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ノロイ ノ ムラ イッキ見!
奈々は、散策路を歩いていた。
こうやって休みの日に山を散策するのが、奈々の趣味。
こうすることで上司に怒られたストレスも、理不尽なルールも、過度なノルマの疲れも忘れてしまうほど夢中になってしまう。
今は秋。紅葉の季節。木になっている葉の色も赤く染まっていて、きれい…。
「あー…自然って気持ちいい〜‼︎‼︎‼︎」
少し歩くと、滝があった。滝も涼やかで気持ちいい。
「ちょっと夏にきたいところなんだけど…」
そうつぶやき、奈々はまた引き返すことにした。
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「わーッ、落ち葉のクッションだ〜!!」
奈々はガサガサと落ち葉を漁る。毛虫やその他の虫はいないみたいだ。
「おっしゃ、寝っ転がってみるだけ寝っ転がろう‼︎」
奈々は落ち葉の上に寝転がる。あったかい風も吹いていて、眠くなってしまう。
そういえば今日、朝の5時に家を出て寝不足なんだった……。
(ちょっとだけ…ちょっとだけ…おやすみなさーい)
そして、奈々はいつの間にか寝てしまった。
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「…ん」
起きた時には、辺りは真っ暗。
「ヤバい‼︎か、帰らないと…」
しかし、奈々はライトを持っていなかった。
さっきまでの温かい風は、いつの間にか肌寒い風に変わっている。
(どうしよう…どうしよう…)
そういえばこの山、何十人も行方不明者を出していて世界記録にもなっているんだとか…。
(しかも全員帰ってきてないんだよね⁈私もそうなっちゃうんじゃ…ッ)
「大丈夫ですか?」
「ヒィッ‼︎‼︎」
「大丈夫ですよ。この近くに住んでいる者ですから」
「え…?」
奈々は驚く。こんな田舎に、住む場所があるんだ…。
「民宿があるんで、よかったら泊まって行ってくださいよ」
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「はい、こちらです」
着いたのは、山のずいぶん奥にある場所だった。
電球がところどころにあり、フェンスが張り巡らされている。看板には「詛村」と書かれている。
「これ、なんて読むんですか?」
「あ、そちらは教えないルールになっているんですよ。ムラへ、ようこそ。お名前は?」
「な、奈々です」
「奈々さんですか。では、民宿へお入りください」
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その民宿で私は、無料で泊まっていいことになった。
「いらっしゃいませー」
やる気があるようにもないようにも思えない普通の仲居さんが部屋に案内してくれた。
部屋は和室で、低めの木のテーブルが置いてある。窓は大きくて外の自然が見えた。
「すごい」
奈々はボソッとつぶやく。
「では奈々様、こちらのルールをお守りの上、“民宿 イロノ”をご利用ください。では、失礼します」
仲居さんはそう言うと、革張りの本をテーブルに置いて出て行った。座布団に座り、早速目を通す。
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ポイ捨て禁止、花火禁止、夜間の騒音禁止、自然を破壊するような行為禁止(例・無駄に水を使う、不必要に石鹸を使う)、ご飯は残さず食べる(アレルギー除く)、川を汚さない、村人とケンカをしない、この村のことは外部に絶対に話さない。
詛村の自然を守るためにもよろしくお願いいたします。村役場
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「わあ…環境に配慮してるなー。SDGs実行自治体としてアピールすればいいのに…」
奈々はそうつぶやく。でも、何かしら事情があるのだろう。例えば……
村長が気難しい性格で、問題を起こしまくってるとか。オーバーツーリズム?を心配してるとか。
でも、それほど観光客はいない。というか奈々以外宿泊客がいない。
土日なんだから、1人くらいいてもいいのに。と、ノックがあった。ドアを開けると、仲居さんがいた。
「お食事をお持ちしました!」
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夕食はご飯、さんまの焼き魚、味噌汁、野菜の煮物だった。
