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譲る気なんてありません!
私が小説を人生で初めて書いた時も恋愛系の奪い合いだった気が...
放課後の図書室は、西日が差し込み、静謐な空気に包まれていた。
しかし、その静寂を破るのは、二人の少年の間に流れる張り詰めた空気である。
沙優は、手元の英語の参考書に目を落としながらも、隣と向かい側に座る二人の視線を感じていた。
彼女にとって、未知の言葉を解き明かすことは至上の喜びであり、
その過程で感じる高揚感は何物にも代えがたい。
しかし今、彼女を取り巻く状況は、難解な英文法よりも複雑に絡み合っていた。
那岐「沙優さん、この単語のニュアンスですが……僕の説明で分かりましたか?」
丁寧な口調で、しかし熱を帯びた眼差しで問いかけるのは、同じクラスの那岐だ。
彼は沙優と過ごす時間の中で、彼女が知的好奇心に溢れ、
負けず嫌いで真っ直ぐな性格であることを知り、その度に深く惹かれていった。
駿「あー、それなら俺の方が詳しいぜ? 沙優、そんな難しい顔して悩まなくていいって。」
那岐の言葉を遮るように割り込んだのは、一学年下の駿である。
彼は中学時代から沙優に恋心を抱き、
彼女を追いかけてこの高校へ入学したという、いわゆる「チャラい」後輩だ。
しかしその瞳には、冗談では済まされない執着が宿っている。
沙優「……ううん、那岐君の説明で十分。でも駿君も、ありがとう。」
沙優は困ったように微笑んだ。
彼女にとって二人は、共に過ごす時間が楽しく、尊敬できる存在であった。
しかし、彼らの視線が自分に向けられていることに気づかないわけではない。
那岐「いえ、沙優さんが理解してくれることが僕の喜びですから。……ただ、少しだけ、駿君の介入が過剰なように感じられますね。」
那岐は静かに眼鏡のブリッジを押し上げた。
その動作には、彼なりの牽制が含まれている。
彼は知っている。
自分よりも年下の男が、あからさまに彼女への独占欲を見せていることを。
駿「へぇ、敬語で言えばカッコいいけどさ……結局は俺のこと避けてるだけだろ? 沙優、お前は俺と中学の時からずっと一緒だったじゃん。今の高校も、俺が追いかけてきたからここに来れたんだぜ?」
駿の声に棘が混じる。
彼は立ち上がり、沙優の椅子に手をかけた。
その距離感は、明らかに親密さを誇示するものである。
那岐「……それは失礼なことではないでしょうか。現在の彼女の努力を軽んじてはいけません。」
那岐もまた、静かに席を立った。
二人の背丈が等しく立ち上がり、図書室の空間には火花が散るような緊張感が漂う。
沙優は本から目を離し、二人を見上げた。
駿「……おい、那岐。いい加減にしろよ。俺は譲るつもりなんてないんだわ。」
那岐「僕も同じです。彼女の隣に立つ資格があるのは、誰であるべきか……改めて確認させていただく必要があるようですね。」
二人の視線が真っ向からぶつかり合う。
それは単なる好意の競合ではない。
沙優という一人の少女を巡る、静かな、しかし熾烈な宣戦布告であった。
沙優「二人とも、そんなに真剣な顔をしないで……。私は、二人がいてくれることが嬉しいんだから。」
彼女の言葉は届いたのか、それとも火に油を注いだのか。
図書室の時計の針だけが、冷ややかに時を刻み続けていた。