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キミからのメッセージ
『こんらい~!セルフ受肉ぶいちゅーばー!音葉ライネだよ~!』
秘密のボールペン、希望の筆など、様々な雑貨が並ぶ部屋で、一人、パソコンの前に佇む少女。
少女の眼差しは、まるで画面の向こうにある真実を観ようとしているかのようだった。
『え~っと、今回は…|紀朔 昨《きののり さく》ちゃんと、コラボで~す!』
その言葉を言った彼女が、少し不穏な表情をしたのを、少女は見逃さなかった。
「…決めた。キミにしよう。」
そう呟いた少女は、薄く微笑んでから、気の毒そうな表情を浮かべ、
「キミが悪いんだよ。」
と囁いた。
「さぁ、出番だ。」
少女は、星空の光る街を、コートを翻し、歩いていくのだった。
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「ふ~ッ!配信終わり~」
私、|琴葉 寧《ことは ねい》は、ゲーミングチェアに身を任せて、いつもの余韻をかみしめていた。
(毎回配信疲れるんだよね~)
ため息をついた後、私はコンビニに向かう準備をした。
いつも通りの生活。
カップラーメンを買いに行くのだ。
(新作の、ちょっと高級な『かっぷぬ~どる』なんだよね♪)
500円もするカップラーメン。
週末のご褒美として、買ってみようと思ったのだ。
(売り切れ続出とかいうし、早めに買いに行かないとなぁ…)
とはいえ、自炊はできないタイプなので、カップラーメンがほとんど食卓に並んでいるわけだ。
清爽派ブイチューバーがなにをやっているのかと思うかもしれないが、これが現実なのだ。
(そろそろ飽きた気もするけど、食べてみたいんだよね…)
一度食べたら病みつきになるほどの美味しさ。
一度は口にしてみたいものだ。
ピロン♪
ふと、着信音がした。
スマホを見てみると…
「…え?」
そこには、
--- ≪一度食べたら病みつき!かっぷぬ~どるを、プレゼント!≫ ---
と、如何にも怪しいポップアップが出てきた。
「そんなわけない…だって、500円もするんだよ?」
最近、詐欺が流行っているのは私も知っている。
こんなことには巻き込まれたくないので、私はスルーするつもりだった。
でも…
「スクロール、できない…」
何度やっても動かないので、諦めてタップすることにした。
タップした先には、大きな文字で、
『びんぼーなあなたに!新作のかっぷぬ~どる500個をプレゼント!』
と書かれていた。
どのぐらいの規模でやっているのか。
10人にプレゼントしても、500000円はかかる。
それはほかの正式な懸賞も同じなのだが。
「…けど、これを作った会社がやってるなら納得できるかも?」
無理やり自分を納得させて、とりあえず、下に書かれていた文章を読んでみることにした。
「『この懸賞は、かっぷぬ~どるが変えないあなたでも、一度食べたら病みつきなかっぷぬ~どるが食べられるよ♪』」
…ふざけているのか。
やっぱり、そんなはずがない。
普通に考えてもあり得ないというのに、なんで私はやる気になってたのだろう。
「危ない危ない。」
私は画面をタップした。
こういう面倒ごとに頭を突っ込まないのが私の性分だ。
戻るボタンを押そうとしたとき…
「…はっ?!」
そこには、『ご応募ありがとうございます』という文字があった。
…そう、私はすでに応募してしまっていたのだ。
---
「はぁ…、結局懸賞なんて当たんないわよ。」
あの後、すぐにあの画面は閉じてしまって、私は今コンビニに向かっている。
「結局何だったんだろう、アレ」
(もし当たっていたら何万円との利益があったんだけど)
そう思いつつ、コンビニはいると、いつも通りの音楽が流れた。
「あれ?」
ふと、私は、コンビニの中に、店員や客が1人もいないことに気づいた。
最初は如何にも不思議だったが、しまいには、
「たまたま客がいなくて、店員も商品を取りに行ってるとか、?」
という結論になった。
大体、誰もいないなんて、珍しいことでもないはずだ。
そう思い、私は仕方なく待っていた。
その時。
ピロン
着信音が鳴った。
見てみると___
「え…」
ありきたりのない、ただのニュース速報。
だがそこには、
--- 「今話題のブイチューバー、『紀朔 昨』が消息不明?その原因とは」 ---
と書かれていた。
驚いて、その記事を読んでいると___
「『ブイチューバーの紀朔 昨が、今日、Xに不可解な投稿をしたきり、アカウントは凍結され、見ることができなくなり、消息不明になった。チャンネル登録者数100万人を超えたばかりの彼女に起きた、不可解な事件とは何なのか?そして、最後のライブ配信となった音葉ライネとコラボ配信には、その紀朔 昨のアバターだけ画質が悪くなっていたのも関係があるのか、ネットでは考察が飛び交っているようだ。』…。」
なにこれ、、、
さっき配信してた相手が消息不明なんて…
でも…
__よかった…__
そう思い、私は無人のコンビニを後にした。
コンビニから出て数分後、私は知らない路地に入っていた。
「あれ…?」
暗い。
時間の関係もあるんだろうけど、この時間にしては、真夜中の空色だった。
「あ…」
暗闇の中にぽつり、小さな街灯があった。
「なんだ、あるじゃん。」
その方向に進みながら、スマホで、マップを開いた。
「えっ…?」
現在地が、** `海 `を指していた。**
私は、なんだか無性に怖くなってきた。
そして、走って走って、ようやく、一つの街灯に近づいた時。
「きゃっ!」
「おわぁっ!」
誰かとぶつかってしまった。
「だっ誰…?」
普通は、少し謝るだろうが、今はそんな余裕はなかった。
「ご、ごめんなさい…私は…」
少女が言葉に詰まっていると、
「あ!」
私は、少女の腕に抱えられたものを見つけた。
「それ…新作のかっぷぬ~どる!」
「そ、そうなんです…」
どう説明をすればいいのかと悩んでいそうだったので、
「それ、懸賞のだよね。」
と、小声で訊いた。
「…はい。」
と、少女は答えた。
その時、不意に風が吹いて、腕に抱えられていたものが一気に落ちた。
「!」
「わっ、大丈夫?拾うの手伝うよ。」
と言って、拾った時、私はある考えが思いついた。
(これ、たくさん持ってるんだから、一つぐらい…いいんじゃない?)
