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稽古後の休憩。
ただのいちゃいちゃ。
こんなものが多いです基本
庭や室内に、木刀同士がぶつかり合う乾いた音が鳴り響く。
今は、義勇さんと一緒に稽古をしている最中だった。
「っ、……!」
一生懸命技を打ち込みにいってはいるけど、全く通らずに義勇さんは涼しい顔で全て捌く。
悔しくて、顔を少し歪ませながらもさらに攻撃を激しくしようとするけど、体が動いてくれない。
「お前はそれが限界か?」
義勇さんが少し厳しくそう言ってくる。
限界じゃない、って言いたいけど、言えそうにない。
「げ、…かぃな……わ……」
息がだえだえになって、段々肺に新鮮な空気が入ってこなくなってつらい。
義勇さんは少しため息をついた後、少し強めに木刀を弾いて
「休め。無理にやろうとするな」
って言って、私の持っている木刀を掴んで無理やり止める。
「っ、ごめ……な…」
急に止められたため、疲労が一気に襲ってきてその場に座り込んでしまう。
足がガクガクして、手が震える。
自分の体が限界なんだな、って体が一気に訴えてきているのが理解できた。
「立てるか?」
って優しく聞いてきてくれるけど、動けそうになくて頭を横に振る。
すると、木刀を二本持って先に縁側に向かってしまった。
でも少しすると私の元に帰ってきて、何も言わずにひょい、と急に持ち上げられて抱き抱えられる。
「ひぁっ!?」
急に抱き抱えられてしまい、変な声が漏れてしまった。
抱き抱えられたことで義勇さんの顔が近くなって、恥ずかしくなって思わず目を逸らす。
でもそれを見られていたのか、
「どうした?」
って聞かれてしまう。
「い、いえ……ただ顔が近いな、って……」
そういい、自分の顔が赤くなるのがわかった。
心音もさっきのきつかった時と同じぐらい鳴っていて、本当に恥ずかしいって感じてしまう。
「……そうか」
そのままクスッと笑った。
「っ、………」
笑った顔が角度がついてさらにかっこよくなっていて、本当に恥ずかしくなる。
いつもはこんな事ならないのに、今日はおかしいのかな…とか思いながらも歩くたびにくる微かな振動に揺さぶられる。
「わざわざすみません……」
少し申し訳なくなってしまい、ボソッと言葉を漏らす。
でも当の本人は気にしていないかのように、
「気にするな。立てなかったんだろ?」
って聞いてくるから、その通り過ぎて何も言えず黙りこくった。
そんなやりとりをしてると、縁側に着いたのか優しくおろして座らせてくれた。
ぐったりしながらも、なんとか座っている体制を保つ。
義勇さんが隣に座ってきて、ぐいっと私の頭を肩に寄りかかるように寄せてきた。
「えっ、あ…いいんですか?」
戸惑いながら聞いても、何も言ってこない。
まぁでもいいんだろうなって解釈して、体を義勇さんの方に預けた。
「……ねえねえ義勇さん」
ちょっと甘えたような声を出して、義勇さんの事を呼ぶ。
義勇さんは不思議そうにして
「なんだ?」
って聞いてくる。
義勇さんの肩にちょっと頭をぐりぐりさせながら
「……頭撫でてください」
なんて言ってみた。
ちょっと恥ずかしかったけど、少しだけ甘えたい気分だから関係ない。
少しドキドキしながら、目を瞑って待つ。
「ふふ……いいぞ」
「……!ありがとうございます!」
義勇さんの大きい手が、私の頭の上に置かれて優しく撫でる。
手からぬくもりが感じられて、すごく嬉しくなる。
足をぶらぶらさせて、手に頭をさらにぐりぐりさせてもっと、なんて甘えてみる。
それをみてかはわからないけど、撫でていた手でぐいっと体ごと寄せてきた。
「?どうしたんで……きゃっ!」
急にそのままぽす、っと膝枕をされた。
「え、ちょ……ぎゆ、さ…?」
「嫌ならやめるが……どうする?」
「嫌では、ないんですけど……でも……」
ふい、っと視線を外した。
「なら偶にはいいだろ?」
「ひ、ひゃい……」
でも特にそれ以上やってくるわけでもなくて、ただただ膝枕をしてきただけだった。
ちょっともどかしかったけど、まぁいいかなぁ……なんて考えながら身を委ねる。
ふと、ドッと2回目の疲れが襲ってきたのが感覚でわかった。
それのせいで、急にうとうとしてしまってくる。
でも寝ないようにしないと……とか思っていると、追い討ちをかけるようにまた優しく頭を撫でてきた。
「んっ、……」
本当に眠い。
そんな事を考えて、落ちてくる瞼をぎりぎり堪えながらなんとか意識を保つ。
「眠いか?」
優しい声でそう聞いてくる。
「はぃ……」
「……そうか」
少しだけ笑ったのを聞いて、安心してしまった。
その時に力が抜けてしまい、瞼が一気に閉じてきた。
縁側にいるおかげで、陽の光がぽかぽかしていて、直で当たってくるからさらに眠くなる。
そのまま、ことんと意識が落ちていった。
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「ん、……ぁ……れ…?」
ちょっとまだぽやぽやする頭でなんとか身体を起こす。
どうやらあの後、本当に寝てしまったらしい。
義勇さんに申し訳ない事をしたな……
体には義勇さんの羽織がかけられていて、気遣いをされているのかな、とか考える。
でも耳を澄ましてみても、義勇さんらしき足音はしない。
「任務にいっちゃった……?」
だとしたら羽織置いて行っちゃったのかな……
申し訳ない気持ちになった、っていうものだ。
気づけば膝枕されて寝ていたし、その後部屋まで運ばれてさらに羽織までかけてもらった。
「……はぁ……」
今日が任務がなかった日、というのが幸いだろう。
羽織を丁寧に畳み、義勇さんの部屋に置きにいくことにした。
廊下を足音をあまり立てずに部屋まで向かう。
夜風が少し火照った身体を冷やすかの様に吹く。
それが気持ち良かった。
そんな事を思いながら歩いていると部屋の前まで着いていたので、そっと扉を開けて机の上に羽織を置いてまた部屋を出た。
……義勇さんが帰ってきたら、お昼構ってくれたお礼に鮭大根でも作ってあげようかな。
そう思い、月明かりで照らされる縁側に座ってまた夜風に当たった。