全部好きな食べ物だったため、奈々は目を輝かせた。
脂の乗ったさんまの焼き魚も、赤味噌の味噌汁も、味の染みた煮物も全部ご飯に合って美味しかった。
もちろん残さずペロリと平らげた。
「ご飯おいしかったです!で、お手洗いはどこにありますか?」
「あー、お手洗いですね。部屋の外の廊下にございます。ただ、深夜2時から深夜3時には行かないでください」
変な注意点、と思いながら奈々はお手洗いへ。ついでにお風呂に入ることにした。
「あのー、パジャマとかタオルとか持ってきてないんですけど…」
「ああ、民宿の方でご用意いたします。あと、今日着てきたパジャマはこちらでお洗濯いたします」
うわあ、いい場所やんここ!と心の中で叫びながら大浴場へ。
湯船は源泉で、肩こりや疲労回復、美肌に効くらしい。風呂もすごく気持ちよかった。
「最高かよこの旅館」
奈々は布団に入って今日のことを思い出していた。布団も柔らかくて重みがあって気持ちいい。遭難は
散々だったけど、遭難したおかげで最高ななんちゃら村に着いたわけだし、不幸中の幸いってやつだ。
(でも、他にもお客さんいればいいのに…)
そう思いながら、奈々は眠りについた。
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朝。その日は快晴。奈々は日記をつけていた。
奈々はルール尊重しちゃうよタイプのため、
夜のお手洗いも耐えたし騒音を立てないようにスマホはマナーモードにした。
(スマホ持ってたんだから電話すればよかったな……)
しかし、電波が繋がらない場所らしく、電話が繋がらない。
「……。」
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その日の朝食は、味噌汁とご飯と卵焼きとほうれん草のおひたしであった。
「全部好きなものだ〜!」
「それはよかったです」
仲居さんは昨日よりキラーっとしている。
どうやら寝たら疲労回復したっぽい。
ご飯をもぐもぐ食べると、元気が出てくる。
甘めの卵焼きを食べて、合わせ味噌の味噌汁を飲んで、醤油が沁みたお浸しを食べて。
「今日はムラをご案内いたします」
仲居さんが言う。
「ここは伝統工芸品がらわ人形と言います。
古くからここで生産が盛んで、らわと言う素材を使っているのです。らわは方言です」
へー。なんか聞いたことある。そう思いながらも旅館を出る。
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外を出ると畑がたくさんあった。
コンビニ等はもちろんなし。
小川や用水路、ため池や森が小さい敷地にたくさんある。
「あらあら、お客さんは久しぶりね。みんなお客さんはいなくなっちゃうから」
ムラビトは嬉しそうにニコニコ笑っている。ムラビトはほとんどがお年寄りだった。
奈々は最初危機感を持っていたがすっかり打ち解けた。
「みんな滞在時間はどれくらいなんですか?」
「そうねえ…1週間くらいかしら?」
結構長いじゃん、と思いながら奈々は散歩をしてみる。
ルールが厳しいのもあって、川は魚が見えるくらい透き通ってるし、木は元気そうでゴミもなし。
奈々はその景色に圧巻された。紅葉も遭難する時の山より鮮やかだ。
2時間後………
「この村、すごいですね!私はそろそろおいとまいたします」
「いやいやいや、観光客さんのおかげで私たちは食っていけるんです。ぜひ滞在を」
ムラビトは焦ったようにあたふた言う。
「でも、無料で滞在しているのですからお金は……」
「いえいえ。私たちは若い子が来てくれるのが嬉しいんですよ。ね、ね?」
「そうだぞ。滞在を検討してくれたまえ」
「頼む。ムラの希望なんだ」
いつのまにか、**“年寄りの言うことが聞けねえのか”**と言う空気になっている。
「わ、わかりました。滞在いたします」
奈々はそう言ったが、なにかモヤモヤした。
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__私タチ ノ ムラ ノ 希望 絶対ニ ウバウ__
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「でも、無料で泊めていただいているのですから、伝統工芸品をつくりたいです!」
「おおおお、これで予想通り……ゴホン、ありがとうございますゥ」
こうして、らわ人形をつくることになった。らわ人形とは、ここでとれた草で編まれた人形である。
奈々は編み物も好きだったため、らわ人形をたくさん作った。
(ん…?なんか、みたことある…?)
