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無茶苦茶な遊園地
理屈を気にする人は読まないほうがよろしいかと…
今日は、彼氏と遊園地にお出かけだ。
開園したばかりの遊園地だが、とても楽しめると評判が早速ついている遊園地である。
「楽しみだね、|直哉《なおや》」
「だな、雫」
まず向かったのは 、ジェットコースター。
しかし、私たちはそれを見て呆然とした。これ、フリーウォールじゃないか?
とりあえず、入り口に向かった。開園後すぐに来たおかげか、15分で入れた。
「結構待ち時間短かったな。」
「ね、私たち、運がいいのかも。これだと他のアトラクションにもたくさん乗れるしね。」
そして、ジェットコースターという名のフリーウォールに載ろうとしたのだが、、、
私たちがのせられたのは、コーヒーカップだった。
…どういうこと?
しかも、このコーヒーカップ、二人で回したけど、回しても回しても速くならない。そればかりか遅くなる始末である。反対回しでもそれは一緒だった。
「おかしいだろ、ここ。」
「こんな無茶って許されるのかな? めっちゃ嘘もあるし」
「次何に乗る?」
「じゃあコーヒーカップに並んでみない?」
「おう、それがいいと俺も思ってた。」
そして、コーヒーカップの列に並んでみた。
しかし、私たちが通されたのは…またコーヒーカップ?
待ち時間が短いのはいいけど、おかしいでしょ?
だか、今回はちゃんと速く回るコーヒーカップに乗りたい。
そう思って、少ししか回さないことにした。
ビュンビュン
…え? 一瞬我が目を疑った。これ、新幹線といっても通じるくらいのスピード感なんだけど…。
終わったころには疲れてた。目も回ってしまった。
「次どうする?」
「疲れたから何か食べたい。」
「じゃ、店に行くか。」
そう行って向かったのはカフェみたいな店。
さすがにここで噓をつくことはないだろうと思って、安心して入った。
中は普通の店っぽい。よかった、やっとまともなものにたどり着けた。
注文をしたら奥に通された。
なんだろう?と思っていると、普通に机といすがあっただけだった。ただし、机は1つに椅子は4つ。
なんだ…と思い何かあることに期待してた自分に気づいた。
うん、確かにこれは楽しいわ。予想外がたくさん詰まっている。
証拠に、彼も少し残念そうに感じていた。
その時、
ガタン。
と、変な音が聞こえた。
「え?何?」
「わかんねえ。うわあ!」
「ぎゃあ!」
彼が気付いたときに私もちょうど気付いた。
この机、4分割されている。
机にはあしが多くついていたおかげか、倒れることにはなっていない。
そして…
机といすが、一セットごとに動き出した。もちろん私が座っている椅子も動き、私も動く。
そして、反対側に座っていた彼は真逆の方向に動き出した。
机の上に置かれていた皿も、分かれ目にそって割れていた。
…どういう原理?
分からない。
そして、机と、私が座っている椅子はある部屋に入った。
ガクン。
という音がした。
そして、けだるさを感じた。
何が起こっているんだろう。というかあの建物そこまで大きく見えなかったし一階建てだったし、こんな広くなかったよね?
また、ガクン、と音がした。
部屋のドアが開いて、目の前に直哉がいた。
「あれ? なんでいるの?」
「そっちこそなんでいるんだ?」
どうやら私たちは左右対称に進んだみたいだ。残りの二つの机といすも戻って来ている。
「なぁ、この机、割れ目見えなくないか?」
「え?あ、本当だ…しかも皿も割れた感じがない。」
少し肌寒く感じた。
**パーンパパパパーン!**
ファンファーレの音が聞こえた。大音量で。
「え、何?」
「これ、ファンファーレだよな?」
「たぶん」
「こういうのって、何かが始まる時とかめでたいときに使われるよな」
「うん、そんなイメージがある。」
そんな風にしゃべっていると、
「本日はこのテーマパークをご利用いただき、誠にありがとうございます。」
ブフッ
「今、テーマパークって言った?」
「うん。確かにそう言っていた。」
二人とも思わず笑ってしまった。
「わたくしども、従業員一同、心より感謝いたします。さて、先ほど喫茶店をお使いになられました、2名様には、ただいまよりフリーウォールに乗ることができます。10秒後に、扉が開きますので、しばしお待ちください。その後は、係員の誘導に従っていただきますよう、心よりお願い申し上げます。」
プシューッ
あれ? 10秒もたったっけ? すぐに扉が開いたような…
しかし、フリーウォールってここから乗ることができるんだ。楽しみだなぁ。
「お客様、これをつけていただけますでしょうか?」
そう言って係員に手渡されたものは足元ががっちりしている、何かの防具だった。
フリーウォールってこんなの使うっけ?
