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呪遊,始動.
ここで一つ説明を入れておく.カードゲームの「人狼ゲーム」とは,一人ひとりの役職があらかじめ決まっており,参加者はそれを全うする.例えば,自分の役職が人狼だとすれば毎晩誰か一人を食べていく.市民側はそれを阻止するために毎昼の会議時間に人狼を追い出さなければいけない.
もしこの彼女が作り出した|呪遊《ゲーム》がこの人狼ゲーム通りならば,確実にここにいる2人以上は死を迎えなければならない.
???「役職は,貴方の中にいるわ」
中…ポケットか?
自分のポケットを漁るが,カードらしきものは見当たらない.ベタベタと自分のポケット中を漁る俺を見て,隣の少年は呆れた口調と目つきで言った.
零「心の中って意味じゃねぇの」
先程までバカみたいにカードを探し回った自分が恥ずかしい.
翔「あ」
少年の目がちらりとフードの中から見えた.日本では珍しい,瞳が空色の中に青や緑がマーブル色に輝いている.吸い込まれそうな瞳をしばらく見つけめていたかったが,少年は素早くパーカーを目を隠すようにして覆った.
零「見んじゃねぇ」
そう告げた彼の目は、睨んでいるように見えて、怯えていた。
* * *
役職は自分の心の中にいる....どうやって探せばいいか目処がつかない.いきなり俺の中で「俺は人狼だ」なんてピンと来るわけでもない.他のみんなはもう自分の役職を理解しているのだろうか.気になった俺は,紫苑に声をかけてみる.
翔「紫苑は,自分の役職の意味はわかった?」
紫苑「ん~,わかんない.きっとここで過ごしていくうちにわかっていくんじゃないかな.」
確かにいつまでここにいるかはわからないが,紫苑の意見には納得だ.
蘭「健太?大丈夫?」
不意に振り向いた先には,うつむきながら自分の拳を握りしめる1人の男子高生と,同級生らしき女の子がいた.
女子高生の方が,彼を心配し,顔を覗こうとすると,
健太「クソがッッ‼︎」
突然怒りの声を上げた.それも大声なので,全員の視線が一箇所に集まる.
彼は,枯れそうな声で,そのまま続けた.
健太「こんなとこに連れて来られて,挙句の果てにはみんなで楽しくゲームしろ?ぶさけんな‼︎」
そばにいた女子高生も,ついその場を離れる.彼の目は血走り,拳はいっそう強く握られた.
彼の意見に納得する者も次々と現れた.正直言えば,俺もなんだけど.
健太「おい!聞いてんのかよ!クソガキが」
怒鳴り散らかす彼の前に,彼女は現れなかった.
菜々「やめなよ」
雷太「そうだぞ」
遂には無理矢理彼を取り押さえるハメになるところまで来ていた.こんなことをしても,彼女はまだ現れない.
健太「早く出せよ‼︎」
⁇?「`あら.ご不満?`」
前言撤回.俺らの脳に直接語りかけて来た.
健太「聞いてただろ.俺はくだんねぇゲームするためにこんな所に連れて来られたんじゃねえ」
⁇?「`ふふっ`」
言い終わるか終わらないうちに彼女の甲高い笑い声が彼の話を遮った.俺達は何故か身体が動かず,ただ呆然と2人の会話を見ることしかできない.
健太「何がおかしい」
少し息詰まりながも抵抗し続ける彼.
⁇?「`だって,`」
⁇?「`「死にたい」と叫んだのは貴方でしょう?`」
彼だけじゃない.正論をぶつけられた俺は,いや,ここにいるやつら全員は何も言い返せなくなっていた.
健太「だからッ,」
--- `ブシャッ` ---
翔「え」
彼の腹部から血が大量に破裂した.真っ白なカーペットの上に,彼の血がみるみる滲んでいく.どさっと重苦しい音を立てて彼は倒れ込む.その後も血は止まることを知らずにカーペットを紅色に染めてゆく.
場は,一瞬水を打ったように静かになり,
蘭「け、健太」
悲鳴が部屋を揺らした.
⁇?「`早めに楽にならせてあげただけだよ?さ,`」
來太「何すんだよ‼︎」
彼女の話を遮るとは勇気があるな,と心の中で思う.よくこの光景を見た後にそんなことができるもんだ.
來太「いくらなんでも殺す必要なんか...」
⁇?「`君も,死にたい?`」
さっきとは低めの彼女の声が追い討ちをかけるように全員の神経を乱れさせる.
叫んだ彼は,首を大きく横にふり,悲惨な死体を見て腰を抜かした.
茉莉「ねぇ,もうそろそろ椅子に座ってもいいんじゃない?」
彼女が消え,場が少し落ち着いたあと,向かい側で茉莉が言った.皆,目の前の長テーブルに目を移した.長テーブルの周りを囲うようにここにいる人数分の椅肘掛け子が綺麗に並べてある.しかもよく見ると指定席だ.一人ひとりの名前プレートが椅子の前に置いてある.
そのうちの一人が自分の名前の椅子に静かに座った.
「上田來太」
さっきの抵抗した男の子の名前がプレートにそう書いてある.こうして他人の名前を知れるのか.と心の中で呟く.
俺の肘掛け椅子を見つけ,座る.座りはじめた俺達を見て,周りの席もだんだん埋まっていく.紫苑は俺と2,3個離れた先の椅子に座り,あのフードの男の子は俺の向かい側に座った.
翔「零って言うのか」
誰にも聞こえない声で独り言をこぼした.
全員が各自の椅子に座ると,彼女の声が部屋全体に響いた.
先ほどの出来事あってから,彼女には抵抗してはいけないと,痛いほどよくわかった.
だが耳に入ったのは,彼女の明るすぎる声ではなく,低くだが彼女の高い声混じりの,不気味な声だった.
--- `昼の時間` ---
下手すぎるので寝ます.∠( ᐛ 」∠)_