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月夜と少女
私はいつも、洗濯機の中で眠る。
「ねぇ、結衣ちゃん。8月に近くの大きい公園でお祭りがあるんだけど、一緒に行かない?」
学校の終業式の帰り道。一緒に帰っていた咲月に誘われた。
「受験勉強大丈夫なの?良いトコ行くんでしょ?」
結衣たちは中学3年生で、高校受験を間近に迎えているのだ。
「まあまあ、たまには息抜きも必要でしょ?いいじゃん。1回ぐらいさ。…ダメ、?」
頭が良く、自分が美少女の自覚がある咲月は、どうすれば自分を可愛く見せることが出来るか、を熟知している。
「…行きたいのはやまやまなんだけどさ、私あんまり夜が得意じゃないっていうか…」
私の含みがある言い方から咲月は何やら察してくれたらしい。
「そっか。じゃあ、他の子誘ってみるよ」
申し訳ない、という気持ちも多いが仕方がない。
だって、私の病気を理解してくれる人なんて居ないんだから。
「結依、夏祭りの誘い夜が苦手って断ったってホント?」
夏休みに入って1週間ほど経った頃。母親の亜弥が聞いてきた。
「ホントだけど。誰から聞いたの?」
「誰って、村岡さんだけど。アンタ優香ちゃんに、断ったんじゃないの?」
咲月に断っていたとき、誰かに聞かれていたのか、咲月が他の子に言ったのか知らないが、広まっているというのは事実だ。
「なんで断ったのよ!さ。只でさえ友達少ないって言うのに。仲良くしてくれる子ぐらい大声にしなさい」
「…行きたくても行けないんだってば」
「月の光浴びると痛いってやつ?アンタ、ナイーブなのよ。全部気にしすぎ」
「…違うよ。この世界には不思議なアレルギー位あるんだよ、」
「あったとしても、アンタは勘違いよ。人と違うものが欲しいんでしょ?厨二病みたいな」
「…もうそれでいいよ」
「あ、そう。だったら、村岡さんに連絡しとくわね。結依も行きますって。あと、みんな浴衣で行くみたい。アンタのも出しとくから」
行くだけなら服装でまだ我慢出来たかも知れないのに。浴衣だなんて。
数日は人に見せれない醜い身体になってしまう。
月光アレルギー。その名を聞いたことがあるだろうか。
月光…正確に言うと、月に反射した太陽の光。
月面に反射することで、新たな物質が加わり、身体に合わない人が出ているのではないか、そう言われているが詳しくはわからない。
そんな未知のアレルギーを患う1人が私、足立結依だ。
結依の両親は所謂自然派、というもので、電球のブルーライトですら、身体に悪いと外の光と四六時中カーテンが開き、足りなければ蝋燭を灯すような過激派な親に、月光アレルギーなど通じない。
自分の身体は自分で守る。小学生の頃、自分でそう決めた。
その頃から、パジャマは春夏秋冬問わず、全身黒スウェット。フードにマスク。靴下と完全防備。
最初の頃はそれで十分良かったが、地球温暖化に連れて、その格好では寝苦しくなってきたため、家の中で、涼しい格好で過ごせる場所を探すようになった。
そこが洗面所。しばらくは洗濯機にもたれ掛かり眠っていたが、風呂の窓からの光が少し入っていたことに気づき、そこからは、洗濯機の中で眠っている。
亜弥に着付けられた浴衣。折角の浴衣だし、とまとめられた髪。全てが嫌になる。
ピンポーン
「結依ちゃん居ますかー?」
咲月たちが迎えに来る。
「行こうか」
玄関を出て、言う。
肌を刺すような刺激を感じる。
「…結依ちゃん、大丈夫?」
あの時何かを察したであろう咲月が、心配そうに聞いてくる。
「…うん。大丈夫だから」
そう言っていないと自分が保てないような気がした。
痛い、痛い、痛い。
あとこの感覚が、数時間。
真夏の地獄の始まりだ。
毎日投稿の小説、暗い話が多いですね。
なんでだろう。
単語がそんな感じなのかな。きっとそうだ。
人に気づかれない、理解してもらえない自分のこと。
について書いてみました。
どうだったでしょうか。
コメント、アドバイスくれると嬉しいです!