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ブラフ・ミステリ
この小説にはオリジナルキャラクターが登場します。
1.探偵は今日もダイスを振る
霧の町ロンドン。
薄い光がかろうじて机を照らす地下の賭博場に、一際目立つ影があった。
「赤の24。僕の読み通りだ。8ポンドはいただくよ」
「チッ……」
黒に賭けていた初老の男が舌打ちをする。
「なんでさっきからお前ばかり儲かる!さては、イカサマをしているんだろう!?」
「してないってば」
そう言って、彼はアッシュブラウンの髪をかき上げた。
「今日のディーラーさん、君、左利きでしょ?手癖があるんだ。」
ディーラーが自分の左手を見た。
「なぜわかったんですか…?右利きに矯正したはずなのに」
「時計だよ。君、時計を右腕につけてるね?」
「左利きの人は大体見やすいように時計を右腕につけるんだ。」
彼の右手では、銀色の硬貨が弄ばれている。
「左利きの人には、手癖が少なからずある。だから、自然とルーレットを回すときも出るマスが決まってくる訳。」
彼はその硬貨を横目に、男を見据えた。
男はしばらく彼の顔を見つめた後、長ったらしくため息を吐いて、こう言った。
「……あァ、やけに理屈っぽいと思ったら、お前、ブラックマイルの探偵か」
「ご明察〜!」
そう言って彼は席を立ち、男の前に名刺を突きつけた。
「じゃあ、改めましてーー僕はユーリ・ブラックマイル」
「ーー以後、お見知り置きを。」
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ユーリが不敵な笑みを浮かべ、仰々しい礼をしたその瞬間。
「こんなところで、何をしていらっしゃるんですか?」
背後から響いた美声に、思わず背中が逆立つ。
ユーリがゆっくりと後ろを振り向くと、そこには完璧にアイロンがけされた衣服に身を包んだ長身の女性ーー彼の秘書兼助手のベリー・ホワイトリードが立っていた。
「や、やぁベリー。奇遇だね。こんなドブネズミの巣みたいな場所になんの用だい?」
ユーリは引きつった笑みを貼り付けて言った。
「それは貴方が1番わかっているはずでしょう?事務所の費用を全額カジノに溶かそうとしている馬鹿探偵を引きずり戻すためですよ」
そう言うや否や、ユーリのシャツの襟がガシッと掴まれる。
「あぁー!待ってー!僕の8ポンド!まだ回収できてないのにぃー!!」
さっきとは打って変わって、情けなくベリーに引きずられるこの探偵は、実はどうしようもないギャンブル狂なのであった。
他のギャンブラー達が呆気に取られる中、二人は賭博場を後にした。
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ブラックマイル探偵事務所にて。
「んぁぁ……あの8ポンドさえあれば、僕の晩御飯はコーヒーだけにならずに済んだのにな」
「ユーリ様が資金を全額カジノに溶かすから、こんなことになるのです。毎回迎えに行く私の身にもなってください。」
夜の事務所に情けないユーリの声と、どこまでも冷静なベリーの声が響く。
「でも、さっきの僕の推理冴えてただろ?」
「そんな余計な所に推理力を使わないで下さい」
頭に手を当ててポーズをとるユーリを尻目に、ベリーはデスクに山積みになっていた書類のうち一枚を取り出した。
それをユーリの前に突きつける。
「この間の不倫調査、まだ終わってませんよ。これに推理力をお使いになったらどうです?」
途端にユーリは顔をしかめた。
「えー……不倫調査楽しくないじゃん」
「楽しいか楽しくないかは関係ないんですよ。」
そう言ってベリーはユーリに書類を手渡し、部屋の奥の方に行ってしまった。
「あーあ……何も楽しくない不倫調査とかより、もっと僕を楽しませられるような事件を解決したいなぁ」
つまらなそうにユーリが硬貨を取り出した時。事務所のドアが恭しくノックされた。
「……?どちら様でしょうか」
ドアを開けたベリーが誰かと話している。
どうやら女性のようだ。
「あの……その、私の妹が……」
「……行方不明になってしまったんです」
ベリーの目が見開かれる。
「……行方不明?」
「……ほう、面白いね」
いつのまにかすぐそばまで来ていたユーリは、その女性の顔を覗き込むようにして言った。
「その事件、僕が解決しよう」
さっきとは打って変わって乗り気のようである。ベリーは呆れのため息をついた。
「ユーリ様」
「わかってるって。まずは事情を聞いてから、でしょ?」
そう言って、ユーリはソファへ女性を案内する。女性が席に座ったのを確認して、ユーリはソファに腰を下ろした。
「……さて、詳しく聞かせてくれ」
「ーー君の『事件』を」
この小説をご覧いただきありがとうございます。
いかにもシリーズっぽく終わっていますが、続きはまだ構想の段階で続くかもわかりません。
それでも、この小説を読んで楽しんでもらえたら幸いです。
いずれキャラ設定や時代背景も投稿しようと思っています。