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第三話
夜瑠「すみません!管理人です。」
夜瑠が声をかけると、扉がひとりでに開いた。
中は真っ暗で、部屋の中からねちょねちょした声が聞こえてきた。
怪異「ヨルか。」
夜瑠「管理人です。」
怪異に名前をひけらかすものではない。
名前だけで、契約までいってしまうかもだからだ。
夜瑠「新しい入居者にちょっかいをかけるのはやめてください。」
怪異「おまえさぁ~。もうちょっと俺らとなじめないの?」
夜瑠「無理です。」
怪異「テツジができてたんだからおまえもできるだろ?あっ。ヨルとテツジの力は真逆だから無理かー。ま、じゃあな。」
243号室の扉がひとりでに閉まる。
怪異の中でも243号室の住人は特殊だ。
馴れ馴れしく、人の怒りを誘うような挑発ばかりしてくる。
243号室の住人が嫌いな理由は他にもある。
あいつのせいで、死んだんだ。
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見宇「あ、あの、管理人さん……?お、お客さんみたい……ですよ……?」
夜瑠「えっ……?」
見ると、四陰荘の前に確かに人がいる。
前髪を三つ編みにしていて、季節外れ(今は春)のセーターを着ている。
呑気にあくびをしているその少女に夜瑠は声をかける。
夜瑠「どうされました?」
少女は答えない。
すごくぼーっとしている。
そして、すぐにハッとなった。
少女「あ!こんにちは~。えぇっと、テツジさん……だっけな?がこのあたりに住んでませんかぁ?」
夜瑠「……お伝えしますが、その方はもう他界してます。」
少女「えっ?いつですか!?」
夜瑠「一ヶ月ほど前ですね。」
少女「マジかー!テツジさん頼りだったのにー!あっ!私、舞波浪 砂露って言います!」
夜瑠「砂露さんですか。と、言いますと、あの有名な?」
砂露「あっ!はい。まぁ、一様……。」
最近は見かけてないが……。
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砂露「えぇっと、私、空気ってものが見えるんですけど……。見えると全部、最適に対応しようと思うんです。でも、中々それができなくて、鬱状態になっちゃってね。で、家出してきちゃって……昔自殺を止めてくれたテツジさんって人に泊めてもらおうかなって考えたらまさか、死んでたなんて。」
夜瑠「はぁ。つまり、絶賛家出中と。」
砂露「はい!あっ、ここアパートですよね?」
夜瑠「はい。」
砂露「家賃って何円くらい……ですかね……?」
夜瑠「無料ですね。」
砂露「マジで!?じゃあ、ここ住んでも良いですか!」
夜瑠「どうぞ。」
夜瑠が契約書を出そうとしたその時。
ドオン!!
地面が大きく揺れた。
いや、違う。
上下が反転したな。
これは……予想外だ……。
自分だけなら、あれをやってもいいけど、他の人の前だと巻き込みかねない。
どちらにしろあれは最終手段だ。
でも、力を使わずにできるかな……?
まぁ、やるしかないんだけどね……。
しゃあない。
手を借りよう。
夜瑠「金原さん。」
怪異好き……。
誰か参加して……。