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11話
朝の光が柔らかく城の一室を満たす頃、二人はもう自然に起きていた。
末日は窓辺で小さな草花を手に取り、加楓は床に敷いた布の上で手先を動かしている。
「今日は庭に行ってみる?」私が声をかけると、二人はぱっと顔を輝かせた。
「行く行く!」末日が小さく跳ね、加楓もにこにこしながらついてくる。
庭に出ると、春の暖かい風が三人を包み込む。赤い花が咲き誇る小道を歩きながら、二人は無邪気に小さな声で笑い合う。
末日は花びらを手に取り、「彩音さん、見て、これすごくきれい!」
加楓は枝についた小鳥に目を向け、「あそこに小鳥がいるよ」と教えてくれる。
私は二人の笑顔を眺め、心の奥から静かな喜びが湧いてくるのを感じた。
(こんな風に過ごせる日が来るなんて……)
庭の隅で小さな石を拾い集める末日。加楓は木の下に座り込み、静かに空を見上げる。
私はそっとその隣に座り、二人の行動を見守った。
日常の穏やかさが、少しずつ二人の心を柔らかくしているのが分かる。
笑い声も小さな声も、すべてが宝物のように思えた。
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城に戻ると、召使いたちが温かい朝食を用意して待っていた。
「彩音様、こちらがご用意した朝食でございます。」
二人は目を輝かせ、初めてのきちんとした食事に興味津々だ。
末日は箸を手に取りながら、「わぁ、これ全部食べていいの?」
加楓も小さく頷き、「こんなにいっぱい……すごいね」と目を丸くする。
私は微笑みながら、「もちろんよ。今日はゆっくり楽しんでね」と声をかけた。
二人は遠慮なく一口、また一口と口に運び、時折笑顔で顔を見合わせる。
食卓の上には、温かいご飯、煮物、焼き魚、彩り豊かな野菜が並んでいる。
その光景を見ながら、私は静かに心の中でつぶやく。
(こうして普通に食事を楽しめる日々が、少しずつでも増えていけば……)
末日が私の方に顔を向け、「彩音さん、美味しいね!」
加楓も小さく笑って、「うん、本当に美味しい」と頷く。
二人がありのままの姿で、安心して笑い、食事を楽しむ姿。
それが何よりも嬉しくて、心の奥から温かさが広がった。
その日、城はただの城ではなく、二人にとっての安らぎの場所となった。
そして私は静かに、これからも二人と共に過ごせる時間を大切にしようと誓った。