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春を返して
週1でこれを投稿しようと思います
億劫だ。何もかもが億劫だ。
なぜ、こんなにも捻くれているのか。なぜ、人間という生物はこうにも矛盾するのか。
俺は入学式に向かう重い足取りの中、ネガティブな思考を走らせていた。
中学生の時はこれほど捻くれた性格ではなかった。高校に上がると同時に俺の中の何かが外れ、こんな性格になってしまった。
一歩一歩と歩を進め、学校へ近づいていく。
ふと周りを見渡すと、他の新入生と思われる人が複数人いた。
なぜ、義務教育という枷から外れたのに、また学ぶのか。学ぶ必要はもうないはずなのに。学びたい人だけ行けばいい。俺みたいな人間は行かなくてもいいじゃないか。
こんな考えを持っていると思うと、俺は腐っていると自分でも思う。我ながら狂っているとも思う。
そう考えている中も、刻一刻と学校へと近づいていく。
着いてしまった。
入学式が始まるまでに、まだ20分はある。どこかで暇を潰すか。
そう思い、俺は近くのコンビニに行って菓子パンを買ってきた。ちなみに買ったのはカツサンドだ。昼飯もこれにする。俺はカツサンドを口に運び咀嚼する。
カツサンドを食べていると、一人の新入生と思われる女子が俺に話しかけてきた。
「君は何してるの?」
どう答えようか迷ったが、俺は普通に答えた。
「早く着いたから暇を潰している」
俺がそう答えると彼女は「へぇ、そうなんだ」と呟く。
「で、聞いてきたお前は何してるんだ?」
そう聞き返すと彼女は答えた。
「私?私も暇つぶししてる。てか、お前って言わないでくれる?」
「なら、なんて呼べばいいんだ?俺はお前の名前を知らないぞ」
「私の名前は如月春香。春香って呼んで。あ、あだ名でもいいよ?」
「あだ名?」
「そう。中学の時にハルって呼ばれてたの」
「そうか。この話は置いといて、そろそろ入学式始まるけどいいのか?」
腕時計をみると、入学式までの時間は後2分ほどになっていた。
「早くしないと遅刻するぞ?入学式初っ端から遅刻はまずいんじゃねぇのか?」
「え?」
春香は自分の腕時計に目を落とす。
「早くしないとやばいじゃん!」
気づいていなかったのか。
「じゃ、俺は先に行くわ」
俺はそう言い残し体育館へと向かった。
ここの体育館は、中学校の体育館より少し大きい。まぁ規模が違うからな。
俺は体育館に入り、案内に従って自分の席であろう場所に座った。
始まるのを待っていると、見慣れた人物が俺の左の席に座った。
「間に合った〜」
安堵の息を吐いているそいつに俺は話しかけた。
「よぉ、奇遇だな」
話しかけて数秒の沈黙がこの場に流れた。
「え?なんで?同じクラス?」
「多分、同じクラスなんだろうな。席の列的に」
「よろしくね?」
「なんで疑問系なんだよ」
程なくして入学式は終了した。
しかし、こいつと一緒のクラスか。
俺はそう思いながら隣の席を見る。そこには呑気に座っている春香がいる。
「どうしたの?」
その質問に俺は答えない。めんどくさいから。
それに、俺はあまり人と関わることを好まない。
俺は自分のクラスを出て、知り合いのいるクラスに乗り込んだ。
「おい、露樹。こっち来い」
呼ばれた人物は文句を言いながらも俺の側にきた。
「なんだよ柚月。こっちは暇じゃないんだよ」
「蹴ってくんなよ。八つ当たりすんな」
「八つ当たりじゃねぇ。れっきとした正当防衛だ」
正当防衛ではないだろ。文句を言うと次は殴られそうなので黙っておく。
「次はなんだ?」
露樹は俺の心を諭したように聞く。
俺はその問いに黙った。言ってしまえば露樹との関係も終わってしまう。これは俺だけが抱え込む。
「別になにもないよ」
「そうか、なにかあったらすぐ言えよ」
「うん。いつもありがとな、露樹」
「俺たち親友だろ?そんなの当たり前じゃん」
「そう、だね」
少し心に痛みが走る。
親友。そう思っているのは露樹だけかもしれない。俺と露樹は単なる友人関係としか思っていなかった。
「じゃ、俺は自分の席に戻るわ。お前も自分の教室に戻れよ」
「わかった」
俺はそう言い教室へと戻った。