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簡易契約の死神ちゃん 第五話:七不思議その一 トイレの唯子さん【下】
掴めないものを求め続ける。無いものねだりをし続ける。
なんとかなる。きっとそうだ。
そうでも思わないと破裂して全て無くなりそうだったから____
「パーティーの始まりだよ」
死神ちゃんはそう言った。
俺は白金琉斗。自己紹介は省いておく。
今、緊迫とした空気がこの場を流れている。
死神ちゃんと言うのは、死神の仕事をしている少女のことだ。
(詳しい事は前の話を読んでくれ)
今戦っているのは、七不思議1番トイレの唯子さん。
姉の花子さんが成仏されたのは俺らのせいって勘違いしてて…
だけど、死神ちゃんがそれに立ちはだかっている。
いつもはノリの軽くて、ちょっとイラッとくる女子だけど、今は違う。
それほど死神という仕事に執念を抱いているんだろう。
「…おまえ、たたかえる?なら、つぶす。」
「強気な事言うのね。身体は子供なのに。あまり力使いすぎちゃダメよ」
「おまえ…」
ビュン
伸びた唯子さんの髪の毛が、太い束になって死神ちゃんに当たろうとする。
その太さは太ももくらいで、バットみたいだ。
死神ちゃんはそれを簡単に避けて、持っている大鎌を振る。
少ししか振っていないのに、空気が揺れた。
「君の戦闘能力はそれくらいなのかぁ。…さぁーて、次は私の番だね。
痛くて泣いても知らないからね?」
次の瞬間、死神ちゃんが消えた。
いや、正確には見えなくなった、だ。
撒こうとしているんだろう。時々ホコリが舞うが、何処にいるか正確には分からない。
「ちょこまかと…つまらないなああ」
唯子さんがそう言う。
そして俺の方に向き直った。
「おまえも、たたかえる?」
「俺か?…いや、無理だ」
「そっか。なら、ゆうせんじゅんいはこっちだ」
おい、待てよ。これってもしかして…
「おまえさきにころすね」
マジかよ…!
どうすれば良い。俺はまだ死神ちゃんの様な戦闘技術はない。
なら出来ることはただ一つ。
逃げるしか…!
だが、俺は死神ちゃんのように運動神経は良くない。
あっという間に差を詰められてしまう。
「あっ…!」
段差につまづき、転ぶ。
その隙に、唯子さんの髪束に押し付けられた。
「うぐっ」
唯子さんは静かに言う。
「ほんとうはおねえちゃんうばったの、おまえらなんだろ。ほんとうのことちゃんといえ」
静かな圧を感じる言葉だ。
「本当に知らない。俺らはそんな力持っていない」
必死に言葉を絞り出す。考えていることはこの状況から抜け出すことのみだ。
「ほんとう、に?うそだったらただじゃおかないけど」
「嘘じゃない。本当に知らない」
「ちがかったらあのおんな、いっしょにころすよ」
あ…死神ちゃん。アイツ、どこにいったんだ。
無事か?それすらも分からない。
俺が目を逸らした隙に…いやまさか。だってアイツはもう死んでる身なんだぞ。
そんなことあるわけ…
「おい」
冷たい声が聞こえた。
「なんでこたえない?もしかしてやっぱりおまえらなの?ねぇ、んでこたえてくれない?ねぇねぇねぇねぇ」
それはどんどん狂った声に化して行く。
「ねぇ、なんでなの?おしえてよねえええええええ」
うっっ…聞いてると変な気分になる、この声。
ひやり、と、首筋に冷たい感触がした。
そっと振り返ると、そこにはあの髪束が鋭い刃物状にして
俺の首筋に触れていた。
このままだと何が起こるかは分かっている。
___唯子さんに、殺される。
何とか出来ないのか。なんとか。死神ちゃんがいなくても。
そう考えている間にも、髪束に力が加わっていく。
そして、
「じゃあね、さよなら」
唯子さんのこの声が聞こえた。
死ぬ。もう分かっていた。生きれる気がしなかったからだ。
でも…死ぬ時って、こんなにあっけないのか?
