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天才ちゃん!4
「おはよ~」
朝、教室に入ったら声をかけられた。しずちゃん以外から声をかけられるのは…初めてかもしれない。
普通の人は嫌われ者に声はかけないからね。
昨日のカラオケのおかげだろうか?
それなら嫌々でも行って、よかったかもしれない。
「おはよ?」
「おはよー!」
返したら後ろからしずちゃんがやってきた。抱きつかれるのはちょっと嫌だ。
「こら、抱きつくな。」
「えぇ~いいじゃん。」
「ダメ。暑苦しい。」
ぶーぶー言っているけど、離れてくれた。
「おはよう。」
改めてさっきの女の子に言う。
確か、昨日はじめにタンバリンを叩いてくれた女の子。
席が隣の、確か|夕川《ゆうがわ》|乃蒼《のあ》ちゃん。
「おはよう」
返してくれた。よかった~。一安心。
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金糸雀さんに頑張って声をかけてみた。
日暮さんに危うく邪魔されかけたけど、金糸雀さんは、また声をかけてくれた。うれしい…!
「金糸雀さん、昨日は楽しかったね。」
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昨日?あ、カラオケか。
「うん、楽しかった。」
「だよね~。金糸雀さんのときとか、本当にライブみたいだったし!そうじゃなくてもみんなそれぞれですごかった!」
「? あ、うん。みんなすごかったよね!またどこかで一緒に行きたいって思った。」
「だよね~。ねえ、金糸雀さんって何か好きなものあるの?」
「私の好きなもの?_勉強…は嫌いじゃないけど、好きっているわけではないから…_やっぱ読書かなぁ。いろんな人の考え方に触れられるし。夕川さんは?」
「私は音楽聴くのが好き!…ねえ、私のことは乃蒼ちゃんでいいよ?」
「本当!?乃蒼って可愛い名前だよね!私のことも悠でいいよ」
「わかった。悠ちゃんね。」
「うん。そっちは乃蒼ちゃんね。」
「え、いいなぁ。うちも金糸雀さんのこと、悠ちゃんって呼びたいわぁ。」
えーと…確か|久礼川《くれかわ》いろはちゃんだったはず。
「いいよ。わたしもいろはちゃんって呼んでいい?」
「もちろんいいよ~」
かくして、話す人が1人から3人に増えたのであった。
「なあ、金糸雀さん、今日遊びに行かない?」
「どこに?」
「そうだなぁ、ゲーセンとか?」
「じゃあ、遠慮するね」
私と行っても絶対つまんないし。
「何で?」
「ゲームは…ちょっと…あんまりしたことがないから…」
「いいよ!それでも!」
「やめとくよ。」
「そうか…」
「普通にカラオケ行こうぜ。もし行くのなら。」
何故か暗くなった、盛田くんの後ろから、高麗くんが現れた。
「あ、それじゃあ他の人も誘っていいかな?」
乃蒼ちゃんは絶対誘いたい!
「え…」
「別にいいだろ。盛田。」
「あぁ。うん、まあいいけど…_僕は金糸雀さんを誘えれば十分だったし_」
「じゃあ、そうしようぜ。」
「高麗? カラオケ行くの? オレも行っていい?」
「金糸雀さん…だよね?確か。金糸雀さんはいい?」
「私は問題ない…かな。私も他の人呼ぼうと思っていたし…」
「そう。じゃあ30分後に店で。場所は…この店でいい?」
「いいよ。」
縁があるのか、その店はこの前女子で行った店だった。
「乃蒼ちゃん。カラオケ、男子に誘われたんだけど、一緒に来ない?」
「え!もちろん。行くよ!悠ちゃんも行くでしょ?」
「行くけど…」
なんか…私が行くから行く、みたいになっていない?私にそんな価値ないけど…
「悠ちゃーん?なぜ私は誘わないのかな?」
「今から誘おうと思っていたよ。けどカラオケなら乃蒼ちゃんのほうがいいなって。」
私の歌に一番ノッてくれていたからね。
「え〜。うち、去年からの友達なのに〜。」
「いろはちゃんは来る?」
「私は…親がそこら辺は厳しいからなぁ。この前のがバレて少し怒られちゃったからなぁ。また機会があったら誘ってもらってもいい?」
「もちろん!」
「金糸雀さん、少し相談があって…」
「何?」
「妹への誕生日プレゼントで何をあげようか迷っていて…」
妹の誕生日プレゼント?なら妹がいる|江東《こうとう》さんがいいんじゃないかな?
「それなら江東さんがいいんじゃないかな?確か妹いたよ。」
「あ…そう。うん。じゃあ聞いてみる
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悠ちゃん…これ、意図的ではないよね?
そう思ってしまうくらいあしらい方が完璧だった。
その男は悠ちゃんと話したくて、喋りかけたのに。それを他の人に振ってしまう。
これは男子もたまげたもんじゃあないだろう。
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