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雛祭りの霊
霊が見える少女:巫胡(みこ)の怖いけど感動するような物語。
私は巫胡。生まれつき霊感を持っている。
これは、10年前…私が実家にいたころの話。
当時は16歳だった。
雛祭りということで家には雛人形が飾られていた。
(うわぁ、今日もいる…)
雛人形を見ると、いつも思ってしまう。
そう、この雛人形には、怨念?のようなものが憑いていたからだ。
雛人形は女の子の成長を祝うための神聖なものだ。
なのに、なぜかうちの雛人形にはその怨念が憑いている。
でも、それを口に出すことはできない。
『その霊に憑りつかれてしまうかもしれないから。』
(はぁ…なんかこれを見ると心が疲れるんだよね…)
何回も見て来たとはいえ、ちょっとびっくりしちゃうんだよね…。
夜になった。
いつものようにぼんぼりの明かりを消す。
なのに。
寝る前に無意識に雛人形を見てみると…明かりがついていた。
「あれ?父さん、母さん。ぼんぼりの明かり消したんだけど…またつけた?」
「つけてないわ。」
「つけてないぞ。」
「えっ…じゃあ、なんで…?私さっき消してたんだけど…。」
「消すのに失敗したんじゃないかしら。巫胡は昔からおっちょこちょいだもの。」
「そ、そっか。疑ってごめんなさい。」
そう言った母さんは額にうっすらと汗を浮かべていた。
私の記憶では、確かに消したはずだ。
そして、もう一度確認しながら明かりを消す。
やっぱり、さっきのは何かがおかしかったはずなんだ。
「はっ…!」
急に目が覚めてしまった。
「水…飲もうかな。」
リビングに行くと、雛人形がある。
(暗い中雛人形のあるリビングに行くのってなんか怖いな…。)
リビングに入る。
「な、何で…⁉⁉⁉」
雛人形のぼんぼりに明かりが灯っていた。
その時、後ろから肩をガッと掴まれた。
「ネェ ホントウハズット ボクノコトガ ミエテイタヨネ?」
「お前は誰だ…」
恐怖で口調がきつくなる。
「雛人形の怨念か。」
「チガウヨ ボクハ コノ ヒナニンギョウニ トリツイテイル ジバクレイ」
ジバクレイ…?あぁ、地縛霊のことか。
「どうするつもりなの。私はお前のことを成仏させるなんて無理だ。」
「ジョウブツ? ボクハ ソンナコト ヒトコトモ イッテイナイ。
ジョウブツ トカ ゼッタイ イヤダネ サレタクナイヨ。」
この幽霊…成仏する気ないのか。
「オイ ダマッテ ドウシタンダヨ ハナシタイコトガ アルナラ サキニ
イッテオク ホウガ イイダロウナ。ボクハ イマカラ オマエノ コト
アヤツルカラ。ノットルッテ イエバ ツタワルカナ?」
意識を乗っ取って私を操る…⁉
「そんなことお前にできるの?どうせ無理なんでしょ?私は知ってる。
毎年毎年お前はその雛人形に張り付くようにいたでしょ?そんなことしかできない
お前は何もできない!」
「ソンナコト オモッテタンダネ。 デモ ソンナ シンパイハ イラナイヨ。
ダッテ ボクハ ジバクレイノ ナカデモ トップクラス ダカラ。」
彼がそう言った瞬間、急に体から力が抜けた。
「な、何で…こんな、ことにっ…。」
「ダカラ イッタデショ。 ボクノ シンパイハ イラナイ。ジャア、ソノカラダヲ
ツカワセテ モラオウカ…!」
「誰か、助けてっ!」
最後にまともに発した言葉だった。
「あはははははは…あハハハハッ…アハハッハハッハ…」
自分が自分じゃなくなってしまった。
その時。
「その行動を今すぐおやめなさい。」
女の人の声が聞こえた。でも、母さんじゃない。
「ナニ?キコエナカッタヨ。ヤメロッテ?」
「そう。私は、あなたにその行動をやめなさい、と言っているの。」
「お前がその体を今すぐにでも動かしたら殺めるぞ。」
声のする方を向くと、そこには…!
「オヒナサマ、ト、お内裏様⁉ オイッ… マダ イシキ アッタノカ⁉
ヒトコトモ シャベルンジャ ネェェェェェェ!」
一瞬だけ、喋れた!よし、このまま!
「お雛様、お内裏様!この地縛霊を…祓ってくださりませんか! イマッ、クチノ
ウゴキヲ トメロト イッタバカリジャ ナイカ!ヤメロ!」
「巫胡さん、あなたがそう言わなくても、私たちはこの奴を殺める気なので、
大丈夫ですよ。安心して下さい。今から言葉を唱えます。」
「ヤメロト イッテイル!ヒナニンギョウモ ウルセェェェ!シャベルナ!」
「喋るのは悪いことではありませんので、そのまま続けますよ。では、さようなら。
地縛霊さん。 消えなさい。」
お雛様がそう言った瞬間、体が元に戻ってきたような気がした。
そして…黒い靄も無くなった。
「私、最初はお雛様たちの怨念が黒い靄になっていたと思ってて…
怖がっていたんです。ごめんなさい。だけど、本当にありがとうございました。
あのままだったら私、どうなっていたのかなって…思います…。」
やばい、泣いちゃう。
「あ…謝らないでくれますか?私たちもあの黒い靄にはすごく困っておりました。
でも、その地縛霊を殺れたのは、巫胡さんのおかげです。こちらこそ、ありがとう。」
「俺からも、ありがとう。これから何かあっても、助け合おう。」
「そうですねっ!」
それから私は実家に帰りその雛人形を見るたびに話しかけるようになった。
「ただいま。今年も頑張りましょう。雛さん。」
そう言うと、こう言ってくれる。
「助け合って生きていきましょう。今年もよろしくね、巫胡…!」
『雛さん、内裏さん、巫胡』という呼び方をするようになった。
霊感があるってたまにはいいかもしれない。
今日は3月3日雛祭りの日ということで、雛祭り関連の小説を作らせて頂きました!
どうでしたか?観想くださいね!
文字数は2265文字でした!