「では、こちらへどうぞ。」
そういって通されたのは、確かにフリーウォールの建物の外。景色が一望できるところ…なのだが、フリーウォールは下から乗るものであって決して上から乗るものではない!!
「自分のお好きなタイミングで飛びおられて結構です。」
つまり…
「なあ、これってバンジージャンプだよな…」
「私もそう思う…」
「かなり無茶苦茶だよな…」
「嘘ばっかだね…」
「すいません、これって二人一緒に行けますか?」
直哉がそう聞いてくれた。うれしい。
「大丈夫ですよ。ご一緒で行かれますか?」
「「はい」」
「いくよ。」
「うん。」
「せーの。」
「きゃああああああああああああああああ!!!!!!」
「うわぁぁぁぁああああああああああああ!!!!!!」
落ちるのは止まった。
もうすぐ上から引っ張ってもらえるはずだけど、普通のバンジージャンプなら。
しかし、まあまあの高さから落ちたとはいえ、結構高さに余裕があるな…
「きゃああああああ」
「うわぁぁああああ」
また落とされた。
紐に余裕をつくっていたみたいだ。
ついたのは地面すれすれ。
まあ、2メートルぐらいのところ。
下にさっき上でもてなしてくれた係員がいて、
「そこからは、自力で降りてくださいますようご協力お願いいたします。」
と言ってきた。
なんで下にいるの? と思ったが聞かない。聞けない。
下には普通にクッションがあったから、安心して飛び降りたら、跳ねた。
トランポリンだ。
全然止まれない。
勢いをつけないようにしているが…
…1分ぐらい後になってやっと収まった。2メートルの高さの反動ってそこまで持つかなぁ?
「面白かったね。」
「確かに何回でもいけるかもな。」
私も彼もこの遊園地を楽しみ始めてきた。
「ミラーハウス行ってみない?」
「いいな、それ。中には何があるんだろう? まさか同じ系列のお化け屋敷があるわけがないし…」
「お化け屋敷だね。」
「あぁ、あたってたな。」
建物の一歩入るとそこはおどろおどろしい雰囲気が…。
ま、楽しもう。と思い、なぜかあった扉を開ける。
…密室でした……。
何これ? 脱出ゲームでも入ってるの?
入口でもらった懐中電灯で壁を照らすと、
「世界に一つだけの花を歌え」
と書いてあった。何これ? 音声に反応するの?
仕方がないから歌う。一緒に歌った。
すると、文字が変わった。
[「ん」から始まる言葉を一つ答えよ]
これには彼が答えてくれた。
「ンジャメナ。」
しかし、出てきた答えは
「そんな単語は存在しません。もう一つお考えください。」
だった。
「ンジャメナ」というのはチャドの首都で実際に存在している。
仕方なく、
「ンゴロンゴロ」
と答えてみた。
「正解です。鍵を探し、次の部屋へどうぞ。」
「ンジャメナ」との違いが分からない。
そしてその鍵だが…振り返ると目の前にあった。
「うわぁぁあ!」
思わず叫んでしまった。
それもそのはず、宙に浮いていたのだ。
実際は紐で吊らされていただけだったが。
「…いつの間にあったんだろうね?」
「分かるわけがない。」
「そのとおりだ。」
で、次の部屋に行った。ちなみに、鍵をどこに使ったかというと、使っていない。
鍵を手に取ったら勝手にドアが開いた。
「これ、ミラーハウスだよな。」
「そうだと思うよ。」
「また何かあるよな。」
「ありそうだよね。」
しかし、このミラーハウス。20秒で終わってしまった。
狭いところにあったのだ。
「何もなかったね。」
気がつけばもう4時。あと一つでアトラクションは終わりだろう。
「ウォータースライダー行ってみるか?」
「いいじゃん。行こうよ。」
ウォータースライダーの先にあったのは…ジェットコースターだ。
「最後には言い締めだな。」
「私たち、運いいね」
ガタ、ガタ、ガタ、ガタ。
ジェットコースターが登っていく…先が途切れているところに…。
その途端、落ちた。車両ごと、落ちた。
そして、また線路に乗った。衝撃も感じなかった。
このジェットコースターは、最後に強烈な思い出を私たちにくれた。
大満足だった。
後日…
あの遊園地がつぶれたと聞いた。
なんとも、従業員がいなくなったのだという。
もったいないな…とは思ったが、おかしいとは思わなかった。