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逆襲の火照り
嬢/姫宮
「……ふぅ。これで静かになったな」
軍服についた雪をバサバサと払い落とし、杉元がチセに戻ってきた。その顔は、まるで厄介な害虫を駆除した後のような爽やかな笑顔だ。
「悪いな楓、起こしちまって。あいつは明日まで雪の中に埋めといたから……って、楓?」
杉元が毛布のそばに膝をついた瞬間。
楓は、自分を覗き込もうとした杉元のマフラーを、弱々しい、けれど確かな力でグイッと引き寄せた。
「わっ……!? どうした、楓、まだ熱が――」
不意を突かれ、バランスを崩した杉元の顔が、楓のすぐ目の前まで落ちてくる。
楓は潤んだ瞳で彼を見つめ返し、火照った唇を小さく尖らせた。
「……杉元さん。白石さんを追い払うのはいいですけど……」
「……お、おう」
「……私、まだ寒いんです。放っておかれたら、もっと風邪ひいちゃう」
そう言って、楓は杉元の大きな首筋に、熱を持った自分の両手をそっと這わせた。
ヒヤッとする彼の肌に、自分の熱を移すように。
「ッ……!?」
杉元の体が、岩のように硬直した。
戦場では弾丸を潜り抜ける男が、楓の指先ひとつに、まるで毒でも盛られたかのように動けなくなる。
「楓……お前、自分が何してっか分かって……」
「分かってません。病気だから、頭がふわふわしてるんです。……だから、杉元さんが責任とって、もっと温めてください」
楓が少しだけ上目遣いに、彼の耳たぶに唇を近づけて囁く。
杉元の喉仏が、大きく上下に揺れた。
「……降参だ。お前の勝ちだよ」
杉元は観念したように溜息をつくと、今度はさっきよりもずっと深く、逃がさないように楓を抱きしめ直した。
彼の心臓が、耳を押し当てた楓の頬に、白石を追いかけていた時よりも速いテンポで打ち鳴らされているのが分かる。
「風邪が治ったら、覚悟しとけよ? ……今は、おとなしく寝かしつけてやるからさ」
杉元の低い声が、今度は甘い熱となって楓の全身を包み込んだ。