「はい。これで、全部だよ。」
そういい、かっぷぬ~どるを少女に渡した。
「ありがとう…じゃあね。」
と言って、少女はすぐにどこかへ行ってしまった。
「…」
私は、上着の下に隠しておいたかっぷぬ~どるの感触を確かめながら、薄く微笑んだ。
「これで…」
(だって、無料で当たったんなら、別に一個ぐらいいいじゃん?)
自分を納得させ、家に帰る路地を歩いていた時。
「…?!」
足元に、不思議なハガキがあった。
「懸賞当選、おめでとうございます…?」
なぜ、こんなところに懸賞当選のハガキがあるのだろうか。
今の時代なら普通、電話かメールで届くと思うのだが。
そう思って、私はハガキを拾った。
その時、
「あっ!もしかして、さっきの子の…⁉」
と、考えが浮かんだ。
届けるべきだろうか。
私は悩んだが、後ろを振り返ってからやめた。
振り向いた道が、信じられないほど暗かったから。
街灯がぽつぽつあるはずなのに、全てなくなっていた。
私は、ゾッとする恐怖で前の道を見てみたが、そこにも。
「あ…あ…。」
街灯がない、ただ暗い道が続いているだけだった。
そこに。
ピロンッ♪
着信音がした。
縋るような思いで画面を見つめると、
「『今話題のブイチューバー、音葉ライネが、行方不明?』」
という見出しがロック画面に表示されていた。
「え…」
私は怖くなって、その画面をタップした瞬間。
画面いっぱいに、
`お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだ`
という文字が表示された。
「いや…嫌ッ!」
私は、今までの行動が走馬灯のように流れてきた。
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「こんらい~!セルフ受肉ぶいちゅーばーの、音葉ライネで~す!」
紀朔昨という子とコラボ配信をしたとき。
私は、薄く微笑みながら、紀朔のアバターの画質を下げたのだ。
理由は簡単だ。
羨ましかったからだ。
ある一種の妬み、嫉妬といってもいい。
その前にも、紀朔のマイクを切ったり、紀朔に、悪戯を仕掛けたりしたことがあった。
そのことでかは分からないが、紀朔は一回、病んでしまった事もある。
だが私は、それを陰で嘲笑っているだけ。
そこまでするのには、もう一つ理由がある。
紀朔が、私の彼氏を奪ったからだ。
無論、意図的に。
そのことにもっとイラついて、匿名で誹謗中傷をしたこともある。
それが、その時の私にはすごく楽しかったことを覚えている____
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嗚呼、きっと、天罰が下ったんだろうな…
と思いながら、バタリ、と横に倒れた。
サッ
その時、誰かに手をつかまれた。
「誰ッ…」
と、私が聞くと、
`「フフフ… 」`
と、笑うだけ。
思わず、私は立ってから、その子の顔をのぞいてみると____。
**「いやぁぁぁぁあああああ!!!!」**
その子には、**顔が無かった**のだ。
ピタ…と、気味の悪い感触が私の頬に当たった。
`「ご当選、おめでとうございまぁす…」`
と、気味の悪い声で話しかけてきた。
「なっ何ッ⁉た、助けてッ!!!」
`「恐れることはありません。ぜひ、かっぷぬ~どるへご招待しましょう。」`
「か、かっぷぬ~どるって…」
`「そうでぇす…かっぷぬ~どるへ、」`
--- ** `「よ う こ そ 」 `** ---
「はッ…?」
その瞬間、
「え……」
彼女の顔が、メキ…ニョキ…クチャ…と、生成されていく。
その出来上がった顔が、
「紀朔…昨…?」
紀朔 昨のアバターの顔だったのだ。
だが、目が充血していて、口からは唾液を吐いていて、にんまりと笑っている姿は、もうあの女の子じゃない気がした。
`「ネ…ネ…」`
「は…?」
`「ネ…シ…ネ…シネ…」`
ハッとなって周りを見渡すと、どうやら周りは丸形で囲まれた紙のコップみたいなものだった。
「い、嫌…ぁ…」
必死になって声を絞り出すが、うまく声が出せない。
その時。
ジュゥゥゥゥウ…
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「あ”…熱”い”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”ぃ”””! 」
熱い雨が、空から降ってきた。
全身が焦げるように熱い。
痛みに耐えられなくなったその時。
`**「いただきまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすぅ」**`
と、声がした瞬間、数本の鋭い刃が私を突き刺した。
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そのあとに残ったのは、吐きそうなぐらい気味の悪い死体と、静かにほほ笑む少女だった____。
今回は少しグロイかも?
少女はいったい誰なんでしょうか___