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    犬吉さんの過去
    
    
        え、私の過去ですか?
趣味が悪いですね…
ああ、言えばいいんでしょう?
ええ、話しますよ。
    
    
    私は昔、ただの犬でした。
ただの、捨て犬。
それだけの。
ある日、とある人が、私を拾ってくれました。
「くそっ…なんで皆拾わねぇんだよ。」
そんな風に、文句を言いながら、優しい手で。
その人が私を家に連れ帰ってくれました。
「あー、お前、名前あんのか?」
「俺は天廻戮途。
ってか、動物には名乗らなくていいのか?」
言葉遣いは乱暴でしたが、心根の優しい人でした。
「名前、ないのか。なら、《《犬吉》》でいいか。」
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一年程経った頃、いつものように玄関で
天廻さんの帰りを待っていました。
《《帰って、来ませんでした。》》
後から知ったことですが、天廻さんは、
交通事故に遭ったそうです。
でも、ずっと、ずっと、帰ってくるのを待って。
私は、妖怪のような存在になりました。
怨念とでも、言い表せるかもしれません。
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その待っている間に、大災害が起こり、
文明がリセットされていたそうです。
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「んね、君が次の最高神で良い?」
急に、そう声をかけられました。
そして、これまた急に神となりました。
何をすればいいのかよく分からず、
《《地上》》を見ていると、
天廻さんと同じ、魂を持った人間がいました。
国同士の戦いが頻発していて、その中でも、
殺戮を繰り返し続ける王。
それが、天廻さんと、同じ魂でした。
それもあり観察していると、
天廻さんが正々堂々、撃たれていました。
天廻さんに、神の裁き、と言いますか…
その様な制裁で、次の生では私の手足?として
祓い屋…悪いモノを祓う役目を与えました。
そして、前最高神様が、邪神に堕ちたため、
封印することとなりました。
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次の生までの間、天廻さんと只々話していました。
どうやら、前世…私を救ってくれた時のことは
覚えていないようです。
だから、名前を違和感なく天廻戮途だと
認識させることはかなり難しかったですが。
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その間、考えていて、
《《ある事》》に気づきました。
文明リセット…つまり大災害が起こったら、
最高神を交代しなければならないようです。
そのような、決まりだそうです。
そして、だいたいその頃に乖と出会いました。
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そして、遂に大災害が起こりました。
次の後継者…
つまり、相応しい者を探しました。
愛する者を失い、存在意義を失った、
とある概念存在。
エメラレスを後継者にしました。
そこで、私の役目は終わったんです。
だから、趣味として好きだった、
《《インタビュー》》をすることにしました。
《《疑われぬ様》》に、フルネームを犬吉犬男としました。
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        まぁ、こんなところですよ。
エメラレスの愛する者。
ルビアが病んでしまった世界の、過去。
それも見ているんでしょう?
なら、もう一度見に行った方が
良いんじゃないですか?
どこか、変わった様ですよ?
乖の情報ですけど。