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それは台本にありません!
今回はキンプリを使って描きました!
1. 楽屋のパニック
「……なぁ海人、これ何?」 「何って……廉、鏡見てみなよ」
テレビ局の楽屋。長ソファから立ち上がった廉は、自分の手を見て絶句していた。いつもより少し日焼けした肌、そして自分のものより少しだけ骨張った、ダンスでよく見る大きな手。 慌てて姿見の前に走ると、そこに映っていたのは、くりくりとした目を限界まで見開いて驚いている「髙橋海人」の顔だった。
「うわあああ! 俺が海人になっとる!?」 「あはは! 廉の声で叫ぶと変な感じー。新鮮!」
のんきに自分の(つまり廉の)端正な顔で、ふにゃっと微笑んでいる海人。 そう、二人は今、なぜか中身が入れ替わってしまっていた。
原因は、今日の特番バラティの企画だった。『もしも二人が超能力を持ったら?』という、ちょっとチープな超常現象ドッキリ。仕掛け人としてスタッフから「この怪しいツボに触れて、驚いたフリをしてください」と言われ、二人同時に触れた瞬間、パチッと静電気が走った。……そして、気づけば視線の高さが変わっていたのだ。
「どうすんねんこれ! あと10分で本番やぞ!?」 「大丈夫だって廉。俺、廉のモノマネ得意だし。クールな顔して、基本『おん』か『せやな』って言ってればバレないって」 「俺の扱い雑やな! つうか、お前が俺の顔でそんなニヤニヤすんの、シンプルに気持ち悪いからやめろ!」 「えー、廉の顔って笑うと意外と可愛いよ?」 「自分の顔褒められても嬉しくないわ!」
そんなドタバタのまま、無情にも「本番5分前でーす! ステージ袖にお願いします!」とスタッフの声が響く。 今日の番組内容は、なんと『脱出ゲーム風・謎解きミステリー』。 二人は入れ替わったまま、探偵風のトレンチコートを着せられ、スタジオの特設ステージへと放り出された。
2. キャラ崩壊のステージ
カメラが回り、きらびやかな照明が二人を照らす。 スタジオには、怪しい洋館を模したセット。中央には鍵のかかった大きな宝箱が置かれている。
「さあ!King & Princeのお二人、この部屋に隠されたヒントを元に、制限時間15分以内に脱出してください!」 天の声(ナレーション)が響く。
画面上は【クールなイケメン探偵・永瀬廉】と【癒やし系マスコット探偵・髙橋海人】。しかし中身は真逆だ。
「えー、まずは……」 海人(中身:廉)が、海人の可愛い顔でビシッとポーズを決め、いつもの低音ハスキーボイスで推理を始めようとした。
「あ、間違えた。俺、こっちの声か」 「(地声が高くて戸惑う廉)」
「おい海人(廉)、しっかりしろや!」 焦った廉(中身:海人)が、廉のクールな顔のまま、ガシガシと頭を掻きむしる。あの前髪に命をかけている永瀬廉が、人前で髪をボサボサに乱している。ワイプの芸能人たちが「え? 廉くん今日どうした?」とザワつき始めた。
「よし! じゃあ、まずはあの箱開けよっか!」 廉(中身:海人)は、廉のスタイル抜群な体を使って、ぴょんぴょんと跳ねながら宝箱に駆け寄った。そして、鍵穴を覗き込む。
「ん〜、暗くて見えないや。ねえ廉(海人)、これさ、思いっきり引っ張ったら壊れて開かないかな?」 「お前それキャラ崩壊しとるわ!!」
海人(中身:廉)の鋭いツッコミが炸裂する。
「何が『引っ張ったら開かないかな?』や! 鍵かけられた部屋から脱出するゲームやのに、なんで物理で解決しようとすんねん! 探偵の衣装泣いとるぞ!」 「だって、廉の体、意外と筋肉あるからいけそうなんだもん」 「俺の体で不法侵入みたいなことすな!」
3. 奇跡のシンクロ
「残り時間、あと5分です!」 天の声が容赦なくカウントダウンを告げる。
「やばい、全然ヒント解けてない!」 焦る廉(中身:海人)は、セットの壁に飾られた絵画をベタベタと触り始めた。 「あ、これ動く! 廉、見て! 絵の後ろに数字が書いてある!」
「マジで!? ……って、待て。その数字、さっき俺が本棚で見つけた本のページ数と同じや。組み合わせたら、鍵の暗証番号になるんちゃうか?」
中身が入れ替わって大混乱しているはずなのに、さすがは長年一緒にいる二人。お互いの行動の意図が、驚くほど瞬時に伝わる。
「海人(廉)、その数字を足すんだよ!」 「おう! ……って、計算は俺(廉)の頭脳のほうが得意やのに、今は俺(海人)の脳みそやから、ちょっと時間かかるわ!」 「失礼だな! 俺だって計算くらいできるもん!」
ぶつぶつ言い合いながらも、二人は暗証番号を導き出し、宝箱のダイヤルを合わせた。 カチャリ、と音がして、中から脱出用の鍵が現れる。
「開いたーーー!!」 歓喜した二人は、思わずお互いに駆け寄り、ガシッとハイタッチ……を通り越して、ぎゅっと抱き合った。
画面に映るのは、【海人の顔をした廉】を、ものすごい男らしい包容力で抱きしめる【廉の顔をした海人】。
「……ん?」 抱き合った瞬間、再びパチッと静電気が走った。
「「あ」」
視線の高さが元に戻る。自分の手のひらを見る。 ……戻った。完全に、いつもの二人に戻っていた。
「……あ、脱出成功です!!」 扉を開けてステージを飛び出す二人。スタジオは大拍手に包まれた。
4. 収録の終わりに
「いや〜、今日のキンプリ、なんか凄かったね!」 「廉くんのあの弾けっぷりと、海人くんのキレのあるツッコミ、新しいコンビ芸の誕生かと思ったわ!」
収録後、スタッフたちから大絶賛されながら、二人は楽屋に戻ってきた。 バタンと扉を閉め、同時にふぅーっと深いため息をつく。
「……生きた心地せんかったわ」 廉がソファに倒れ込む。いつもの定位置、いつものクールな座り方だ。
「あはは、でも楽しかったじゃん? ほら、スタッフさんたちも大爆笑だったし」 海人がいつものように、犬のように人懐っこい笑顔で廉の隣に座る。
「楽しかったって、お前なぁ……。俺の顔であんなピョコピョコ動き回りやがって。明日からのイメージ崩壊したらどう責任とってくれんねん」 「大丈夫だって。廉、顔がいいから何しててもカッコよかったよ?」 「……うるさいわ」
照れ隠しにそっぽを向く廉の耳が、少しだけ赤い。 海人はそれを見てニヤニヤしながら、「また入れ替わったら、次はダンス動画とか撮ろっと」と呟いた。
「絶対阻止するわ」 廉の容赦ないツッコミが響く、いつもの平和で、ちょっと騒がしい楽屋の風景に戻っていた。