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彼とこども【あたたかき ふゆのひに。】
前作への感想をくださった皆様ありがとうございます。
とある冬の日のお昼のことです。
外では、それはそれはつめたい風が吹いており、粉雪というのでしょうか、小さな雪がひらひらと風にまじっています。神父は朝のお祈りをすませ、教会のそうじをしていました。
そのときです。
教会のとびらを、とん、とん、と叩く音がします。
とびらには呼びりんがついているのですが、その高さにとどかないような、小さな子どもでしょうか。神父はおどろき、急いでとびらをあけに行きました。
「おやおや!」
とびらの向こうに立っていた子どもを見て、神父は目を丸くしました。
「こんなさむいのに、どうしたんだい。さあ早くおはいりなさい」
子どもは|乳《ちち》色のワンピースのような服を一枚だけまとい、雪をかぶった頭で、たいそうしょげたようすでした。教会の中に入ると、近くにあった長いすにすわって、かなしそうな顔で床のタイルを見つめています。
そのまま何もいおうとしないので、神父はどうしたものやらと、困ってしまいました。
何しろ、はじめて会う子どもなのです。
村の外からきたのはわかっています。
「お父さんとお母さんがどこにいるか、わかるかい?」
「名前をおしえてくれるかい?」
「いやなことがあったのかな?」
何をきいても、子どもは首をふるばかり。
しかたがないので、神父は少しまっているようにと言いおいて、自分の部屋に入っていきました。
しばらくすると、神父が、羊の毛でできたあたたかそうな上着と肩かけ、それにほかほかとゆげをたてるミルクといっしょにもどってきました。
それを見ると、子どもの目がすこしかがやきます。
うでを伸ばしてほしそうにするので、神父はほっとして上着をきせてやり、肩掛けでひざ下をくるんで、小さな手のひらにミルクの入ったうつわを持たせてやりました。大人の上着にすっぽりと入って、すこし気もちもおちついたのか、子どもの顔にほほえみがうかびます。
「神父さん、ありがとう。とてもさむくて、くるしかったんだ。今はあたたかくていい感じがするよ」
「それはよかった」
神父はそれいじょう、何もききませんでした。
こんなかっこうで、ひとりぼっちでいたのにはきっとわけがあるのでしょう。言いたくないなら、むりはさせたくありませんでした。
ひと月ほど、子どもは神父といっしょにくらしました。
神父のやさしさのおかげか、おいしいごはんとミルクのおかげか、だんろのあるあたたかい教会のおかげか、顔色がわるかった子どもの、まんまるいほおには赤みがもどり、ことばと笑顔ももどってきました。
神父はそれを何よりうれしく思い、白ひげの下でにっこり笑いました。
いいことは、それだけではありませんでした。
神父はたいそうさむがりで、いつも上着を何まいもかさねてきています。
ところが、子どもといると、いつものようなさむさが感じられないのです。これは神さまがくれたプレゼントだろうか、それとも子どもにはふしぎな力でもあるのだろうか。神父はおどろきつつも、すこしだけあたたかい冬の日ざしに目をほそめました。
さあ、もうすぐ、クリスマスがやってきますが……
最後までお付き合いいただきありがとうございます。
まだお話は続きますので、もう少し見守っていただけると幸いです。
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