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とある便利屋の記録③
2人はお互いに武器を向けたまま、一歩も動かない。
お互いがお互いを人質に取っているような状態だった。
どのくらい時間が経ったのだろうか、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
パトカーから降りてきたのは、グルッペンと豚平だった。
グルッペン「雪音、矢凪。2人ともよく持ち堪えてくれた」
その声で、2人は武器を下ろした。
舞音「あ、あんたは・・・グルちゃん⁉︎」
グルッペン「雪音、矢凪、舞音、一矢。取引をしよう」
一矢「取引って・・・?」
グルッペン「お前達、『便利屋W』のメンバーとなり、働かないか?」
グルッペンは余裕そうな表情で告げた。
舞音「便利屋・・・W?」
豚平「名前のまんまや。いわゆる何でも屋」
小波は豚平に抱えられ、じっと2組の兄妹を眺めていた。
雪音「私入る。こんなとこまっぴらごめんだもん」
矢凪「以下同文。雪音が入るなら私も入る」
グルッペン「さぁ、あとはお前達2人や。どないするん」
2人は顔を見合わせ、返事ができずにいた。
豚平「警察か?それやったら問題ないで。警察はあんたらがヤ◯ザをやめて、俺らの仲間になるんやったら、逮捕せぇへん言いよった」
警察官は淡々とヤ◯ザ達を連行していく。一矢と舞音には目も向けない。
舞音「・・・一矢、いやらんらん。今まで敵対しとって言うのもあれやねんけど・・・。仲直り、せぇへん?」
舞音が差し出したその手を、一矢は握った。
一矢「もちろん。7年越しの仲直り、だね。マンちゃん」
それを見ていたグルッペンはふっと笑い、言った。
グルッペン「それはつまり、便利屋のメンバーになるってことでええんやな?」
舞音・一矢「うん」
グルッペン「そうか。・・・それではこれから、お前達4人は便利屋Wの仲間だ。トン氏、ええな?」
豚平「特に異論はない」
警察は軽く挨拶をし、パトカーに乗ってどこかに行った。
雪音「かっわい〜!ゆきお姉ちゃんだよ〜♡」
小波「ねーね!」
矢凪「この子がグルッペンさんの姪っ子ですか。本当に可愛らしいですね」
グルッペン「今年で5歳になった。結構人懐っこくて助かっているよ」
小波は新しくやってきた4人にもすぐ懐いた。雪音はもうすでにデレッデレである。
雪音「可愛すぎて溶けちゃうよぉ・・・」
舞音「程々にせぇよ・・・?」
舞音は呆れ果てているが、一矢は何が気になったのか、小波の体をじっと眺めている。
豚平「どうしたん、らんらん」
一矢「あ・・・いや、勘違いかも」
一矢が何を思ったのか、グルッペンにはわからなかった。