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私の言葉は、幸せになるために。
幸せっていうのは、自分で掴み取りにいくものだとアタシは思うんだよね。
半年前、クラスメイトの|滝川小葉《たきがわこのは》が自殺した。それからずっと、あの子にとってこれが本当に幸せな道だったのか考えたんだよ。
正直、死っていうとイヤな感じしかしないじゃん?そこまで追い詰められていたにしても、もっと別の逃げ道があったような気がする。
小葉はいじめを受けていた。首謀者はアタシの元親友の|宮本椎名《みやもとしいな》で、アタシの友人の何人かも関わっていたみたいだね。
小葉が死ぬまで、椎名が退学になるまで、椎名と一緒にいじめていた友人が停学になるまで──
生徒も誰も、センセーもいじめの存在に気が付かなかった。
いつでも椎名の一番近くにいたのはアタシ。でも、椎名にそんな裏の顔があるなんて知らなかった。
小葉は友人ってほどじゃないけど、クラスメイトとして仲良くしてたよ。彼女の控えめに笑った顔が好きだった。
死ぬしかなかったのかもしれない。本人の中ではそうかもしれない。
でも、何もわからない外野だからこそ突ける真実があったんじゃないかな。
「……早く言って欲しかったな…」
いじめなんかのために、こんなに馬鹿げた理由であの優しい子が命を断たなければいけなかったんかな。一人で抱え込まなきゃいけないんだろうか。
アタシがいじめに気づいてれば、彼女が誰かに相談していたら、何か変わったのかな。
過ぎたことはしょうがないと割り切りたいけど、やっぱり後悔はどう足掻いてもこっちを追いかけてくる。
なんでいじめられている人は、自分が悪いと思っちゃうのかな。一つも悪いところなんてないのに。
でも否定され続けると、自分の中での正義が揺らぐんだよなぁ。
私が彼女の存在を肯定してあげたら、良かったのかな。否定したことはないけど、彼女の存在を肯定していることが当たり前すぎて言わなかった。
「……早く言えば良かったなぁ…」
アタシは立ち上がると、短いスカートについた汚れを払う。ボサボサになった派手色の髪を破れた手鏡と無事だった櫛で整えた。
ちぎれたボールチェーンがついたキーホルダーを回収し、スクールバックから散らばった教科書類を元の場所に戻す。
血が出てる。
耳たぶを触ると、そこから微妙に血が漏れ出している。あいつらに引っ張られたからだな。
「まずは保健室、そのあとは職員室、そのさらにあとは家でおかんが校長に鬼電ってとこかな」
いっちょ上がり。スクールバックを持ち上げると、そこから一枚の紙が落ちてきた。
『どうせお前も人殺し』『小葉を返せ!』『死ねばいいのに』『知らなかったなんて言い訳が通じると思ってんの?』
それを折りたたんでポケットに入れると、耳を押さえて保健室に走り出した。
誤解を解くには教員が一番効くんだ。私が小葉をいじめてないことは証明されてる。
アタシは自分の幸せのために生きることにした。頼まれてないけど小葉の分まで仕事して、いい友達に出会って、恋人を作って、結婚して、子供いっぱい産んで、私なりの幸せの中で死んでくるから。
小葉、謝罪は今から100年くらい待ってほしい。