来る日も来る日も、奈々は帰るコトを拒否されて泊まり、働いた。
「こ、これ…労働基準法違反なんじゃ…」と最初は思っていたものの、ものすごく高い報酬が出るし、
何より優しい方が働いているから、楽しく働くことができた。
「ねえねえ、奈々ちゃん。髪はまとめて働いたらどうじゃ?」
「いえ、平気です」
ぽとっと、髪の毛がらわ人形に落ちる。
「あ、やっば!!取らないと……」
しかし、その髪はとれることなく埋もれてしまった。
「あ…ああ…」
「そんくらい問題ないっちゃ。髪の毛入れるのは伝統として伝わっとるもんじゃ」
方言でおばちゃんはそう言い、らわ人形を渡した。奈々はその続きを編むことにした。
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__我ガ村ノ希望 マンマトヒッカカッタww__
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突然、奈々の体調が急変した。頭がクラっとして、めまいがして……。
「す、すいません。らわ人形の形って、まさか…!!」
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昔、奈々はこんな話を聞いたことがあった。
--- 地図には存在しない、「のろいむら」って知ってる?そこではわら人形を作ってるんだって…… ---
(ま、まさか!!)
そう考える前に、足が動いていた。
「あっ、《《獲物》》が逃げたよ!!」
防災無線がアラートを鳴らしまくる。
「私…獲物なんかじゃないっ」
奈々は走るのが苦手だった。でも、死にたくない。
あのらわ人形、わら人形。そして、その人形に髪の毛が入ってしまったたからっ…。
ま…て…
ヒタヒタと、老人たちが追っかけてくる。
それでも奈々は走った。
お願いだから 若者は私たちの希望 若者のおかげで私たちは……
ズリっと、奈々は転ぶ。坂道を転げ落ち、カーブに場所で崖から、落ちた。
「がっ…あっ、う…」
奈々は、意識が遠のいた。
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奈々は、意識が戻るとベッドにいた。
「…ここ…のろい、むら…?」
詛村の読み方。それは、のろいむらだった。
「ノロイムラ?ああ、あなたが倒れていた丘の上の村ですか?違いますよ」
奈々はとりあえずホッとして、答えてくれた人の顔を見た。一応、若い男の人っぽい。
「詛村を研究している者です。詛村について説明いたしましょう。…実は、詛村はこの山の行方不明者の寄り合いなのです」
「えっ⁈」
奈々は驚く。もしかして、私も住民にされかけて…??
「そして、迷い込んだ若者の行方不明者を謎の男が勧誘して、そのまま優しさに漬け込んだあと襲って……死ぬまで暮らすことになります。ムラの秘密に気づくと、食べられます」
「え…。私、食べられるところだったの??」
「ええ。でも、崖から落ちれば死ぬのと引き換えに食べられません」
「でも、死んじゃうんでしょ?結局おんなじじゃん」
「あなたは落ち葉が溜まりまくった場所に落ちたため、すり傷だけですみましたよ」
奈々は安堵のため息をつきまくり、また眠りについた。
「…ん?」
奈々は、登山道の前に倒れていた。
たしか、土曜日に山登りに来て……落ち葉のクッションに寝っ転がって……
そこから、奈々は思い出せなかった。
「ああ…しばらく大自然は、諦めようかな」
奈々は駅へ向かった。
「あっ、やばあい!遭難しちゃった…」
少女は涙目であたりを見回した。すると、「お嬢さん」と声をかけられた。
「じゃあ、うちの村で一晩お泊まりになられてはいかがですか?」
全部で4728文字だそうです、
見ていただき誠に感謝!