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殺させてくれてありがとう
殺人鬼と被害者の「ありがとう」。
少しおかしな話でも、世の中にこういう話ってあるのかなと考えたりします。
そんな物語です。
16時30分、いつもあの子が通る時間だ。俺は、人を殺して特になんの感情も出ない。そんな最低な俺でも、いつかは感情を持ちたい。だから何度か人を殺している。
今回のターゲットは、親に虐待されている子だ。死んでも周りに被害が出ない子を選んだ。哀れむ感情は出てくるかな?
車を用意し、誘拐できるよう準備を進めていたらターゲットが来た。
「ごめん、車がパンクしちゃったみたいで…手伝ってもらえるかな?」
「どこですか?」
そう言って近づいて来た彼女の体を支え、車の中にぶん投げた。
「きゃっ!」
「大人しくしろ、目的地まで距離がある。持っている荷物全部よこせ。」
ナイフを突き刺しそう言うと、大人しく荷物を差し出してきた。
ー数時間後ー
誰も使っていない廃墟に連れてきた。が、やけに静かだ。前の奴らは泣きじゃくっていたのに。
「今からお前を殺す。そこに座れ。」
なんの抵抗もなく座る少女。胸の前にナイフを出し、力強くナイフを振った。
「ガハッ」
血反吐を吐く少女に対して、特にこれといった感情は湧き上がってこなかった。また…だめだった。
「こ…し…あ…」
何かを訴える少女に耳を傾け、もう一度何を言ってるか聞こうとした。
『殺してくれてくれてありがとう』
ありがとう?あぁ、感謝されてるのか。俺は一つの感情が今芽生えた…嬉しさだ。
「感謝するのはこっちだよ、ありがとう。」
殺させてくれてありがとう…
どんな形の「ありがとう」でも、思いって込められますよね。
皆さんも小さなことでいいので言ってみませんか?「ありがとう」を。