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白と黒のグリンプス 番外編
(おや?)
いつもの如く、探偵社でだらだらと過ごしていた太宰は、とある一点に気を向けた。
細かくいうと、携帯電話を確認し、微かに口角を上げた後輩に、である。
(あの様子では、芥川くんか)
他人の恋路にとやかくいう趣味は持っていないが、知ってしまったものは気になるものである。
其れに、あの二人が今回の『鏡の怪談』で少々進展したのは察していたことだった。
『鏡の怪談』の件が解決してから、既に十数日が経った。
噂も収束に向かい、被害者たちも少しずつ落ち着いてきたとの報告もある。
全ては偶々鉢合わせた探偵社社員とポート・マフィアの構成員が、首尾よく鏡を破ることに成功したおかげだ。
けれど。
(今回の事件は敦くんには酷なものだったかもしれないな)
悪いことをした、と心の中で独りごちる。
可能性としては見ていたが、よもやそんな事はあるまい、と考えてしまったのだ。
(真逆、“似た異能”ではなく、“同じ人物”とはね)
敦くんに回ったあの依頼は、元々私が気になって目を通していたものだった。
囁かれる噂や、状況。
まるで、“彼の人”の異能だと思いはした。
けれど、彼の人……有島武郎は、既に故人の筈だった。
私も書類でしか知らない存在であったため、異能の詳細を知らなかったのも良くなかった点だろう。
其の点においては、少しばかりは反省している。
まあ、其のお陰で芥川くんが自覚し、敦くんの低い自己肯定感を少しでも高められたのならば。
『終わり良ければ全て良し』と云えるだろう。
(……少しばかり、気になる事はあるのだけれど)
其れは又、追々する事にしよう。
思考に然う結論付け、私は大きく伸びをした。
よっ、と|長椅子《ソファ》から起き上がると、自らの|机《デスク》へと向かう。
軽い音を立てる椅子を引いて座ると、溜まりに溜まった今日の書類に手を伸ばした。
向かいの国木田くんの方から恐れ慄く声が聞こえた気がする。
全く、槍が降るなど起こる訳無かろうに。
失礼な事である。
私だって真面目に仕事をする日くらいあるものだ。
(例えば、数ヶ月振りに恋人に会える日、とかね)
全く、あの|仕事中毒《ワーカホリック》蛞蝓。
いつまで仕事をすれば気が済むのだか。
と心の中で毒づく。
数ヶ月も恋人を放置するなんて莫迦じゃないのか。
けれど、会える事が楽しみなのは否定しようのない事実なもので。
私は溜息をつくと、|薄型端末《ラップトップ》を立ち上げた。
空の色は鉛丹色だ。
私にとって美しいと分類される色。
安息と陰謀渦巻く夜へと繋ぐ色。
・
眠り姫です!
太宰さんの時は一瞬でかけるというのに……
私のメインは太中だから仕方ないな。うん。
だって書きやすいんだよ! 太宰さんの心情って。
私敦くんみたいに心が真っ直ぐじゃないからさあ……
なんか小難しい事ばっか考えて、企みを巡らしつつも、中也さんに好き(好きには収まらないと書きましたが)をぶつけまくる太宰さんはすんごく書きやすいのよ。
もちろん腐ってなくても太宰さんとか中也さんは結構書きやすい。
……私にとってはね?
まあ腐ってなくてもブロマンスにはしちゃうんですけども。
では、白と黒のグリンプスを、最後まで見届けてくれたあなたに!
心からの感謝と祝福を!
そして迷ヰ犬怪異談を、これからもどうか宜しくお願いします!