公開中
感情無し
読み切りシリーズ、第五弾
私は、人ではないらしい。
「ほら彼女よ、例の《《感情無し》》」
「まさか両親が死んでも泣かないなんてね」
大雨が降るなか開かれた両親の葬式。
多くの人が別れを告げに来てくれている。
「あの子、叔父に引き取られるらしいわよ」
「叔父ってあの?」
両親のために時間を作ってくれるのはありがたい。
けど、わざわざ聞こえる声量で話す必要はないんじゃ?
そんなことを考えながら、私は残された者として色々とするのだった。
葬式が終わり、私は荷物をまとめていた。
元々私物が多いわけではないので、数分もあれば荷造りが終わった。
「……もう良いのか」
リビングで忘れ物が無いかを確認していた私に、声が掛けられる。
振り返ると、一人の男性が壁に寄りかかっている。
彼は私の叔父であり、私と同じ《《感情無し》》らしい。
そもそも《《感情無し》》と言うのは、その名の通り感情が無い人のこと。
この世界は感情豊かなほど、様々な魔法を操ることが出来る。
嬉しければ光属性、怒っていれば炎属性。
どういう原理なのかはここ数百年不明だけど、実際に感情が無い私と叔父は魔法を使えない。
「馬車に荷物を乗せろ。長旅になるが……」
「別に大丈夫ですよ」
「……そうか」
さっさと馬車に乗って叔父を待つ。
今日から数日の間はお世話になる馬にニンジンをあげていると、叔父は出てきた。
私が14年過ごしてきた家は、明日には空き家になる。
そして、いつかは知らない誰かの帰る場所になることだろう。
「……あれ」
目から流れた《《それ》》は頬を濡らした。
拭っても拭っても、止まることはない。
「な、にこれ……」
「……。」
「何で止まらな、いの……」
叔父は、そっとハンカチを渡してくれた。
そういえば同い年ぐらいの子がこうしてた時、大人の人はみんなハンカチを渡してた。
分からない。
何で感情のない筈の私が、こんなことに。
「悲しいんだろ」
ボソッ、と叔父が呟いた。
悲しい? この胸の奥が苦しい状態が?
つまり私は今、やっと感情を……。
「……あはは」
「おい、何して……」
私は叔父に寄り掛かりながら、笑っていた。
「私は《《人》》だった。呪いの子なんかじゃなかったんだ」
感情無しだから、軽蔑の目で見られた。
感情無しだから、あることないこと沢山言われてきた。
感情無しだから、二人に迷惑を掛けてしまった。
「もっと早く感情を持てていたら……」
お母さんやお父さんに、会いたいよ。
一緒に笑いたかった。
魔法だって二人みたいに沢山使いたかった。
初めての感情が『悲しみ』で、こんなに後悔するなんて。
「……感情豊かなほど、様々な魔法を操ることが出来るって言うだろ」
「う、うん……」
「《《感情無し》》なんて存在しないんだよ。ただ、上手く自分のことを表現できないだけ」
両親は、この事を知っていたのだろうか。
だから私のことをずっと愛してくれていた。
そう考えると、また涙が溢れてくる。
「俺もそうだからよく分かる。普通の奴らみたいに笑えねぇし、泣けねぇ」
辛いよな、と叔父は私の頭を撫でてくれた。
とても安心する。
「本当は家についてから話すつもりだったんだが……俺たちは大掛かりな魔法を使えない代わりに繊細な魔法──回復とか身体能力上昇が使える」
「そうなの?」
「ついでに、お前を見下してた奴らより運動神経良かっただろ? あれは身体能力上昇の魔法を使ってるからなんだよ」
衝撃の事実がどんどん明かされてるけど、不思議と落ち着いていた。
とりあえず、一つだけ疑問がある。
「叔父さんはどうしてそんなに詳しいの?」
「あー……」
叔父は真実をあまり話したくないのか、誤魔化そうとしている。
まぁ、話したくないなら別に良いんだけど……。
「改めてこれからよろしくね、叔父さん」
「……あぁ」
---
--- 誰にも求められてない登場人物 ---
私──本作の主人公で、14歳の少女。数日前に両親を無くし、叔父に引き取られることになった。『感情無し』と呼ばれていたが、感情の表現が苦手なだけとのこと。
叔父──主人公の叔父で、年齢は50代とか?姪を引き取ることになったが、別に何とも思っていないように見られる。心の中では、とても主人公の両親の死を悲しんでいる。
なんか、思い付いたので書きました。
衝動書きですね。
一時間クオリティなので雑ですが、どうだったでしょうか。
ファンレターなどで感想を言ってくれると幸いです。
時間あるときにちゃんと書き直したいな……。