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陸
みつばが部屋に戻ったのを見届けたかなめは、恐怖さえ感じる笑顔でこえに詰め寄った。
かなめ「こえさん?」
こえ「ひえっ」
かなめ「俺の妹を泣かせて、ただで済むとお思いですか?」
かなめは間違いなく怒っている。笑っているのが余計に怖い・・・。
かなめの顔を見れば、こえでなくとも誰でもそう思うだろう。
かなめ「決めました。我々時の国は、音の国との同盟の話を破棄させていただきます」
ないこ「そんな・・・困ります!何年も交易してきたのに、それを無駄にするおつもりですか!?」
かなめ「無駄にしたのはそちらでしょう。俺が音の国との交易をしていたのは、みつばがそちらで働いていたからですよ。最初、みつばは『友達がいっぱいできて楽しい』と言っていたのに」
ないこ「ならどうして!」
かなめ「こちらが何も知らないと思っておられたのですか?とっくに全て知っていますよ。音の国の幹部・・・、つまりあなた方にみつばが邪険に扱われた、とね」
事実を告げられ、ないこ達は押し黙ってしまう。
かなめ「とにかく、同盟はなかったことにします。その判断は何があっても変わりません。妹にしたことを謝ったとしても、ね」
かなめの意思は硬かった。ないこ達も何度も説得を試みたが、かなめの決断が変わることはなかった。
こえ「ないこさん!?どうするのこれ!?」
ないこ「時の国はなかなかの領地を持ってる。それが手に入れられないとなると、音の国は不利だ」
LAN「謝ったとしても許してもらえないですし・・・」
ないこ「今思えば、舞と愛のやることは違和感だらけだった。なんであんなにいい子を手放しちゃったんだろう・・・」
こえ「というか・・・みつばは僕のこと好きじゃなかったのかぁぁぁぁぁ!」
3人は絶望しながら音の国へ帰って行った。
全てを終えたかなめは、みつばの部屋の扉をノックした。
かなめ「みつば?」
中にはしのもいた。
しの「しばらく泣いてたんだ。慰めてたら寝ちゃって」
みつばはしのの膝の上で、規則正しい寝息を立てて眠っていた。
相当泣いていたのだろう、目の下は赤く腫れて、涙が滲んでいる。
かなめ「怖い思いをさせてごめんな、みつば。もう大丈夫だからね」
かなめは妹の頭を撫でて言った。