公開中
絶対アイドル☆ふみぃちゃん!
ぬーーーーーん!
「みんなぁっ!今日も来てくれてありがとーー!!」
遅くて綺麗な両手を目一杯広げて、彼女…アイドルのふみぃ(通称ふみ)は天使のような笑みを浮かべた。
「あっち、みんなのために頑張るからねっ!」
ばちっとウィンクを決めた彼女を、女神と言わずなんと言おうか。
(あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜かーーーーわいいいッッッッッ!!!!!!)
僕の名前は詩並木葵。絶対アイドルであるふみぃの熱狂的ファンだ。今日は、そんな彼女のライブに来ていた。
「いや…ほんとかわいいな………」
思わず呟いてしまう。今は曲の休憩時間。みんなの質問に答えちゃうぞ☆タイムだ。ふみぃちゃんはファンとも積極的に関わってくれる。天使。
アイドル☆ふみぃとは、ここ最近現れたアイドル業界の新星。その姿、声、トーク、パフォーマンスに脳を焼かれた人は数知れず……今では、最近の音楽・アイドルを語る上で欠かせない存在となっている。まさに、絶対アイドル。
「やっぱハマったな〜ふみぃにさ、」
「…ヒナタ」
にひひと笑う彼は僕の友人、紀伊瀬日向。僕にふみぃちゃんを進めてきたやつで、運動神経はあるが、頭はアレな、残念なヒト。顔はいいのに。
「なんか俺のことひどくいってない?」
「ハハ、ナンノコトダカ」
日向の追跡に目線を逸らしながら、僕は再びステージに目をやった。そこには、笑顔を振りまく彼女の姿が。
(かわいい美しい神々しい……多分今だけで視力53万くらい上がった…!!)
熱視線を送っていると、ふと、彼女と目が合った。
「!?」
そして、そのままふみぃちゃんはバチっとウィンクを……僕に…!!
「ぐはっ」
「あっアオイ〜〜〜!!!」
日向の叫び声を最後に、僕の意識は途切れた。
「あーーー!今日も来てくれてた!」
あっちの名前は文月糸夢。絶対アイドル☆ふみぃの名で、アイドル界隈の頂点に君臨している。そんなあっちは今、ライブ後のトークのため、部屋にいるのだが____
「あーー!!アオイきゅんッッ!今日もちょーーかわいかったなぁぁぁッッ!!」
そんなことはどうでもいい。大事なのは、今日もあの子『詩並木葵』が、あっちのライブに来てくれていたことだ!!!!!!
「うーーー!!くっそかわいい!!何あの儚げ中性美人!!あっちが男だったら間違いなく掘ってた!!!」
完全防音なことをいいことに、あっちは叫びまくる。葵きゅんへの愛を。
葵きゅんは、三波中学校に通う中学二年生の男子生徒。成績はフツー、友達もフツーにいる。でも、そんな彼に、なぜ絶対☆アイドルであるあっちがときめいているのか?愚問だな!!!っとその前に…
彼には、とある親友がいる。紀伊瀬日向。スポーツに向いていて、明るい彼は、クラスでも人気者。モブのような葵きゅんにとって、大切な親友。そう、明るい攻めと、平凡な受け………
B L な の で す ッッ!!!!!!!!!!!
そう、あっち『ふみぃ』と『文月糸夢』は、腐女子なのですッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あのサイコーに推せるカップリングがっ、あっちのために来てくれる!!!!このためにアイドルをやっているのです!!!!というか普通に葵きゅんがどタイプ!!!いいよね中性美人!!!!大好き!!!!!!掘りたい!!!!
そしてっ、そのっ、葵きゅんとっ、さっきっあっあっ……
目が合っちゃったぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!
きゃーー!!!!!キュルンとした瞳は女の子っぽいし!身体も男っぽくない!背もちっちゃい!でも、親友には案外毒舌!でもでも、たまにデレが出る!!!声はいまだに少年とも少女とも取れる!そんなのっっ推すしかないじゃんッッ!!!!!!!
「はぁ…はぁ……テンションが上がりまくっちまったぜぃ」
この後はヘーボンで哀れなモタクどもとめんどくさいトークをしなくては……さっさとかえりたい。早く帰って推しカプの妄想してたい………
「あ、時間だ」
脳内で叫んでたら、時間が経ってたみたいだ。時計の針は、トーク開始時間を指しかけている。
「あー…だるぇ……」
奇跡でも起きて、あの二人が来たりしないかな〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「おーい、生きてる?」
「生きてるわ……死んでたまるか」
ヒラヒラと視界を邪魔する日向の手を雑に退けて、僕はそう返した。そう、僕は死ぬ時ワケにはいかないのです。だって、だって!
