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第一話:ルール説明と嘘吐き達
薄暗く、埃っぽい。そして肌寒い。
ひんやりとした床から離れるように起きて立ち上がる。
第一印象で強く思ったのはその3つだった。
目が慣れてくると、そこまで暗くなかったなと思い直すけれどやっぱり薄暗い。
天井、壁、床。すべてがコンクリートで、塗装などとっくに剥がれ落ちているのだろうと推測がつく。コンクリートが欠け、錆びた鉄筋が剥き出しになっている部分がちらほらと見える。何かの部品や布切れが散乱していることから、ここは何かの廃墟なのだろうとは想像がついた。
ちょうど、僕がいる大きなスペースでは、それらが最近になって掃けられたのだろうと分かるほど、何も落ちていなかったけれど。
周りには、僕と同じように少しキョロキョロと辺りを見回している人、全く動じず前を向いている人、後悔からか多少パニックになっている人などが、ざっと数十人はいた。
立ったり座ったり、まだ寝転がっていたりなど様々な様子で。
みんなも、声をかけられて了承したのかな……。
「そこの君。ちょっとこっちに来て話さないかい?」
そんな事を考えていると、急に真正面から声が聞こえた。まさか誰かに話しかけられるとは思わず、驚いてしまう。
「あ……はい。……ええと、お名前は」
「あ、僕?凛だよ。|東雲 凛《しののめ りん》。よろしく」
東雲さん。第一印象は、正直に言って苦手だった。誰にでも話しかけそうな、明るい陽キャとは別タイプの、どこか掴めないグイグイ系の人。
「あ……あの、僕は……|大鋸 叶杜《おおのこ かなと》……です」
そう返事した瞬間、ザザッといった砂嵐に近いノイズが古そうな天井についているスピーカーから聞こえてくる。
『大体の参加者が目を覚ましたことを確認。これよりルール説明を行います』
機械音声のような妙にイントネーションや強弱が外れている声がはっきりと告げた。
『第一回、会場は廃工場。制限時間・生存枠制です。詳細は以下の通りです』
『制限時間は**2日**。食料は最初に1日分のみ配布。以降は探索してください』
『生存枠、**15名**』
『クリア条件、一。制限時間終了時に生存していること。二、生存者が15名以上いた場合は生存者が所持している**「鍵」**が10個以上だった場合は生存者は全員生存とします』
『10個以下だった場合は生存者の中で鍵の所持が多い者から**先着15名**といたします』
『なお、鍵は工場内に隠されているほか、入手手段は問いません』
『武器の配布は行いませんので、工場内を探索してください。また、食料は参加者が今いる場所、広場の奥に一人ひとりロッカーがございます。ロッカーの鍵は参加者のポケットに入れておりますので、ご自由にお取りください』
『ロッカーの注意点です。ロッカーの鍵の奪い合いをした場合・ロッカー内の荷物をロッカーの主が取る前に奪った場合は即失格となります。主が取ったあとは奪い合いをしていただいても構いません』
『また、ロッカーの鍵は生存に必要な鍵とは関係ございません』
『そして、生存者には一人あたり1000万の賞金を贈呈いたします』
『では、楽しんで——』
一通りの説明を受けたあと、ブツッとスピーカー音声が切れる音がしたあと、ビーッと開始の合図のような笛の音が鳴り響いた。
――全員で協力して10個の鍵を集めるか。
それとも、他人を蹴落として鍵を独占するか。
「入手手段は問いません」「奪い合いをしていただいても構いません」……。
耳に残る非情な言葉が、僕の何かに重なる。綺麗事ばかりを言って、裏でハメようとするやつがこの中にもたくさんいるのだろう。
かつて僕を地獄に落とした、嘘吐き達のように。
50人近くいる参加者が、スピーカーが切れ笛が鳴ると同時に一気にざわつき、不信感が募るのを感じる。
別に死んでも良いと思い、あの日了承したけど……死ぬのとは違う別の恐怖で、僕の体を強張らせていた。