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笑
広い空を見ると、泣きたくなる。
あの子は今でも私を探しているのだろうか。
純粋で、健気で、あの儚い笑顔を思い出すだけで辛くなる。
あの子は外が好きだった。
青く涼しげな世界を愛していた。
曖昧な朝、草をかき分け進んでいくのが楽しそうだった。
雨上がりの土を踏みしめながら、さらさらという木々の音を聴きながら、太陽の方角を見て目の奥を輝かせていた。
空よりも大きな想いを広げていた。
宇宙に希望を見ていた。
綺麗だった。
澄みきった空気を目一杯に吸うあの子が、小さくもたくましい背中が、目を離せば届かなくなりそうなその手が、今も私のために縛られてしまっているのだろうか。
私を救おうとして、叫んでいるのだろうか。
あの子は私が好きだった。
私を信頼していた。
優しかった。
あの家に一人残してしまったことを、許してしまうだろうか。
「待って」
あの子と会って、謝らなくちゃ。
「行かないで」
あの子と会って、涙を拭ってあげなきゃ。
「ねぇ」
あの子と会って、笑顔を見せなくちゃ。
「待ってよ」
あの子と会って、さよならを言わなきゃ。
「 」
それまでは、私も広い空を見てる。
浅瀬にいる。
寒くても、辛くても、待つ。
久しぶりに綺麗だった。