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同じ空の下で #3
ー到着後 兄・結弦視点ー
「茉梨…」
妹はゆっくり目を開けた。
「結弦兄さん…」
茉梨のほっぺには傷ができていた。あんなに綺麗な肌だった茉梨が沢山傷を負っている。
「茉莉、恐っただろうに…よく頑張ったな。」
茉莉は無言で僕の目を見つめ、微笑んだ。
喋る気力は残ってなさそうだった。すぐに茉梨は目を閉じた。
目に涙が溜まって、溢れた。15歳の妹が孤独を耐えて、1人で長い間救助を待った。飛行機が揺れている時、どんなに怖かっただろう。想像するだけで妹を誇らしく思った。
気づけば母は隣で目を真っ赤にして泣いていた。
「茉梨。よく頑張ったわね。本当に、本当に。辛い思いしたよね。」
母はそっと茉梨の左手を握った。左腕にも沢山傷ができていた。
自分なら遺書を書いていただろう。もうダメだと思ってずっと寝ていただろう。そのまま寝て結局見つけられず、数日後に遺体として発見されていただろう。
もし茉梨が死んでたら僕はどんな反応をしただろうか。
ー碧翔ー
あれから連絡が来ない。いつも連絡をくれるのに。
テレビでニュースを見ていたその時、聞き覚えがある名前が報道された。
「生存者は道枝優子さん、吉井圭さん、赤木茉梨さん…」
赤木茉梨?まさか。あの墜落した飛行機に乗っていたのか。一応連絡する。
「大丈夫?」
茉梨の携帯が墜落で壊れている可能性だってある。念のため結弦くんに連絡しようかな。
「事故の報道聞きました。茉梨さんは大丈夫ですか?」
あんな大規模な墜落事故を見事に生き残った。これは奇跡としか言いようがない。
月曜日学校に行ったらみんな知っているのだろうか。
今すぐにでも茉梨のところに行きたい。話したい。
その時、結弦くんから1通のメールが来た。
ー結弦ー
妹の寝顔を見守る母に「ちょっとコンビニに行ってくる」と言って病院の近くにあるコンビニに向かっている途中だった。碧翔くんから連絡が来た。
「事故の報道聞きました。茉梨さんは大丈夫ですか?」
碧翔くん、本当に茉梨のこと好きなんだな。そう思ってつい笑ってしまった。碧翔くんが小学校の頃からそんな気はしていた。
「傷だらけでかわいそうだよ…どうやら右腕が骨折しているようだ。」
ここまでうって考え直した。碧翔くんにこのまま伝えた方がいいのだろうか。
碧翔くんには元気だと伝えたほうがいいのではないか…
僕はこのまま長らく手を止めていた。