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その指輪は青かった。
※キャラ解釈・関係性に独自の要素があります
※ご都合解釈・過去捏造を含みます
一万年後の世界で先代の青の指輪の戦士について考える熊手の独白。
「その人は立派だったんだね。お仲間?」
記憶喪失となった、|ブライダン幹部《ブーケ》から言われた時に、俺はアイツのことを仲間だと答えられなかった。
今考えると、俺とアイツの関係性ってなんだったのだろうか。
利害の一致というには、あまりも長く一緒に居て
敵というには、距離が近くて
友達というには、距離が遠くて
仲間というには、あの終わり方はふさわしくなかった。
ふと、あの声が頭をよぎる。
「真白、お前は好き勝手に暴れすぎる。
もっと自分の行動に責任を持て。」
自分の持っていた赤い狼の指輪とは、真反対の色をした青い獅子の指輪を嵌めたアイツに言われた言葉。
冷静で論理的、でも熱があって、説教臭くて面倒くさい奴。
いつから一緒に行動するようになったのかは、正直よく覚えていない。
でも気づけば、隣にいるのが当たり前になってた。
アイツが後ろから正確に援護射撃を入れ、俺が一気に前へ突っ込んで仕留める。
コンビネーションは抜群だった。
……まあ、毎回スムーズってわけにはいかなかったが。
「無闇に突っ込みすぎだ、危険すぎる」
「別に、お前がカバーしてくれるし問題ないだろ。」
みたいな感じで、大体は俺の自由奔放なやり方に釘を刺すアイツに、俺が言い返す。そんな形で
しょっちゅうぶつかってた。だけど、不思議と嫌な感じはしなかった。
そんなアイツとの最後は、指輪争奪戦の終盤。
指輪を巡って戦い、俺が勝って、アイツが負けた。ーーただそれだけの事で、お互い指輪の持ち主である以上、あの結末は避けられなかった。
「もっと自分の行動に責任を持て」
口癖のように俺のことを咎めてきたあの声も、
最後は何も言わず、振り返ることもなく立ち去っていった。
あの別れが、間違っていたとは思わない。
争いの果てにそうなるのは、あまりにも自然で、理にかなっていた。
……でも。
それでも、俺は。
アイツとは、もっと――
違う終わり方があるはずだ、とどこかで思ってた。
そう願っていた。
俺は、アイツの中でどんな存在だったのだろう。
無責任で突発的な俺を、呆れながらも認めてくれていたのか。
それとも、最後には憎しみしか残っていなかったのか。
ちらり、と自分の指に嵌められたゴジュウポーラーの指輪に目を落とす。
色も形もアイツの指輪とは違う。
それなのに、不意にあの時の感覚が蘇る。
手に残ったゴジュウレオンの指輪の重さと、言いようのない虚しさ。
アイツの顔も、声も、仕草も、一万年以上経った今でも忘れることはない。
…それなのに、今日はやけに思い出が鮮明で、胸の奥が騒がしい。
「…こんな過去に浸るなんて、今日はらしくねぇな。」
誰に言うでもなくそう呟くと、拳を一度握り、立ち上がる。
世直しの時間だ。
…今のお金を請求するやり方になったのはアイツの|せい《おかげ》だ。
またアイツの声が頭の中に響く。
無責任な只働きはいつか自分の身を滅ぼす。
助けた人への責任を形にすべきだ。
例えばーー
「金と金は人を繋ぐ、だったか」
アイツが俺にどう思っていたのか、
どんな存在だったのか。
それはもう分からないし、確認しようがない。
でも一つ確かに言えることは、アイツは俺にとって大切な存在だったってことだ。