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貴女の死の先に─1st
神様はきっといる。
それが、アイツの口癖だった。
「神様は私たちよりも、ずっと苦しい思いをしている人たちを助けることを優先しているだけ」
「俺たちよりも?」
うん、と元気よく返ってきたアイツの返事に思わず耳を塞ぐ。
どうして耳元で大声を出すんだよ。
そんなことを考えながら、俺は空いっぱいに輝く星たちを眺めていた。
少し体を起こすと、遠くに街の明かりが見える。
「家はなく、親もいない。明日を迎えられる確証を持てない。世界から捨てられたような俺たちよりも苦しい奴らがいるかっての」
「君には私がいるから一人じゃない」
「……二人でも変わらねぇだろうがよ」
世界の果てにある、人間の捨て場。
ここに連れてこられた奴が街に足を踏み入れることは、殆どあり得ない。
そもそも街はずっと遠くにあって、辿り着くことすら難しいという噂だ。
無法地帯とも化しているここにいる人間は大きくに三つ分けられる。
一つは数年前の戦争で親を失い、ここに流れ着いてしまった《戦争孤児》。
もう一つは、何か罪を犯して国から追放された《犯罪者》。
最後は家族から捨てられた《捨て子》。
「あー、街のみんなは今頃チキンとか食べてるんだろうな」
横になりながらアイツは言った。
もう|そんな時期《クリスマス》か、と俺は鞄から一枚の紙を取り出す。
人間の捨て場、とは言ったがここは元々普通にゴミ捨て場だった。
今でもそれは変わらず、色々とゴミは捨てられている。
この紙──数年前のカレンダーもその一つだ。
日付を知るためだけに使っているから曜日は合っていない。
「やっぱりサンタさんが描いてあるね」
「流石に信じてないよな?」
「え?」
「……嘘だろ」
神を信じてたり、サンタを信じてる。
そんなものは幻想でしかない。
「ふわぁ、なんか眠くなっちゃった」
アイツはそう言いながら瞼を閉じる。
俺も寝ることにした。
続きは2022/12/25/11:00