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第5章:道中の影
北の谷へ向かう旅路は、決して穏やかなものではなかった。
途中、彼らは“レイダー”と呼ばれる略奪者の集団と遭遇した。黒いマスクと鉄の装甲で身を包み、すべてを力で奪うことを正義と信じる者たち。
「動くな! 食料と水を出せ!」
カナが震える手で銃を構える。
ユウは一瞬で状況を判断し、廃車の影にカナを押しやった。
「隠れてろ!」
ユウは古びたボルトアクションのライフルを構え、一発で相手の脚を撃ち抜いた。混乱に乗じて逃げ出した二人は、なんとか命を繋いだ。
呼吸が荒くなる中、カナが問う。
「……あんな風に、殺すことに慣れてるの?」
ユウは目を伏せて言った。
「慣れたくなんてなかった。でも、そうしないと、生きられない世界だ」