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#3 安否と接戦不敗
慌てる様にそう言っても神楽は完全に黙ったまま。
2人を無視して桜舞の寝込んでいるベッドの側まで行けば、一直線に見つめ涙を流す。
「…ばか、生きてんなら早く言ってよ…心配したんだから…ッ、」
そう吐き捨てれば目を擦り、顔を上げ2人の方を見つめる。
「私、鬼管入る。鬼が隠れて暮らすのはいやだ。鬼は人を襲わないって世間に教えてやるの」
「だから…私を鬼管に入れてください」
力強い眼差し。
それほど本気な様だ。
玲央奈と明羅は目を合わせ、互いを見つめる。
そして神楽へと視線を戻せば口を開いた。
「…おっけぃ、鬼管に入るなら相当な覚悟がいるよ。生き延びる為の厳しい訓練がある。それでも神楽ちゃんは耐えれる?」
「耐えれます。絶対、目標を成し遂げるから…」
「……だってさ、明羅」
「そっか、なら…豊臣神楽。鬼管養成学園入学を許可する。」
待ち侘びていた様に目を輝かせ、元気な返事を返す。
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明羅に連れられたのは神楽が元々通っていた中高一貫校に近い建物。
鬼管養成学園、通称鬼管だ。
待合室に入れられれば明羅と別れを告げる。
何もない部屋を探索しつつ、暇を紛らわす。
神楽は暇が余程嫌いなのだ。
ピシュン。
どこからかナイフが飛んできた。
音と共に避け、地面へよろける。
「何…今の…」
混乱を隠しつつ気配を探る。
何処かしらにはいるはずだ。
目の前を通り過ぎれば後ろを通り過ぎる。中々に厄介ですばしっこい人物の様だ。
そして神楽を惑わせると姿を表し、「ばぁ」と声をあげる。
「!そこかッ‼︎」
「おっと…出会い頭殴るのか…君、まだ自能力が出てないんだね?」
「…出てますけど、貴方。誰ですか」
「俺かぁ~、俺は鬼管養成学園講師。如月累徒だよ~‼︎いやぁ、久しぶりに女の子がきたからつい攻撃を…ぶはぁッ⁉︎」
雰囲気が一気にチャラくなり、眉をひそめる。
ナンパでもする様な口調で言い出せば怒りの限界と言わんばかりに累徒の顔面を殴る。
これが講師と思うと心配でしかない。
「あ、あるんだ!なら…今の実力を見せて貰おうか」
姿が徐々に消え、透明になる。
自能力だ。
神楽も念を込め、息を殺し自分の髪を一本抜き、大麻を作り出す。
巫女そのものの姿になれば大麻を振り上げ、口を開く。
「……古来より存在する獣(けだもの)よ、悪去し現代には似合わぬ遡行…喰らわずして命はないと想え!寿界の仙来、渧‼︎」
そう唱えれば大麻を振り下ろし、無数の札が地面を覆う。
そして、左に向ければ透明な累徒を追跡し出し一枚の札が手を拘束する。
「やっべ、完全に油断してた…w」
透明化がなくなり、地面に倒れ込む。
「…あ、が…ッ……げほ、」
「あーあー…やっぱ制御は出来ないかぁ~…肺が破れてるね、それ」
神楽の肺の位置を指でトン、と指せば目を細める。
軍帽の中から見える白い瞳は的確に肺の状態を凝視する。
「俺の自能力は全身全霊。自分の体を透明にしたり相手の体内を透視出来るんだよね、すごいっしょ。そんな俺も戦闘部隊なんだよ~?もー、まじ訓練頑張ったんだから。動けないでしょ、うちの相棒が蓮司のとこまで連れてってくれるさ」
そう、累徒が言えば後ろから人影が出てきた。
左目を眼帯で隠している女性だ。
その女性は息をしながら神楽を浮かし、彗月崖の元へと連れて行った。
「…なぁ~んで生徒を増やすかなぁ~…息成擬忠は鬼を殺すっつーのに…」
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息成擬忠【そっせいぎじょう】とは。
玲央奈達が説明していた自能力の名前であり、物の形状を変えることから擬態の擬が使われている。
この名前を知っているのは鬼だけなので外では自能力、と呼ばれている。
