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英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_1
今日は、夏の暑さが身に染みる、空の青く澄んだ日だった。
空高くから見下ろす海はきらきらと輝いているし、沢山の人が街を行き交っているし、
今まで見た事ないくらいに慌てているボスがいるし________...え?
「…何やってるの...ボス...?」
もはや笑えてしまうほどにオロオロしているボス。
あんなに狼狽えてる姿は今までに数回しか見たことがないと思う。
もう少しその様子を観察したいとも思ったけれど、何があったのかも気になった。
結局任務終わりの私は、青龍から飛び降りてボスの背後に忍び寄ったのだった。
「わあっ」
「はぁあ!!?」
あからさまに肩をびくつかせてこちらを振り向いたボス。
「おはよーっ!何でそんなに挙動不審なの?何かあった...?」
尋ねてもふい、とそっぽを向くボス。
後ろめたそうな顔してるなぁ…
ふと、その手に携帯が握られているのを見付けた。
不自然な握り方。どうやら先程迄誰かと通話していたみたいで。
「…誰と電話してたの?」
「は、っ誰でも良いだろ、」
ボスは尚も此方を見ようとしない。
全く、何をそんなに隠したいのかな。
「…ないとは思うけど敵組織に情報売ったりして」
「そんな事してた訳ないだろ!!...」
「えっ待って冷や汗凄いんだけど本当に大丈夫ボス?」
明らかにおかしい。
...あのボスに限ってないとは思うけど、...こんなに挙動不審じゃ、幹部権限使うしかないかなぁ…
「…正直に云って。幹部として」
「あぁもう分かった、云う。但し、”幹部に”じゃなく、”泉桜月に”だ。分かったか?」
上から目線なのは気になるけれど、続いた言葉に少し違和感を覚える。
幹部には言わないのに私には話す?
...つまり、そこ迄重要ではないけれど...私には話しておかないといけない案件。
「、判った。此処で話すのもだし、私の管轄内のカフェにでも行こ?」
「そうだな、その方がいい...」
「お客さんと店員さんなら、今日は定休日だから大丈夫」
今度こそ、完全に安心した表情で頷くボス。
カフェの座標の位置を伝え、異能で転移して貰った。
暗い店内。
外はあんなに明るいのに、と思いながら電気をつける。
「…そこのテーブル席にでも座ってて、今コーヒーとお菓子」
「いい」
唐突に遮られた言葉にパチリと瞬きをする。
ボスの表情を伺った。
不安と、恐怖と、そして怒りを少し覚えるような、そんな顔。
「そんなに早く話さないといけなかったなら、どうしてもっと早く言わなかったの...」
「うるさい」
呆れながらも、ボスの向かいのテーブル席のソファに腰掛けた。
素早く淹れていたハーブティーをボスの前に置きながら。
「…おま、いいって言っただろ」
「そのハーブにはリラックス効果があるから、取り敢えず落ち着いてから話そう...?」
「そんな時間はないんだよ!」
急に立ち上がったボスに驚いて仰け反る。
両手はきつく、握られていた。
やっぱり、何かに不安を覚えてるんだ。
「…まず飲んで!飲まなかったら私話聞かないからっ!」
「はあっ!?」
酷な話かもしれないけれど、この状態じゃボスの気も落ち着けない。
安定した状態じゃないと、話は真面にできない。
「…わかったよ...」
ティーカップを以て、カップに口を付けて、喉が一度、動いたのをしっかり見届けて。
「これでいいだろ」
「うん、今はね」
少なくとも、これ”だけ”で終わらせるつもりはないけれど。
「…まず、俺がさっき通話してた相手は___俺の”元仲間”だ」
「、っえ、!?」
予想の斜め上を言った答えに思わず素っ頓狂な声が出た。
「…アイツらが、ヨコハマに来るらしい」
その暗い声色からして、いい理由じゃないのは簡単に推測できる。
その瞳は、まるで初めましての頃の、敵対していた頃のもの。
「目的は、俺が失敗した”このヨコハマを手に入れること”だそうだ。上手く行けば俺も連れ戻すと」
予想の斜め上の答えpart2。
いや、予想は出来た。
けれど、ボスのこのヨコハマに来た理由もそう云えばそんな物だったなぁ、なんて。
「…ボスの元仲間、って」
「…簡単な組織構成はトップ、そしてその隣に並ぶのが俺とあと三人...その下は、ポートマフィアの数をも凌駕するかもしれない兵士と異能力者だ」
「ボスってお偉いさんだったんだ」
「其処かよ」
失礼な、と此方を睨むボス。けれど、いつもの勢いはない。
「…あれ、ボスって組織のトップだから”ボス”なんじゃなかったっけ」
「組織でも俺くらいの立場になったら別で組織を持ってる奴もいる。前動いていたのはそっちだから俺が”ボス”だったんだよ」
「なるほど、だから今回の件の人達の、直接的な支援がなかったの?」
「あいつら、というより彼奴、自分が命令したくせに自分で如何にかしろとかふざけてるだろ」
「あ、はは…ねぇ、そういえば前から思ってたんだけど、どうしてそんなに横浜に執着して」
「それと、ドストエフスキーとやり取りしていたのはトップだ」
遮られた事よりも、その妙なもの云いに、突然ひらめくものがあった。
「もしかしてボスの異能に、”私かルイスさんどちらかが死なないと元の世界に戻れない”の条件を付けたのは、」
「そう。トップの異能は__
【|不幸な選択遊び《Unhappy Choice Game》】
「自らが選択した二人の人物に、特定の選択条件を課すことができる異能だ」
「…なんか、名前が物騒、だね__どちらかが死なないとダメだったのは、トップの仕業だったんだ」
「ついでに云っておくとトップと俺の異能をこうやって上手く混合させたのも俺と同じ立場の奴__面倒だから説明は後だ」
「面倒って」
「…とにかく、話を進めるぞ__落ち着いて聞け。俺と同じ立場の奴に、自分を除いた同じ立場の3人の異能を強制発動させられる奴がいる。ソイツが____」
--- 「俺の異能を使って、ルイス・キャロルを強制的にこの世界に連れて来た」 ---
「…え、っそれ、本当、⁉大変な事になるんじゃ、」
「その通りだ。トップがもしも同じ条件を課したなら、今度はここ、泉桜月の本来の世界で、あの悪夢が__俺が引き起こしたあの事件が繰り返される」
「、でも同じ条件は多分課さないよね?云い方よくないかもだけど、っルイスさんがもしその選択を選んだなら、そのままルイスさんは元の世界に直帰コースだから」
「ね、その話…僕も混ぜてくれない?」
その懐かしい声。
優しいけれど、話の内容からピリリと張り詰めた雰囲気。
--- 「お久しぶりです、ルイスさん...っ!」 ---
そして巻き込んでごめんなさい。
ボスを見ると、向こうも珍しく素直に申し訳なさそうにしている。
「…勝手に押しかけちゃって申し訳ないね」
「トップの男はどうした?」
「強そうだったからなんとか逃げてきた」
「だろうな。状況がはっきりするまでは下手に動かない方がいい」
何かルイスさんの表情が物問いたげなのは、気のせいだろうか。
でも、彼の無事が分かったことに、今は何より安堵を覚えた。
というわけでっ!!
まさかのコラボ第三弾――――――!!!!
嬉しすぎる――――!!!!
今回は私の方の世界線にルイスさんとアリスさんをお呼びさせていただきました!
やだもう嬉しすぎて死んじゃう...((
投稿頻度は私のせいで遅くなってしまったりするとは思いますが、最後まで見届けて下されば幸いです!