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覚悟の代償
嬢/姫宮
翌朝。
小鳥のさえずりと、チセの中に差し込む柔らかな光で楓が目を覚ますと、そこには既に身支度を整えた杉元が座っていた。
「……おはよう。熱、下がったみたいだな」
「あ、杉元さん……。はい、おかげさまで。昨夜は、その、いろいろと……」
昨夜の自分の大胆な「逆襲」を思い出し、楓の顔がみるみるうちに赤くなる。
それを見た杉元は、意地悪そうにニヤリと口角を上げた。
「なんだ、覚えてんのか。……『頭がふわふわしてるから、責任とって温めて』、だっけ?」
「うっ……! そ、それは、病気のせいで……っ」
慌てて毛布を被り直そうとした楓の手を、杉元が素早く、かつ力強く掴み取った。
逃がさない。その瞳には、昨夜の看病モードの優しさとは違う、獲物を狙う猟師のような鋭い熱が宿っている。
「病気のせい、で済ますつもりか? 楓」
杉元は楓の腕を引き寄せ、彼女の体を自分の膝の間に閉じ込めた。
逃げ場のない至近距離。杉元の顔が、ゆっくりと、けれど確実に近づいてくる。
「俺は一晩中、お前のせいで眠れなかったんだぜ。……責任、とってくれるんだろ?」
「すぎもと、さ……ん……んっ」
言いかける口唇を、熱い吐息ごと塞がれた。
昨夜のそれとは比べ物にならないほど深く、執拗な口づけ。
杉元の大きな手が、楓の後頭部を優しく、けれど強く引き寄せ、彼の色に染め上げようとする。
「……はぁ、……楓」
ようやく唇が離れた時、杉元は楓の額に自分の額をこつんと預け、荒い呼吸を整えていた。
彼の頬も、わずかに赤らんでいる。
「これでお相子だ。……でも、次はもう病気のせいになんてさせてやんねぇからな」
杉元は楓の耳たぶを甘噛みするように囁くと、いつものように軍帽を被り直し、照れ隠しのように「よし、飯にすっか!」と立ち上がった。
背中越しに見える彼の耳が真っ赤なのを、楓は見逃さなかった。