公開中
【1】夢でいいから
僕は平凡な日常が好きだ。
自分に才があるとは言えないけど、友達や家族には恵まれている。
高望みはしない、ただこの日常がずっと続けばいいな。
って思ってたんだけど。
「ん。……」
深夜、何だか体が痛くて眠りから覚めてしまった。
目を擦すって、重たい瞼を開けて辺りを見渡すと、ある事に気づいた。ベットで眠りについたはずなのに、僕は服やの入ったクローゼットっぽいところにいた。だから体が痛かったのだろう。
クローゼットの中の服は今の季節には合わない戦隊モノのパジャマや、胸の辺りに小さく恐竜のワッペンのついた半袖、星が描かれている短パンがハンガーに掛かっていた。どれも幼い男の子が着るものだ。
僕はこの状況を飲み込むことが出来ず、ただ固まるしか出来なかった。
すると数十秒経った頃、静寂だった空間に小さく ギィ と床が軋む音が聞こえた。
正直怖かった。目覚めたらベットで寝ていたはずなのに薄暗いクローゼットにいて、そして奇妙な音を聞いて、平然といられる訳がなかった。
僕は耳を塞いで、体を限界まで丸めて、息を潜めた。でもそれでも小さく床の軋む音が聞こえて、体の震えが止まらなかった。
音はどんどん大きくなっていった。
その音がどんどん近づいているのが分かった。そして、その音がすぐそこまで来ていることも分かってしまった。
一生のお願いだから来ないでくれ。
その願いも虚しく、 ガチャ と扉が開く音が耳を貫いた。
また、ギィ と床が軋む音が聞こえる。そして、その音は確実に僕のいるクローゼットへ向かっている。
僕はかつてないほど息を止めて、音を立てないようにした。
でも、それも無駄だったようだ。
ギィと何度も何度も聞いた音がして、クローゼットに部屋の灯りが差し込む。そして、その音の正体と目が合った。
?「大丈夫だよ。」
そこには恐ろしい怪物……ではなく制服を着た普通の女の子がいた。
優しい声色だった。
?「えっ。あっ大丈夫……?泣いてるよ。」
僕は音の正体が想像していた恐ろしい怪物ではなく、普通の女の子だったことに拍子抜けした。それと同時に自分が恐怖で泣いてることに今気づいた。いつから泣いていたのだろう。
僕「えっあっ……。」
?「ごめんね。怖かった?怖がらせるつもりなんて無かったからごめんね。」
彼女はスカートのポケットからハンカチを取り出して、僕に差し出した。ハンカチは薄いピンク色で端にくまが刺繍されていた。
僕はそれを手に取った。
最後まで読んでくださりありがとうございます⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
次回は未定ですが、早めに出したいと思います。
ご愛読いただけると嬉しいです。