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東方無彩界0 各々の気づき
「おっかしいわね」
仄かに色づいているはずのイチョウが、全然金色に輝いていないことに、紅服の巫女・博麗霊夢は気づいていた。
___寧ろ、少し黒くなっている?
間近で見ると、緑色にもなっておらず、灰色になっている。
「異変?」
そう考えることしか、彼女にはできない。
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珍しいマジックアイテムを手にした、金髪の魔法使い・霧雨魔理沙。
それは、彼女の友人である__いや、腐れ縁とでも言うべきか__七色の人形使い・アリス・マーガトロイドからもらったものだ。青く色づいている黒い液体が入った瓶の中に、星のようなカラフルで輝かしい、眩い光が閉じ込められている。そう聞いた。
瓶にはラベルが貼り付けられてあり、よく見えない。
「さっそく使ってみるか」
液体はトロリとしていて、光って___いない。色がついていない。ただただ、漆黒の液体が、実験プレートに寝そべっているだけ。
「なんでだ?」
アリスが仕込んだとも考えにくい。
色がなくなった、異変。
その言葉が、彼女の頭の中にこびりついて離れない。
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「咲夜?」
紅い悪魔・レミリア・スカーレットに仕えるのは、銀刀のメイド・十六夜咲夜。吸血鬼に仕える人間など、普通ではあり得ないのだが___
「なんでしょう」
「もう一度、《《あれ》》を起こしてみたいの。今度こそは、大丈夫なはずよ」
「…《《紅霧異変》》、のことでしょうか?」
レミリアがかつて起こした異変・紅霧異変。吸血鬼にとって過ごしやすい環境にするべく、血のように紅い霧を発生させた。結果的に、霊夢と魔理沙によって阻止された。
「そうですね、やってみましょうか」
「わかったわ」
そう言って、「まずは小さい霧から」といい、レミリアは手の中にぽんと霧を発生させた。
「___?」
「どう、咲夜?この紅い霧。最高よ」
どこをどうみたら、《《紅い霧に見えるんだ》》。
咲夜の目にうつっていたのは、黒っぽい霧。紅さなど微塵も感じない、ただ黒い霧。
「異変」
そうポツリと呟くと、
「今度こそは成功させてみせるわ」
と、咲夜の意図とは違う返事が返ってきた。