「どうかしたか?」
なんだか申し訳なくて口が開かない。
でも私は伝えたいことがある。
沙雪「……もしかして昨日の夜…他の妖怪さんが来てたんですか…?」
火影「……」
灯和「え…?」
二人の動きが一瞬止まる。
ああ、やはりだ。
灯和「きゅ、急にどうしたの…?」
沙雪「首に切り傷があったので…昨日の夜まではなかったはずです……」
灯和「………………見えちゃってた……?」
灯和はそう言いながら、照れくさそうに頭を軽く書いた。
火影「………妖怪が屋敷に近づいてきていたから、退治しただけだ。」
灯和「…自分から『妖怪退治しました!』っていうのも恥ずかしいからね…////」
沙雪「……!」
火影「…他の奴らには言わないでくれ…すぐに騒ぎ出すからな。特に竜翔が。」
竜翔が二人に怒っているのが安易に想像できた。
二人はそのまま話を終わらせようとしていた。
しかし、これだけは伝えたかった。
沙雪「…あ、あのっ!」
火影「?」
灯和「…?」
沙雪「ありがとうございましたっ…!!」
灯和「……!!…うん…ありがとう…////」
火影「………………」
灯和は顔を赤くし、火影さんは目を逸らしてしまった。
それでも私は言えた。
__スーッ…__
竜翔「火影おはよー!灯和おかえりー!」
天舞「おはよーさん。」
猫葉「なぁなぁ飯はまだか〜?」
灯和「あ!おはよ!」
そこでまだ眠気まなこの三人が身支度から帰ってきた。
それに応えた灯和が、不意にこちらに顔を寄せた。
思わずドキッとする。
__灯和「さっきのこと、みんなには秘密ね。」__
__沙雪「は…はい!」__
__スッ…__
火影「朝ごはんできたぞ。沙雪、竜翔、悪いが配膳を手伝ってくれ。」
竜翔「はーい!」
沙雪「はい…!」
---
私は生まれた時から愛情を注がれたことがなかった。
いつも罵詈雑言を浴びせられた。
歩いているだけで石やゴミを投げられた。
*「お前なんて死ねばいい」*
*「村の恥だ」*
*「この娘は呪われている」*
*「消え失せろ」*
そして最後には村を《《あんな形》》で追い出された。
だから、私に手を差し伸べてくれる人がいるなんて思ってもなかった。
……でも。
私は今こうして、笑うことができている。
楽しく幸せに過ごせている。
きっと奇跡なのだろう。
私はこの奇跡を、今日も噛み締めて生きていきます。
---
第十二話 〜完〜
【重要なお知らせ】
今回から次の展開に入るまで、しばらくの間『日常編』に入っていきます。
日常編とは、なんの進展もない話のことです。
そこで、皆様にシナリオを考えていただきたいのです!
ほんわか日常系、ちょっとしたハプニング系、ご都合展開まで、なんでもありです。
なので『こんな話みたい!』という要望があれば、是非リクエストしてくださいね!
方法としては、リクエスト箱に『シナリオ募集箱』というものを作っております。
そこにじゃんじゃん送ってください。
詳細や内容などはそこに書いてあるので、そちらを参考にしてください。
それではまたどこかで…
By 読書が好き🍵