一瞬なんだろうけど…長い後悔になるはず。
だけどそんな不安もすぐ消えた。
俺は死ぬはずだったんだ。元々。
それが早くなったってだけだ。
俺が覚悟したその時…
「あんたねぇ、馬鹿なんじゃないの!?」
誰かにグイッと胸ぐらを掴まれ、天井に引っ張られた。この声は…
「し、死神ちゃん!」
「そうだよっ。生きてる?」
「ああ…死神ちゃんは?」
「私は精神が生きてる。大丈夫だよ。てか、今はこんな場合じゃない。
少しコイツは厄介な幽霊だ。よくここまで持てたね。死んでるとおもった。」
「そ、それはある意味酷くないか!?」
「アッハハハ、元気そうでよかった。」
いつもの会話、いつもの声。こんなに安心するものなのか。
死神ちゃんはすぐに戦闘モードに入り、再び大鎌を構えた。
「さっきまで、酷くやってくれたね。礼を言うよ唯子さん。」
「…いきてたんだ」
「まぁ、最初っから死んでんだよねぇ、こちとら。
…ねぇ、お姉ちゃんの花子さんの事なんだけどさ。あの子、成仏されたみたい。
あっちにいったんだって。あんたは行かないんだ。そうやって過去の犯人探しばっかりして。本当にお姉ちゃんの事好きなら、あっちに行きゃあいいのに。」
「ちょっと、死神ちゃん、それは…」
「いいのいいの。これは戦略よ。彼女はこれで怒りをあらわにする。」
「なんで…なんでおまえがしったかぶりをするんだよ」
「感情的になった唯子さんは攻撃の精度が格段と下がる…って訳よ」
「へぇ…」
よく考えるんだな。
「ゆるすかあああああああ」
「もうう、うるっさいわねぇ。近所迷惑よ。」
「しねっ!おまえなんかっ」
さっきより大量の髪束を作り、当てようとする。
死神ちゃんは踊るかの様にそれを避け、全て大鎌で切り捨てる。
「ねー、無理してない?」
「っ。んなわけないでしょ」
「そっか。」
死神ちゃんは大鎌を振り上げた。
それを、唯子さんの髪束が押しのける。
「あっ」
死神ちゃんが大鎌を落とした。その隙に、一気にたたみかける。
「むくいうけろおおおお」
___だが。
死神ちゃんはそれを素手で止めた。
「!?」「なっ…」
俺と唯子さんは同時に目をも開いた。
「そんな…すででとめたらかんつうするはずなのに」
「ばかだねー。髪を太く伸ばしすぎてその力の精度が落ちてるんだよ。
じゃあ、トドメだね」
大鎌を振り上げ、唯子さんに刺そうとする。
「っっっっ…!!」
「死神ちゃん!」俺と唯子さんは息をのんだ。
キラン、と、鎌が光る。
唯子さんに鎌が振り下ろされようとしたその時。
「_____なーんちゃって」
死神ちゃんは鎌を下ろした。
元の白いワンピース姿に戻り、唯子さんの前に腰を下す。
「無理しちゃダメだよ唯子さん。お姉ちゃんの為だからって。そんなんじゃ、お姉ちゃんに、逆に迷惑かかるよ。」
一つ一つ言葉を選びながら話す。
「お、ねえちゃん…」
「唯子さんが無駄に力使って傷つくのが、花子さんは1番悲しいと思う。」
そう言って唯子さんを抱きしめた。
「うわあああ…あああんっっわあああああん」
唯子さんは大声で泣き始めた。
「辛かったよね、お姉ちゃん死んじゃって。大丈夫、一緒にいこう。」
言葉が、詰まった。
いつもふざけてるって思ってた死神ちゃんの、真剣な言葉を聞いて。
「さ、いこっか。」
「うん」
唯子さんは泣き止み、死神ちゃんと手を繋いでいる。
「琉斗くん。今日は先に帰ってて。私は唯子さんを黄泉の国に送ってくるから。」
「分かった。…すごいな、死神ちゃん。説得力とか…」
「私の力じゃないよ。これで心を開いてくれる幽霊達のおかげ。
ほらー、早く帰りな?お母さんに怒られるよ」
「お前に言われたかないわっ!」
「いーじゃん心配してんだし」
「死神ちゃんに心配されっと調子狂うんだよ…」
「まーまー。じゃあ、行ってくるわ。明日学校で!」
「おう」
死神ちゃんと俺は、背中を向けて歩き出した。
(えっと、これで一つ終わったから次は二つ目か。
次は今回みたいになりたくないな…。)
そうやってのんきな事を考えている間に。
“あの人”は終わりに近付いていた…
やーっと終わったー!死神ちゃん、真剣面もあればふざけ面もあって、使いやすい!
次はお話…じゃなくて。イラスト集を出しまーす!
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