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#10 治療と回復
「再起動」
無機質な声が響き渡る。
ああ、やっと。複雑だった手順で、2日かかった。
「…ネット?」
「インター」
「ああ良かった、本当にっ」
本当に良かった。大切な人が目覚めて。
「落ち着いてください。私は」
「えーと、9日?眠ってた。強制シャットダウン…」
「ごめんなさい。知られたくなかったんです。貴方が苦しむ必要はないと」
「そんな。私はネットがいなくなるほうが苦しいよ。ね、わたし料理したんだ。チャーハンなら作れるようになったんだ」
そう言うと、なんとも取れない表情から口角が上がった。
「本当ですか。私も食べたいところですが…」
「食べなよ!ほら、ちょうど治すついでに食事機能もアップデートしたから」
2代目アンドロイドには、幸せになってほしい。
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「このチャーハン、美味しいです」
「ね。ネットを治すために、有休使っちゃった」
「いいのですか?」
「事情を話したら許してくれるって。ねえ、1日か2日ぐらいだけ、ズル休みしない?」
「…それも手ですね。最近休んでばっかりですけど」
「いいじゃん」
そう言って、レンゲの中のチャーハンを口に入れた。
「何をしますか」
「そうだな〜。あ、ピクニック行こうよ、明日!公園で、この間買った服を着て行こう」
「そうですね、良いと思います」
合成音声。でも、わたしにはその声がたまらなく嬉しい。
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「明日はお弁当を作るので、早く起きますね」
「わかった」
久しぶりに一緒に夜を過ごした。
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「おはようございます。朝ごはんはスクランブルエッグにベーコンを入れたものとパンです」
「え?ありがとう」
「日頃のお礼です」
パンは耳がカリカリだった。
「お弁当を持って、どこへ行きますか?」
「公園でしょ。近所の公園って何があったっけ?」
「ここから500mのところに|大岩《おおいわ》公園があります。遊具などが豊富な場所です。800mのところに|花山《はなやま》公園があります。花が咲き乱れているところです」
「なら、花山公園がいいな。レジャーシートも持っていこう」
「はい」
そう言って、ネットは黄色と白のギンガムチェックの布でお弁当を包む。
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見事な晴れ。わたしはレジャーシートを広げて、水筒のお茶をゴクリ。
「わぁ、おいしそう」
茶色く揚がった唐揚げ。鮮やかな黄色の卵焼き。ミニトマトとブロッコリー。ふりかけをかけたおにぎり。タコさんウインナー。
「うん、美味しい!」
「そうですね」
ああ、幸せだ。治してよかった。
ありがとう、相棒。