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塾行きのバス
塾に行く途中の男の子。
疲れていたその男の子の乗ったバスは…⁉
俺は聡瑠(さとる)。
中学2年生で、今は塾に通っている途中だ。
家から近いバス停からバスに乗ったとき、塾に着くのは20分後だからいつも暇だ。
バスに乗ってから俺は、今日の出来事を思い出していた…。
俺が休み時間に次の授業の準備をしていると、岳(がく)がやって来て、こう言った。
「ねえ、留依(るい)くんと皇正(こうせい)くんが僕のことぽっちゃりって言ってくるんだよ!酷くない⁉」
…岳の体形は確かに少しぽっちゃりとしている。
でも俺は悲しませたくないと思って、お世辞を言ってしまった。
「岳は全然ぽっちゃりじゃないよ。僕の方が多分体形は…ね?だから安心していいよ。」
「聡瑠くんはスタイルいいと思うのに⁉でも…こんなこと言ってくれるのは聡瑠くんだけだから嬉しいよ。ありがとう。」
ちょっとお世辞としてやりすぎちゃった気がした。
次の休み時間、俺がトイレから帰ってくるときにちょうど留依と皇正が来た。
「聡瑠、お前さっきの休み時間に岳から体形のこと聞かれなかったか?」
「聞かれたよ。どうした?」
「俺たちは聡瑠のこと味方だと信じてるからな。」
「どういうこと?」
「…お前結構優しいからお世辞とか言ってんじゃないかって思ってさ。」
「流石にそんなことはしないって。」
留依の言っていることは本当に図星だった。
「まあ、人は簡単に嘘つくけどな。とりあえず行くぞ、留依。」
そう言って2人はトイレへと行った。
もう…嫌だ。
多くの人と関わってお世辞も嘘も言って…僕は最低だ。
でも、それに気づかない3人もどうかしている気がする…
俺は人間関係のことで精神的に疲れているんだよ…
そう思っていると、脳内に3人の顔がどんどん思い浮かんでくる。
「もう嫌だ!」
バスの中でも叫んでしまったんだ。
迷惑かな…って…ん?
『目的地を変更します。目的地は、冥界、冥界…』
何を言っているんだろう、運転手さんは。
そう思って周りを見渡してみると…
「誰も、バスに人が…乗っていない⁉」
この時間なら会社から帰る人がいつも数人乗っているはずなのに、今日は誰もいない。
しかも、100mくらい先にはブラックホールを連想させる黒い渦が見える。
今は信号だから止まっているけれど、もう…バスが動いたら終わりなんだろう。
歩道を歩いている人たちには見えていないのか?というくらい、気にせず歩いている人たち。
本当に何も見えていないのだろう。
バスから出ないと…そう思っていたら、バスが動き出してしまった。
「はは、もう、ダメなんだね…」
乾いた笑いをうかべながら、涙を流した。
私はよく習い事に行くときにバスを使うので、それに関係したお話を作ってみました!