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1話 ボールを追いかけ、君のところへ①
まえがき
こんにちは!cocо☆bayです😊
またまた新作、学園モノ。「横浜学園恋物語✴️」
いろんな話を入れようと思っています!
では………本編どうぞ!
体育館に響くのは、ボールが床を弾く音と、靴底が擦れる乾いた響きだけだった。
冬の午後、吐く息が白い。窓の外には淡く雪が舞っている。
戸柱恭孝は、リングに向かってボールを放った。
滑らかなフォーム、無駄のない動き。ネットを揺らす音が小さく響く。
その姿を、少し離れた場所から中川颯はじっと見つめていた。
「……やっぱ、すげぇな、キャプテン。」
つぶやきは誰にも届かない。
颯と恭孝の身長は変わらない――― 颯の方が少し高いが、実力で言えば恭孝の方が上だ。
練習のたびに感じる――届かない距離。
それは技術でも、体格でもなく、心の位置のことだった。
「颯、止まってないで走れ。お前のディフェンス、悪くないんだから。」
不意に声をかけられ、颯は顔を上げた。
汗に濡れた恭孝の前髪が、少しだけ目にかかっている。
その黒い瞳に見つめられるたび、心臓が痛いほど鳴る。
「……はいっ!」
声が裏返ったのを恭孝は気にせず、淡々と次の練習メニューを告げた。
彼の中ではいつも「キャプテン」としての顔しかない――颯はそれを分かっていた。
けれど、それでもいい。近くにいられるなら、それで。
そう思っていた、その日までは。
「今日からバスケ部に入ることになりました、佐々木千隼です。2年生です!!よろしくお願いします!」
軽やかな声が体育館に響く。
初対面のはずなのに、どこか人懐っこい笑顔。
周囲の空気を一瞬で明るくしてしまうような存在感。
「おー!転校生、でかっ!恭孝先輩よりも高いんじゃないっすか?」
「いや、そんな変わらねぇだろ。キャプテン馬鹿にすんなよ〜」
颯が少し悩んでから言うと、千隼はにこっと笑って手を差し出した。
「よろしく、颯くん。君、動き速いって聞いたよ。」
「え、あ、ありがと……。」
その一瞬、千隼の視線が恭孝の方へ向かう。
まるで彼の存在を確かめるように、静かに、真っ直ぐに。
颯はその視線の意味を、なぜかすぐに理解してしまった。
――ああ、この人も、きっと。
次第に三人の距離は近づき、そして少しずつ、ずれていく。
リバウンドの時に触れる腕の強さ、ぶつかる体の熱。
体格の差が、まるで心の壁のように立ちはだかる。
それでも誰も、目を逸らすことができなかった。
「戸柱先輩、俺……戸柱先輩みたいな人、初めてです。」
千隼の言葉が、夕暮れの体育館に溶けていく。
恭孝は何も答えない。ただ、視線を少し逸らす。
その表情を、颯はドアの隙間から見ていた。
頬に冷たい風が触れた。
息を呑む音が、やけに大きく響く。
胸の奥で、何かが確かに軋んだ。
――このままじゃ、壊れる。
それでも目を逸らせないのは、きっと恋という名の痛みのせいだった。
あとがき
最近書くことが無さすぎて………
まえがき&あとがき、不定期にしようかと思っています…!