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15.クランは、新たな交友を作る
昼食の時間になった。
フィメイア学園にいた時のように、サリアが弁当を作ってくれたので、いつもの広場……ファブローの森の手前の……に行こうと考えた。
とりあえず、行ってみたわ。
そしたら、ネイラ、ルル、ヴィール、アリアの五人がいた。
アリアは寝ているけど、それ以外は広場の真ん中で輪になって喋っている。
さらに、椅子まで準備されているわ。そして。そこに座っている。
この空間にわたくしが入るのはなんだかためらわれるような気がして、わたくしはそっと広場から離れた。
そんなわけで、わたくしは他の昼食を取れる居心地のいい空間を求めて歩くことにした。
わたくしの頭の中には、この前見た地図がある。
そこから、広場っぽい空間を思い出そうと努力する。
……あ!
あった。
ファブロー学園の正門は南にあり、北東に今まで通っていた広場があるのだけどその広場は確か、北西の方にあった。
もちろん、ファブローの森の入口のほうにある。
それに、大きくない。
ここなら、来ている人も少なそうだし、きっとゆっくり出来るわ。
そう思った。
そうと決めたら早速行動するわよ!
わたくしは広場へと向かう。
途中で横に見る森の中は、薄暗く、外のぽかぽかとした暖かさとは反対で、寒そうだった。
広場に着いたわ。
さっそく中を覗いてみる。
うん。良いところだわ。
こじんまりしていて、暖かそうで、なんだか安心できる。
ただ……
——ビュウン、ビュウン
そんな音をたてて、剣を振っている男子生徒が、一人、いた。
これは入ってもいいのかしら?
正直、あの場所はとっても気持ちよさそうだから、入りたい。
だけど、彼は練習している。それを邪魔するのは、なんだか気が引けるわ。
「え?」
しばらく、その男子生徒を見ながらどうするべきか考えていたからか、相手に気づかれてしまった。
「どうしましたか?」
彼は、わたくしにも丁寧に聞いてくる。
「ここで昼食を食べようと思ったのだけれど……いいかしら?」
「大丈夫ですよ!」
彼は、笑顔で、元気に答えてくれた。
そんな彼に好感が持てたのは、言うまでもないこと。
わたくしは、彼を横に見ながら、食事をとることにした。
今日は晴天。二日前に降った雪が嘘かのように、なにもない。
そのことに、少しもの悲しさを感じた。
「ハァ、ハァ」
目の前には疲れていて、冷たい地面に寝転がっている様子の彼がいた。
とうとう練習は終わったらしい。
「大丈夫?」
つい、心配になってしまう。
「大丈夫です、僕は、こんなことをしないと、強くは、きっとなれないので」
確かに、彼の素振りはお世辞にもいいとは言えないものだった。
だけれど、動作を繰り返していることで、はじめの時よりは少し、ほんの少しだけれど、変わっているようにわたくしには見えた。もちろんいい方向に。
「偉いのね。そう思っても実際にそこまでできる人は少ないわよ」
「そうですか? それならうれしいんですけど……実力が伴ってなくては……」
「……ねえ」
「何ですか?」
せっかくだし、と、気になっていることを聞いてみることにした。
「あなた、この学園の生徒よね? 申し訳ないのだけど……あの剣術の腕で入れるようには思えないわ」
「ですよね」
気を悪くすると思ってした質問ではあったが。彼が肯定したことで、わたくしは驚いた。
「実はぼく、もともと魔術で学園に入っていたんです」
「魔術で? じゃあどうして今は剣術をやっているの?」
「魔術の……自分の限界を見ちゃって。自分は出来ないのに周りの人がどんどん出来るようになっていくから、それに耐えられなくなったんです」
ああ、ありそうなパターンね。
「だからいっそ剣術をやってしまおうって」
「そうなのね。やっぱり剣術でも強くなりたい?」
「はい!」
純粋なのね。
「もし良かったら、この昼食休憩の時間なら教えられるけど、どうする?」
「いいんですか! ……あ、けど何もお返しできるものがない……」
礼儀正しい子だわ。この子を教えることに問題わなさそうね。
まあなんと言ったってわたくしの目的は……
「いいのよ、わたくしは人に教えることで自分を成長させようとしているだけだもの」
「そうですか……」
「それでも気になるなら。お互い貸し一つということにしましょう?」
「お互い? いえいえ、そんな! 僕に貸しは要らないです!」
「そう? あったほうがいいと思うけれど……」
なんだかんだ、話し合うことになった。
「……分かったわ。わたくしがあなたに貸し一つ、ということね」
「そうです!」
本当に、わたくしは教えることで得られる自分の技術の向上を狙っただけなのだけど……
ふと、本で見た「教えることは教える側にも得がある」。それを狙っただけなのに……
「あ、そうだ、あなたの名前は何ですか?」
「わたくし? わたくしはクラン・ヒマリア。今日から来た留学生よ」
そういえば。まだお互い名前を知らなかったわね。
今更ながらそんなことに思い至る。
「クランさんですね」
「違うわ」
「え?」
「クラン、よ。わたくしは一年生なのだから」
「そうなんですね! 全然そういうふうには見えませんでした! けれど、教えてもらう側で呼び捨ては……」
「気にしなくていいのに。ところであなたの名前は?」
「僕の名前は、ブライアンです!」
「分かったわ。ブライアン、明日からよろしくね?」
「はい!」
これが、わたくしとブライアンの初めての出会いだった。