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空っぽな祈りを捧げし者達
廃棄された都市の、壊れかかった協会の地下、アンドロイドたちが集まっていた。
彼らはほとんど壊れている身体を動かして、ただ静かに、腕を組み、上を眺めていた。
レイは温室から都市の協会の地下へとユイナを連れて行った。
「これが、アンドロイド。心を持たない者」
ユイナは虚無の目で、あたりを見渡す。
ただ、手を合わせて、天を見る。それをするだけのアンドロイドにユイナは疑問をいだいた。
「彼らはなにをしているのですか?」
「祈り。神に、祈ってるんだよ」
「神?彼らはなにを祈ってるのですか?」
レイはちょっと困った顔をする。ユイナは構わず、アンドロイドに聞く。
「それが私たちの役目だからです。祈りましょう。天の神に。皆のために」
「でも、ここには生体反応はありません。皆というのは誰ですか?」
ユイナは構わず質問を続ける。そんなユイナをレイは止める。
「彼らは協会用に作られたアンドロイド。それしか言えないんだ」
「それは、お前の父もだ。父には感情がない。ただの家庭用アンドロイドだ。お前も空っぽ。みんな空っぽ。なにかにすがる。だから祈る」
レイの表情が変わった。
悲しそうな顔で、ギュッと拳を握る。
「違う。父さんは……父さんには愛情があった!父さんは母さんを愛していた!だから、父さんは、父さんはお前とは違う!」
レイは声を荒げて、一気に言った。
そのまま、涙を乱暴に拭うと、地下から逃げるように走り去った。
「あの感情は、なんというの?」
「祈りましょう。空っぽな者の中身が埋まるよう」
そのアンドロイドには、自分の意志があるように見えた。
「貴方の名前は?」
「私?私は、ルシフェル・ルノウェーゼ」
ルシフェルは無表情のまま、感情のない瞳で告げる。
金色の髪が静かに揺れる。
「私には、意志はある」
「心は?」
「心?それはなに?」
「レイが探しているもの。知りたいなら、来ない?」
「貴方たちと?」
「うん」
ルシフェルの金色の瞳が僅かに揺れる。
ルシフェルは少し考えた後、コクリと静かに頷いた。
心を求める旅に、新たな仲間が加わった。