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第二話「2つの運命」
それから1年ほど経った。どうやら彼女も自分と同じように家族を亡くしてしまったらしい。僕は幾度となく彼女と励まし合った。彼女と趣味が同じ旅行であったため、そのことで盛り上がったりもした。そんな彼女のことを知っていくたびに、僕は彼女に惹かれていった。
その日もいつものようにいつもの時間でポストを開ける。今日はどんなことが書かれているのか。
しかしそこには予想外の手紙が入っていた。
「助けて」
焦っているのか字が汚かったが、確かに彼女の字だった。
それ以降、手紙は届かなくなった。彼女が何か助けを求めているのかもしれない。僕は彼女を助けにいくために、過去の手紙を読み漁った。
彼女の住んでいる県は知っていたが、そこからの手がかりはかなり少なかった。彼女が言っていた家の近くにある店の話、細かい地元のニュース。しかしそのどんな出来事も時系列に合わない。
調べるためには過去の手紙を見ざるを得なくて、でもそれが辛くて。他愛のない会話一つ一つが事故の前の家族の記憶と重なって。何度も何度も消えてしまおうかと、諦めてしまおうかと思ったが、彼女を助けないといけないとをえるとそんなことできなくて。
彼女を探し始めてからちょうど1年が経った。ようやく彼女の住んでいる集落がわかった。これで助けに行ける。彼女の名前は知っているし、現地に着けばどうにかなるだろう。そう思ったとき、彼女の住む地方で大災害が起こった。それと同時に、僕は彼女が助けを求めている理由と、時系列が合わなかった理由。そして、自分のしなければならないことがわかった。薄々気づいてはいたが、どうやらこの箱は1年前の誰かに向けて手紙を送れるものだということ。そして、彼女はその地震に被災していたこと。そして、僕が彼女を救わなければならないこと。それから僕の旅が始まった。