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#15 潜入捜査
『把握 開けといて』
そう打ち込み、わたしは作業を開始した。あっちのパソコンでアクセスできるということは、きっとこの空間を介して向こうへ行けるはずだ。
あとは、ネットがいつ確認するかを残すのみ。仕事は取りやめ、パソコンで『九十九家』と打ち込んで検索した。ホームページがでてきた。
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第一代当主・|九十九唯心《つくもゆいしん》は、インターネット機器に積極的に触れ、ビジネスを開始しました。ホームページ制作、ゲーム制作等、インターネットを使用するものは殆ど依頼を承りました。
次第に活動規模を広げてゆき、パソコン制作等も担当しました。
現在は第八代目当主・|九十九律《つくもりつ》が、九十九家の当主として、精力的に活動に打ち込んでいます。
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良いことが並べられており、他にはクラウドファンティングの頁があったり、仕事依頼の頁があったりとした。まぁ、べつに依頼しないんだけれども。
その後、九十九の電話番号と、家の住所が書かれていた。ビルは建てていないらしく、豪邸のような家の写真が貼り付けてある。まあ、最悪パソコン一つあればいい仕事なのだが。
行こう。
玄関へ向かい、上着を羽織る。帽子をかぶって、用意したバッグを持つ。ハンカチ、ティッシュ、スマホ、パソコン等の必要なものが入っている。念のため多めにお金を用意して、財布に入れる。あ、そうだ。旧型パソコンも一応持っていこう。型が古くて、なんかの手違いで初期化してしまったやつだ。
「ネット、必ず救い出す」
そうつぶやき、ドアを開けた。
首都圏にある九十九家に行くため、特急を使うことにした。検索すると思いの外早く予約がとれ、徒歩で駅へと向かう。駅についているコンビニで、ハンバーガー、鮭おにぎり、サンドウィッチを買う。ほうじ茶と麦茶は迷ったが、いつもの麦茶にしておいた。あとは、近くの安いビジネスホテルもついでに予約しておいた。長引くかもしれない。
予約の時間になり、わたしは電車に乗り込んだ。特急は空いていて、暖房が気持ち悪くなるほどにきいていた。指定席に座り、古い友人に久しぶりにメールを送った。仕事はできないし、しょうがないので娯楽で暇をつぶす。動画を視聴したり、好きなイラストレーターの最新のイラストを見たり。あとは、ちょっとだけメイクをした。
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1時間ほどで着いた最寄り駅。何度かは乗り換えをした。
都会の町並みを拝見しながら、九十九家周辺に着いた。豪華な家が見える。門がある。その隣には、普通のインターホン。ここは庶民だ。
ぴんぽん、と押す。べつに麗しい響きはなく、ただのものだった。
『はい』
返事がした。20代ぐらいの男女どちらかの声が、ノイズ混じりに聞こえた。偽名を使う方が良いのだろうが、わからない。
念のため、帽子を深く被り、マスクをして、上着をちゃんと着る。
「あのぅ、インターネット関連のことをしたいんだべが」
エセ方言は怒られそうだ。作り声は少し苦しい。
「九十九さんちはここでおうとるか?」
『何故ここに?インターネットでメールを送ったらいいだろう』
「いえぇ、うちはインターネットにはあんまり詳しくはないんだ。だがうちの村は貧しゅうて、インターネット関連で収入を得たいんだぁ。九十九さんが詳しいと聞いて、一応パソコンはあるからぁ」
『そうですか。ならどうぞ、お入りください。係の者がいますから』
ありがとうございます、と明らかにおかしいイントネーションを発しながら、門をくぐり抜けた。