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死亡希望届「吹雪の埋没碑」
「こんにちは、今日は寒いですね」
暗い真っ暗の中、1人の男の元に
黒に覆われた男が現れ、話しかける
「誰だ」
「誰でもいいでしょう?レイルさん」
「なぜ名前を知っている、貴様は誰だ」
「…まぁまぁ、座ってくださいよ」
男を睨み変な事をすれば殺すと暗に伝えるような空気を生み出し
椅子に腰を下ろす
「さて、話を聞いていただけますか?」
「聞いてどうなる」
「あなたの希望が叶います」
「何の」
「死に方の…」
そう言った瞬間落ちていた聖書を拾ってすぐリーゾン=レイルは激昂し机を強く叩きつける
「ふざけるな!」
「…落ち着いてくださいよ」
「何が死に方だ、そんなものあのような環境だ変えられもしないに決まっている!」
長く伸びて整えられず放っていかれた髪も髭もさらに手で荒らしていく
「リーゾン=レイル、78歳」
「な」
「目の前のシャベルに気づかず強打し意識不明とは…哀れですね」
「何のつもりだ!」
「大人しく聞いてくださいよ、貴方は冷静に考えると思っていましたが…考えを改めた方がいいでしょうか」
むっと口を紡ぎ大人しく椅子へと再び戻っていく
「…それで、何だ」
「どう死にたいですか?」
「…戻れないのか」
「はい、戻りたかったですか?」
「早く続きが読みたいんだ、戻れるならば…」
「無理ですよ、眠っているならばまだしも、意識不明、ですからね」
机の木目を見るように目を回した姿を見て男は言葉を重ねていく
「貴方は落ち着いてる方だ、きっとあの悪魔達も喜んで来世を用意してくれると思いますよ」
「はっ…悪魔など、御伽話の存在だろう」
「そうですね、この世界では」
しばしの沈黙を挟んで男が微笑んで尋ねる
「決めましたか?」
「…このまま殺せ」
「このまま凍死がお望みで?」
「どうせ俺の事など誰の記憶にも残っとらん」
諦めたような光のない目を開いた姿を見て男は優しく微笑む
「そうですか…ならば…最後に、何かありますか?」
「最後…次があるならば暖かいところに行くのもありだろうか」
「えぇ!きっと、楽しいですよ」
「…そうか」
「これに、サインと希望を」
「わかった」
サラサラと慣れたように名前と希望を記された紙を受け取った姿を眺めたレイルは目を閉じる
男はゆっくり目を閉じて消えた姿を見納め
男は近くに浮かぶ鏡越しに雪景色を眺める
「…おやすみなさいませ、貴方につもる雪達はきっと立派な墓石のようになってくれる事でしょう」
鏡に手を当てて目を閉じようとすると
少し遠い場所から羽が瞬くような音がする
「やぁ、今日はある?」
見慣れた黒い羽をはためかせた姿に自然に微笑みが浮かぶ
「…おめでとバルー、一番乗り!」
「お、まじか、あいつきてないの?」
「ちょうどさっき終わったばっかりだからさ」
「へー…まぁいいや、くれる?」
「うん、どうぞ」
きらきらとした魂をそのままバルーに手渡す
何も抗うような人じゃなかったから
綺麗なまま回収ができてよかった
「あ」
ぐわりと大きく口が空いて魂が吸い込まれていく
満足そうに服装のせいで肌が丸見えな腹を撫でる
「さんきゅ」
「またね」