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看病という名の密着
嬢/姫宮
コタンのチセ(家)の外は、猛烈な吹雪。
パチパチと薪が爆ぜる音だけが響く中、楓は厚手の毛布に包まって、朦朧とする意識の中で熱い吐息をこぼしていた。
「……ん……、すぎもと、さん……」
「ここだよ。大丈夫だ、楓」
すぐそばで、安心させるような低い声が聞こえる。
楓が薄目を開けると、そこには心配そうに眉を下げて、彼女の額に濡れ手拭いを乗せようとする杉元の姿があった。
「ごめんなさい、私……足手まといに……」
「バカ、何言ってんだ。お前が倒れたら、俺がどれだけ生きた心地がしないか分かってんのか?」
杉元はぶっきらぼうに言いながらも、その手つきは驚くほど丁寧だ。
彼は大きな手で楓の頬に触れ、熱を確かめる。冷えた指先が火照った肌に心地いい。
「これ、アシㇼパさんに教わった薬草の煎じ薬。苦いけど、頑張って飲めるか?」
杉元が楓の背中に腕を回し、上体をそっと抱き起こした。
分厚い胸板の温かさと、彼がいつも身に纏っている、火薬と冬の風が混ざったような匂いが鼻をくすぐる。
「……にがい……」
「一口飲んだら、干し柿やるからさ。な?」
子供をあやすような口調に、楓は思わず小さく笑ってしまう。
なんとか薬を飲み干すと、杉元は満足げに頷き、約束通り小さく切った干し柿を彼女の口元へ運んだ。
「……杉元さん、移っちゃうから、離れてください……」
「俺は不死身だって言っただろ。病気だって、俺の体に入った瞬間に逃げ出すよ」
彼は冗談めかして笑うと、今度は自分も毛布の中に潜り込み、楓を後ろから包み込むように抱きしめた。
「ちょっと、杉元さん!?」
「暴れんな。お前の体、まだ震えてる。体温分けるのが一番早いんだって、キロランケも言ってただろ」
背中から伝わってくる、杉元の強くて確かな心臓の鼓動。
「不死身」の名にふさわしい、圧倒的な生命力の塊に包まれていると、不思議と死の影が遠ざかっていくような気がした。
杉元は楓の耳元で、静かに、けれど熱を帯びた声で囁く。
「楓……お前を失うくらいなら、俺は何度だって地獄から戻ってきてやる。だからさ、早く元気になって、また俺に笑いかけてくれよ」
大きな手が楓の手をぎゅっと握りしめる。
熱に浮かされた夢心地の中で、楓は「この温もりがあれば、どんな冬も越せる」と本気で信じることができた。