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あの子は甘い地獄
リストカット表現あり。
2025/12/24 あの子は甘い地獄
「みて」彼女はそう言って自身の袖をまくり、細い手首を私に見せた。そこにはいくつかの赤い線が走っていた。私は息を呑んだ。
放課後の私たち以外だれもいない教室は、薄暗く、無音で、冷たい。数秒の沈黙の後、彼女は失望したように視線を落とし手首を隠した。その動きに我に返った私は、何を言うか決めていないまま、口を開いて声を出した。
「わ」私も。そう言った。長袖をまくって手首を出した。私の手首にも、彼女のと同じような赤い線がいくつも走っている。彼女はほんの少し目を見開き、私の顔を手首を交互に見やり、静かに笑った。
初めて見る彼女の笑顔は、想像より大人びていて、想像より美しくて、想像よりぐろかった。心臓が1回大きく波打って、嫌な音を立てた。彼女は言った。「アタシたち、友達ね」ほとんど反射的に、嫌だと思った。ずっと仲間が欲しいと願っていてたった今それが叶ったのに、この先に待っているのは底なし沼なのだと、救いの真逆にあるものなのだと、直感してしまった。生暖かい、ドロドロとした、例えるならげろみたいな、やつ。
私は無理やり口角を上げて曖昧に頷いた。鈍く輝く彼女の瞳から目を逸らしカバンを手にとった。私が帰るらしいと察した彼女は、目を細めた。
「また明日ね。ゆうかちゃん」私を苗字ではなく名前で呼ぶその声は、溶けかけの甘いチョコレートみたいだった。「うん。また明日…」嘘をついた。教室を出て、廊下を走った。体力なんてないから、すぐに苦しくなった。校門を出るまで一度も振り返らなかったし、振り返る余裕もなかった。
肺に流れ込んでくる冬の空気は、教室のそれよりもずっと冷えていた。肺が削られているようだった。でも、あの甘さに比べたら、こっちの方がずっとまし。
なんかーなんていうかーボケボケのどろどろのぐろぐろの醜い醜いしたやつ書きたいんだけど無理でした。