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公開中

ソーダの瓶は宙返り

7月30日。時刻は昼の1時。 青くすんだ空の下に、どっぷりと大きな入道雲が溜まっている。 だけど駄菓子屋から外へすぐ出ると、かべにかくれていて分からなかった真っ青な海が、かがやきながら姿を現す。 灰色のコンクリートの地面は分厚く、海の上でも人をしっかりと支えていた。 そんな場所でもセミは、お構いなしにさわいでいる。 「海って、きれいだなぁ…。」 そうぼくがつぶやくと、ナツはとなりでおかしそうに笑った。 「何が変なんだよ。」 ぼくがナツにツッコむと、ナツは笑いながら答えた。 「いーや。いつもここ来てんのにさ、今更そう言ってんのがおもしろくってさー。」 ははっと少しかわいた笑いを浮かべつつ、ナツはずいぶんとごきげんそうだった。あの時、だがし屋で話していた時はあんなに顔をくずさないようにひっしになっていたのに。 「そういやナツ、麦わらすっごいボロいけど…すきまの光とか、まぶしくねーの?」 ずっと気になっていたことを聞くと、ナツは答えた。 「いや、まぁあんま気にしてないけどさ、麦わらボロいからって普通光の心配するかよ。」 続けてナツは言った。 「お前のそういうとこ、好きだよ。」
「足りねー。」 すっからかんのソーダ瓶越しに、太陽がキラキラと輝く。瓶の色が青いからか、真っ青な色で綺麗に輝く。 「キレー…。」 アキも僕につられたのか、ソーダ瓶を両手で支え、光に当てた。 するとスルッとアキの手から、ソーダ瓶が逃げ出した。 「あぁっ!」 空中へ見事に一回転したソーダ瓶は、コンクリートの地面を乗り超えて、そのまま海の中にぽちゃんとおっこちて行った。 それを見たトウヤがすかさずかまをかける。 「あー。アキやってるー。」 「ちっがうし!わざとじゃないしー!」 僕たちは明るい空の下、うるさいセミの声も無視して、4人だけの乾杯を楽しんだ。