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5.週末 3
一面に花が咲いた場所。そこで、わたくしは誰かと話していた。
楽しい会話…深刻な会話‥いろんなことを話した男の子。この時は…何を話していたのでしょう?
目が覚めた。何か、懐かしい夢を見ていた気がする。
どこかきれいな場所。…神殿かしら?
古い胸の傷が|疼《うず》く。
着替えながら、今日は何をしようか考えた。
せっかく上級素材があるのだし…薬でも作ろうかしら?
うん、素材に鮮度は必要だものね!最高よ!
ふっふ〜ん。
「お嬢様、今日は何をするのですか?」
「今日は家で魔法薬を作っておくわ。」
「かしこまりました。では髪はくくっていたほうがよろしいですね。」
あら、気が利くこと。
「助かるわ。」
それから1分もしないうちに髪の毛は完成。朝食を食べて…今日は誰もいなかった…さあ!楽しみましょう!
昼食後、わたくしは読書にいそしんでいた。
飽きたわけではないわ。思ったより調合に失敗してしまって、材料がなくなってしまったのよ。公爵令嬢としてももっと腕に磨きをかけておかないと。あぁ…落ち込んでしまうわ。貴重な素材を無駄にしてしまったんだもの。
そんなふうにずっと引きずってしまっている。
…これは、なにか楽しいことがないとずっと考えたままになるわ。
そう思い、気分転換に読書をしているのだ。
ふと手に取った本は《呪い》の本。
いい加減、これにも 向きわないといけないのよね…
わたくしの呪いは「約束」だ。ただ、それを考えてしまったせいで…より落ち込みは増したように思える。
気分転換、気分転換をするのよ。
そう思っても、何故か呪い…魔術…薬…そんなものばかり手に取っている。
諦めて、《呪い》の本を潔く読みましょう。
ふと、とある記述が目に入った。
『呪いとは、祝福と紙一重である。』
そうかもしれないわね。《《ふ》》に落ちるものがあった。
わたくしの呪いも、きっと祝福に思える人もいるのでしょう。
…この本、興味深いわね。先ほどまでより、真剣に読んでみる。
『呪術師と呼ばれるものは、未だ神以外見つかっていない。また、呪いのようでも、本人がそれを認めない事例も多く見つかっており、どのようにしてその事象が起こっているのかは、未解明のままである。』
分厚くはない本。だけど、気が付いたら夕方だった。
一言一言に思い当たるものがあったからか、今までの読書より学べている気がする。
不思議なこともあるのね。今まで図書室には何度も出入りしているのに、この本の存在に気が付かなかった。こんなに分かりやすいところにおいてあるのに。小人さんでもいるのかもしれないわ。
やっと、明るい気持ちになれたのだった。
「あら?誰もいないのね…」
そうだった。今日はわたくし以外全員用事があるのだった。
そういえば、ユーリお兄様の用事は一体何だったのでしょう?
「クラン!」
エステルお兄様がいた。
「どうされました?今日は用事があるのでは…」
「用事はあるが!その前にお前に言いたいことがある!」
「何でしょう?」
「なぜ父上に誘われたとき、パーティーを断ったのだ!?」
「どうしてと言われましても…わたくし、以前、お父様とああいう場にはついていかないと約束したのですよ。だから、それを守るためにも、行かないのです。」
「そんなものを守る意味がどこにある!?お前は公爵令嬢だぞ!?」
「それがどうしました?わたくしは公爵家の名に恥じぬよう、魔術を磨いたり、自分の価値を高めたりしていますわ。公爵令嬢ならば、約束も守るべきでしょう。一体何に対して文句を言われなければならないのでしょうか?」
「いつ、そんな約束をしていたのだ?」
お兄様の勢いが少し弱くなったわね。これなら嘘をつかずに説得することもできるのではないかしら?
「わたくしが神殿から帰ってきてすぐの事ですね。」
強引に約束させてもらったわ。たしか。
「父上は、そのことを覚えているのだろうか?」
「多分忘れているでしょう。今までは…まぁ避けることはできてましたが、今回お父様がその提案を持ってきたことからして、多分忘れているでしょう。」
「お前は…それを思い出してもらわなくていいのか?」
「別に構わないわ。わたくしが断り続ければ、約束を守ることにはなりますから。」
「そうか…急にすまなかった。」
「いいえ。」
一体何の用で来たのでしょう?こんな簡単に説得できるようではこれが本題だとは思えませんわ。
「一つだけ伝言を伝えるぞ。魔物には先に気づくのに、その存在を忘れるのはやめてほしい、だそうだ。」
そう言って、行ってしまった。そんなに急いで、一体今から何の用事があるのでしょう?
ユーリお兄様もエステルお兄様も結局教えてくれなかったわね。わたくしは仲間はずれにされているのかしら。
そしてこの伝言…間違いなくケルートからね。もうお父様に報告したのかしら?早いわね。しかし、なぜそれがエステルお兄様に伝わるのでしょう?理解できませんわ。
それにしてもまあまあ核心に近づいたことを喋ってしまったわ。やっぱり嘘をついたほうが良かったかもしれないわね。きっとまだまだ経験が足りないのでしょう。
ふう…いきなり呪いの本をクランが見つけてしまうから…内容考えるのが大変でしたw