「この後っっ!ふみぃちゃんとトーク会があるんだよ!?」
「おー、そうだったな!!」
「忘れるなこのボケ!!!!!」
「ひどい!!!」
お前が布教したんだろうが…と愚痴をこぼしつつ、僕と日向はトーク会の部屋へと向かった。
ふわふわのリボンと宝飾をあしらわれたドア。それを、僕は恐る恐る開いた。
「…失礼…します」
「はぁーい、どーぞぉぉ!?!?」
『!?』
机に手をついて、可愛らしい笑顔で返事をしかけた彼女が突如として、ずっしゃああっと、それはそれは見事に滑った。
「えっ、ちょ、ふみぃちゃん!?大丈夫なのか!?」
焦る日向。混乱する僕。なぜかぶつぶつと何かを呟いてるふみぃちゃん。
--- 何 こ の 状 況 ---
「ん“ん“ッッ…ごめんねヒナタくん、アオイきゅ…くん」
ちょっと動悸が…と起き上がったふみぃちゃん。大丈夫なのか…??
「えと_ふみぃ、ちゃん…?」
心配に思い、僕は彼女の顔を覗き込んだ。
「うぇふべらぁぁぁぁ!?!?!?」
『!?!?』
謎の奇声を上げながら彼女は、今度は後ろへとのけぞった。
「なっ、なになになに!?!?ちょっ、アオイ!?」
「いや知らないよ僕も!えと、大丈夫ですか、ふみぃちゃん!」
「だっ、大丈夫だよヒナタくん…アオイきゅん………」
口元を押さえながら、ふみぃちゃんはゆっくりと体勢を戻した。
「じゃ、じゃあ、気を取り直してッ、おはっ、なししようか!!!」
『はい………?』
みなさん。どうしたらいいでしょうか。あっちの目の前に、推しカプがいます。
(あ〜〜〜〜〜〜〜〜死にそう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)
葵きゅんがぁ…目の前でぇ…呼吸してるよォォォ……スキィ……
おっと、口角が歪みすぎちまったぜ。危ない危ない……気を取り直しまして……
「で、なんのお話する?」
ここはトップアイドルのふみぃ。パーペキに演技を仕切って、ここから推しカプを見つめさせていただきますよ!!!
「じゃあ…一つ質問いいですか?」
あっ葵きゅん!?!?あっちに質問!?スリーサイズかしらん!?なんでもいいよ!!こっちからも聞かせてね!!!主に二人の出会いについて!!!
「どっ、どうぞぉ!?」
「___あの……なんで僕達の名前を知ってたんですか?」
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッッ!?!?!?!?!?!?」
やばッッッッ…あっち、もしかして最初に呼んじゃった!?盗撮と盗聴とストーカーしてたことバレちゃう!!!!!!!!!!
「えっ、あの…あー、トークに来てくれる人の名前はね!!覚えるようにしてるのぉぉッ!」
な ん だ そ の 嘘 は
あっち、普段人の名前覚えるの苦手なんだが……
「そう、なんですね!さすがですッ!!」
あーーー天使の微笑みィィィ…………よかった!!勘違いしてくれて!!!!よかった!!!!良心が痛むけど!!!!
「あ、じゃあ俺からも質問いいっすかぁ?」
「うんっどーぞぉ!」
「_______」
「___、___!!!??」
「____」
「___________」
そこから、あっちと日向くん、葵きゅんは、楽しくお話をした。それはそれは楽しい時間で……推しカプの仲がよくて……死にそうでした……
「_あ、そろそろ時間じゃないか?」
日向くんの言葉で、あっちは現実の世界へと引き戻された。
「あー、あー、そうだねぇ!じゃあもうバイバイかぁ……」
もうしばらく…推しカプを間近で見れる機会なんてないだろう……うぐっ……ぅ
「ふみぃちゃん、僕、今日のトーク会すっごく楽しかったです!!」
ああああああああああああああまっ、きゃわっ……きゃわわわわわぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!?!?!??!
「ちょっと…帰るのが悲しいかな…?」
ああああああああああもおおおおおおおおおおなんだこのかわいい生物!!!!!!!!うちで養っていいですか!?!??!?!?!?!?!?!?!??!?!?!??!日向くんと腐腐腐な事させたい。
「あ、じゃあ、さ。あっちと連絡先交換しない?」
『!?』
「あっちも二人とお話しするの楽しくてね!リアルでも会いたいなって…だめ、かな?」
ふふふ…必殺・アイドルスマイル!!!!!これに逆らえるあっちのファンはいない!!
『どうぞッッッ!!』
スッと差し出されるケータイに、あっちは自分のケータイをかざした。
「ふふ、えへっ…よろしくね、アオイきゅん、ヒナタくん!」
と、いうことでぇぇぇ
(推しカプの連絡先、ゲットだぜ!!!!!!!!!)
*おしまい、
何これ……
あ、ちなみにこれ、二人にもふみぃちゃんにも恋愛感情はないので、三人仲良くしてる感じになります。
ふみぃちゃんは腐みぃちゃんだったって事です。あは、