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八話
卒業式のシーズンになり、私もついに卒業式の日を迎えた。
頬に触れる空気は暖かくなり、周りの人の嬉しいという感情や悲しいという感情が音となって耳に入り、脳に刻み込まれる。
私は、友達もいないからいつも通り一人で学校に行って一人で帰る。
みんなは写真を撮ったりしているけれど、私はする必要がない。
写真なんか撮っても、私しか映らないから。
いらないものは撮らない。
撮っても、写真フォルダーがいっぱいになって、その写真を見るたびに今日を思い出すだけ。
特に何かあったわけでもないから思い出す必要がない、思い出したくない、気がする。
家に帰って、ベッドに飛び込む。
布団に包まり、目を瞑る。
手を洗っていないとか着替えていないとか、今はどうだっていい。
とりあえず、少しの休息がほしい。
あの空間は、なぜか胸が詰まる。
見えない壁でもあるかのように私とクラスメイトとの間には距離があって、まるでみんなには私が見えていないよう。
最初の頃はまだ視線を感じて、このクラスに存在しているという感覚があったけど、今はもうない。
誰も私を見ず、話しかけず、触れない。
誰も私を相手にしなくなった。
今まではこうなることを望んでいたのに、願いが叶った今となってはこれが少し寂しいというか、今の私じゃ言葉に言い表せない。
この感情は私に強く布団を握らせる。
不思議だなと思うけど、これが現実。
みんなにはもう私が見えていないのかもしれない。
神様も、もしかしたらもう私を見ていないのかもしれない。
私を生んだ神様でさえも私を見ていないなら、それはもう私が存在していないのと同じ。
もう見られていないことに少し失意する。
でも、私の代わりに風が吹けばなと思う自分もいる。
たとえそれが幸せの風でも、怒りの風でも、悲しみの風だったとしても。
見えなくても存在はしている。
そんな存在になれたらな、と思う。