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「_______い"ッッッ⁉︎」
「我慢しろ我慢、そのまま呼吸続けろぉ…」
涙目になりながら呼吸をする。
如月との戦闘で肺が破れるも、左肺だけで済み現在彗月崖のお世話になっている途中だ。
目線逸らし、適当な口笛をし下手に誤魔化す如月に彗月崖はゲンコツを一発食らわした。
「息成擬忠を使い慣れてねぇ奴に出迎え戦闘はするなとあれほど言っただろぉがぁ‼︎こういう奴が肺を破ってこっち来るんだ、てめぇの手下の一之瀬もよぉ…制御くらいしやがれやぁ?」
「すみません。負傷した者を運ぶのが私、一之瀬流杏の仕事で御座います」
「うっせぇよ…こいつに出迎え戦闘するなと言え。累徒、てめぇこれ以上やったら除籍すっぞぉ?」
「わりぃって、ついつい手が出ちまっただけじゃあ~ん蓮司~」
横で言い争いを起こす彗月崖と如月。
こちらは苦しんでいるというのにあちらは何だか楽しそう。
そう思えば殺意が湧き、眉がピクピクと動く。
そして苦しみがなくなれば如月に対して一つ顔面殴りを見舞いしてやった。
「せんせぇ…私をナンパしといて肺を破るとか飛んだクズなんですね…」
「ちょ、ちょちょ‼︎顔が笑ってないよ!目が、目が!!謝るから‼︎許してぇぇぇぇ!」
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…まぁなんとかなった様で今は教室に来ている。
なんとも沈黙が続いて気まずい。
「…自己紹介してね…ちょっと俺顔面痛いわ…」
「自業自得でしょうが」
ツッコむ神楽。
如月は顔面を抑えて痛みに耐えていた。
「…えっと、私豊臣神楽!15歳です、よろしッ⁉︎」
自己紹介をし終える前に空気が裂かれた様な攻撃に見舞われる。
持ち前の反射神経で避けるもどこから撃たれたのかはわからない。
キョロキョロと探していると1人、ツノを出した少年が神楽を睨んでいた。
「ねぇ、名前何…?なんで攻撃…」
「菱網 吐空。馴れ合いしない」
「お、落ち着いてぇ…僕は瀬凪 真迎です…っ!」
「桟土間 星流菜。以上」
「最近目覚ましました…桜舞です…」
「柊 狛李…ですっ」
全員が自己紹介を終えたあと、神楽は目を丸めた。
桜舞が目を覚まし鬼管に入学している。
その事実に驚きが隠せなかった。
だが、その驚きも束の間。吐空からの斬撃は止まらない。
反射神経で避けていくも、一歩間違えれば他のクラスメイトにも被害が及ぶ。
それだけは絶対に避けたかった。
「…っ、あんま使いたくないけど!去った善よ悪と引き換えろ…緋凱の染苒!」
札がツノに巻き付く。
数秒だけの自能力無効だ。
一瞬でも無効にすれば呼吸をし出すのが鬼、ならば即座に行動に移せばいいと思ったのだ。
ツノが仕舞われ咳き込む吐空に手を差し伸べるも叩かれ睨み付けられる。
それでも神楽は動じなかった。
昔からそう言う目で見られるのは慣れていたのだ。
「げほッ…武士の家系だからって…、調子乗んなよッ、」
「はいはいそこまで。これ以上やるなら如月先生は黙ってないぞ」
静止の合図で皆が黙る。
出迎え戦闘でその実力をわかっているからだ。
さっきまでヘラヘラとしていた目は鋭い眼光に変わり、一人一人を見ていく。
そして口を開き、
「お前らには今から即興戦闘をしてもらう。ただ無呼吸発動だとこれからの活動に限度があるから先に伝授をするんだけど…寿命が縮む。これだけは絶対覚えとけ。そして自能力…正式名称息成擬忠は悪ふざけに使うな。それで何人もの生徒がここで命を落としてるんだ、だからやるなよ。これは寿命を引き換えに起こすものだ」
空気が張り詰める。
その空気は如月を始めとした全員の目が物語っていた。
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広い戦闘場、そして遠くには観戦席。
生徒にとってはあまりにも広すぎる。
「今からここでお前には戦闘をしてもらう。俺がさっき伝授した方法を使って息成擬忠を発動しろ。守れなければこの場で即刻処分だ」